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薄暗く、じめっとした洞の中。僅かに光明が差し込む程度で、奥にいくともう何も見えない。
「本当にここでいいのか?」
キサラギが洞窟の入口で様子を伺ってくる。
「もとからここに居座るつもりだったからね。それにここは私達の秘密基地だったんだから居心地が悪いはずないじゃない。」
幼い頃は、遅くなるまでここで一緒にいた。ねっころがったり、草花で遊んだり、持ち寄ったパンをお昼として食べたり……。大人たちが探しに来るまでいたこともあった。私達だけの場所という特別があったから居心地があんななにもよかったのかもしれない。
森の奥にあるから人の立ち寄りはほとんどないし、身の置場所としてもぴったりだ。
「あー、そう。じゃあ、俺は必要になりそうなもの家から持ってくるから。あちこち出歩くんじゃねーぞ」
「子供じゃないんだから」
ぷくーっと頬をふくらましてみせるとやれやれといった風情で、キサラギは言った。
「どの口が」
人を馬鹿にして。言い返そうと思ったが、やめた。やつの前では、基本的にガキみたいなことしかしていない。まさしくどの口が状態だ。
むくれたポーズをして洞窟に寝そべる。 すると、キサラギはフッ、と笑みを洩らして姿を消した。それが無性に腹が立って ねっころがったまま背を向けた。