第9話 ある場所
ある場所で膨れ上がっていく不快な違和感は、死の予兆なのだろうか。それは馴染みの場所だったり、たまたま通った道端や路地など。視えないそれは行くたびに通るたびに膨張し、最期は弾けて平穏を取り戻す。その代償に人が死ぬ。
そのある場所で起こる死に、私が必ず立ち会って来たわけではない。だから違和感と死が今まで結びついてなかった。
子供の頃よく遊んだ公園、実家の近くのコンビニ、中学校の同級生の家、家族旅行で泊まった旅館、ショッピングモールなど。他にも気付かない『ある場所』があったのかもしれない。なんとなく微妙に感じる時もあれば、末期状態の重く息苦しいほどの感じに襲われる時もあった。思い返せば…… だ。
人には見えないあれと同じで、あえて意識しないようにしていた。「そういえば」とこじつけて考えれば、それぞれのある場所で後に人が死んでいる。それも寿命を全うするような死に方ではなく。
公園で路上生活者が若者に暴行を受けて、コンビニに押し入った強盗が刃物で店員を、同級生の家庭で起きた一家心中、思い出の旅館の放火殺人事件、ショッピングモールでの無差別殺人事件。後にニュースで見たり、人づてに聞いたり、その場に居合わせたものもあった。思い浮かぶあの場所、ある場所での死。
そして、今、ここで起こった飛び込み……
そこまで考えて、我に返った。駅のホームでは、まだ悲鳴や泣き叫ぶ声、緊迫した怒鳴り声、声が割れて耳障りな構内アナウンスが立ち尽くす私を取り囲んでいた。
「あ……」無意識に声が出た。
──待って待って、ということは……
「え! うそでしょ!」
第10話に続きます。
どうぞよろしくお願いします。




