表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/16

第5話 安心……


──やばいやばい…… どうしよう。


 外観は小綺麗でおしゃれな、今風のアパートを前にして足がすくんだ。前回に増して嫌な感じがする。タケト君の部屋の周りを、言いようのない違和感がつつみ込んでいる。でも、何も視えない。何も居ない。とにかく『なんか、嫌』なのだ。


「ユウコちゃん?」

「え」

「なんか顔色悪くない?」

「あぁ、ちょっと疲れたかな。昨日あんまり眠れなくて」

「え! 大丈夫なの」

「うんうん。平気平気」


──とにかく、部屋の中を確認しなくては。何もなければタケト君を安心させることができる。何もなければ……


「じゃあ、どうぞユウコちゃん」

 玄関を開けて先に中に入るタケト君を背中を見ながら、気付かれないように深く息を吸い込む。

「ね、普通でしょ。いたって快適なんだよね」

「うん……」

「ま、俺は霊感とかないんだけどね」

 タケト君は呑気に笑っている。


 玄関から見て左側にバス・トイレ、右側にコンパクトキッキン。奥のリビングは日当たりが良く、夕方に差し掛かった時間でもとても明るい。

「どうかな」

「うん…… まぁ」

「ユウコちゃんはあんなこと言ってたけどさぁ、めっちゃ居心地いいんだよね」

「……そうだね。ごめんね、変なこと言って」


 タケト君は私を連れてくることで安心したのか、またいつもの他愛もない話題が流れる。ほとんど会話の内容は入ってこず、タケト君の言葉は雲がふわふわ浮かぶように、ワンルームの空間を彷徨っていた。私の言葉さえも。


「よし! じゃあ、また駅まで送りますよ」

「うん。ありがとうね」


──駄目かもしれない。 


 これは、やばいかもしれない。とても良くない気がする。やっぱりうまく言い表せないないけど、不安の塊のような『違和感』を感じる。何かがいるわけではない。どうしょうもなく落ち着かない。こういうことは時々あった。でも避けて関わらないように、今まであえて見過ごして来た。でも友達の身に何かあったらと思うと、さすがに安心できない。


──伝えるべきか……


「ユウコちゃん、弁当買って帰ったら? 奢るよ」


──また不安を煽って、タケト君の平穏を乱してしまう……


「ユウコちゃん?」

「え? あぁ、なんだっけ?」

「弁当。食べない? 奢るよ。美味いんだよここ」

「え、いいの! ゴチになります!」

「どうぞどうぞ」

 タケト君のアパートから駅までの、ちょうど中間あたりにあるお弁当屋さん。引越してからすでに、二、三度利用したらしい。確かに値段も安くて食欲をそそるサンプル写真と、店の奥から鼻に届く美味しそうな匂い。


「こんにちは」さっそく常連気取りのタケト君。

「あ、こんにちは」若い女性店員が応える。

「ユウコちゃん、なんにする?」

「うーん。悩むなぁ」


「お友達? 佐伯君」

「ん、そうそう友達、友達」

 タケト君は、女性店員の問いに私を見ながら応えた。

「へぇ、こんにちは。いらっしゃいませ」


 もう名前まで覚えられてるの? 二、三度来ただけなのに? 私はそんなことを思った。「あ、どうも」と、挨拶に応えながら彼女を改めて見た。




──なんで……



第6話に続きます。

どうぞよろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ