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「で、これからどうするんだ? うちに入れることはできないぞ」
食事等の施しはするつもりたが、家を用立てすることはできない。それには家族の協力を仰がねばならないし、納得してもロアを匿っているという情報が流出する危険があるからだ。家族ぐるみの付き合いであるため拒むことはまずないが、気心の知れた村民にふとした瞬間に漏らしてしまうとも限らない。だとすれば、ロアがこの村にいることを知っている人物は出来るだけ少ないほうがいいだろう。
すると、ロアは不本意そうに顔をしかめた。
「分かってるよ、そんなこと。そもそもキサラギのとこに泊まるつもりなら、まず自分の家に帰ってる」
そうしないのは単に危険性問題だ。直に憲兵が咎人を追ってやってくる。ならば、まず始めに疑われるのは間違いなく実家だ。両親に頼るわけにはいかない。そうロアは言った。
「……待て。じゃあ、俺はどうなる?」
幼馴染みは迷惑かけてもいいのか!? 問い詰めるとあっけらかんとロアは答えた。
「だってキサラギだし」
プチリと、頭の血管が切れたように感じた。所詮俺だと。俺に迷惑かけようがどうでもいいのだと。そういうことをお前は言いたいんだな?
とても腹が立った。俺が迷惑をかけられることというよりか、俺がロアにとってどうでもいい存在だと切り捨てられた気がして。だから、同時に空しさを感じた。
あぁ、じゃあ俺だっていいよ。お前の事なんか見捨ててやる。そうキサラギが口を開きかけたとき、ロアがそれを遮った。
「だって、キサラギはいつも私を助けてくれるじゃん。私が泣きついたときも、めんどくさそうなポーズしながら助けてくれるし、私が一人で解決しようとしたときも、首突っ込んでくるし。だから、どっちにしろ結果は変わらないでしょ?」
言われて、言葉に詰まった。まさにその通りだと思ったからだ。突っ放そうと思っても結局ほっておけないのだ。この手間のかかる妹のようで、行動的な姉のような破天荒な幼馴染みが。
「だから、最初にキサラギを頼ったんだよ」
そう言われて悪い気はしてこない。僅かに紅潮した頬を隠すために顔を背けた。
「あぁ、そう」