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 そうして一週間がたった。朝はキサラギの仕事を手伝い、昼は洞窟を少し離れたところで一緒にご飯を食べる。

 キサラギの仕事を手伝うのは、ロアがあまりにも退屈だったからに他ならない。かくまってもらう罪悪感ゆえにという気持ちでは決してない。何故なら、ロアの申し出にキサラギは俺の仕事を手伝うくらいなら大人しくしてほしいと頼まれたからだ。勿論、無視したが。それで、キサラギは午前中の仕事をロアに許可したのだ。朝と違い、午後は稀に村の人間が入ってくる午後の時間帯だけは洞窟から出てくることを厳禁とされたが。

 だから、午後は洞窟内で大人しくし、夜にキサラギがご飯を持ってくるまで待っていた。夜は、キサラギは家族と食べるのが常だったため、さすがにロアと食べるのは不自然なので、深夜遅くに夜食を持ってくる。帰っていいと言っているのに、ロアが食べ終わるまでは決して帰らない。特に話す話題もないので、静かに食べていると、キサラギがじぃーっと食い入るようにこちらを見てくるので、何となく気恥ずかしくなって目をそらす。と思っていると、仕事の疲れのせいかいつの間にか寝ていることがしばしばある。叩き起こそうかとも思ったが、その寝顔があんまりにも幼く感じてて、結局まだ実力公使に出ていない。





「あー、疲れたぁ」


 ポキポキと肩を鳴らすと、キサラギが眉をしかめた。


「なら、やめりゃーいいのに」

「別に嫌とは言ってないし。それに私のおがげで仕事も随分はかどっているでしょ?」


 言うと、プイッと顔をそらされた。肯定の証だ。

 木こりの仕事は木を切ることだけがしごとではない。大木では使い勝手が悪いので適当は長さ太さに切って運ぶ。建築用の木材は一本まるごとつかうので、その限りではないが。その作業は中々重労働であるし、森林の管理も仕事の内に含まれるので、思えばかなりハードな職種だ。そのくせして、村に一人しか認められないのだから昔は父の仕事を継ぐことにあまり乗り気ではなかったキサラギだった。

 それを説得したのはロアともう一人の幼馴染みだ。


「……あ、アナシス」

「は?」


 そうだ、アナシスだ。もう一人の大切な幼馴染み。行動的なロアと比べて、内向的な性格のおしとやかな少女だった。自分の意見を主張することは少ないが、芯は強かった。

 懐かしい。何故忘れていたのだろう。大切な大切な幼馴染みなのに。会いたい。会いたい。その気持ちが溢れた。


「ねぇ、キサラギ。私アナシスに会いたい。駄目かな?」


 言うと、キサラギは目を見開き、やがて伏せた。


「……あまり外部の人間と接触するのはよくないと思う」

「アナシスなら大丈夫だって! ね、キサラギもそう思うでしょ?」


 あ、う、あ、と言葉をどもらせ、やがてフーッとキサラギは息をついた。


「わかった。次アナシスに会ったとき、言ってみる」


 やったぁ、と拳を振り上げると、苦笑しながらもほほええましそうに目を細めたので、何だか腹がたってそのままキサラギの腹部に降り下ろした。



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