第14話 視線
「日野さんの件は、警察に相談してみよう」最近、不審な人物がこの辺をうろついている。つけ回されている気がする。そう伝えれば、話くらいは聞いてくれるだろう。生霊の方は、どうしようもないけど。
──うわぁ……
「駄目っぽい?」
アパートを見上げる私の表情を見て、タケト君は察したようだ。
「だいぶんね」
「そっか、わかった。ユウコちゃんがそう言うなら」
「信じてくれて本当にありがとう」
タケト君の部屋を、煙のようなものが包み込んでいる。違和感は、ぼんやりだが私の目に視えてしまうほど、強力になって膨らんでいる。蜃気楼のように揺らめくそれは、いつ弾けてもおかしくないように視える。
「絶対ダメなやつだよ、これは」
「じゃ、とりあえず今日は、カラオケ屋で策を考えよう。付き合ってくれるよね」
「もちろんだけど…… あんまり期待しないでね。今はどうしたらいいのか、見当もつかないから」
誰も命を落とさずに、違和感が無くなる方法なんてあるのだろうか?
「ちょっと財布だけ取ってくる」
「うん」
玄関の前に立つ二人。
「気をつけてね」
タケト君がドアに鍵を差し込む。
「あ!」
「なに! どうしたの!」
「鍵、明けっ放しだった」
「なんだ…… びっくりした。ごめん私が急かしたから。大丈夫よね泥棒とか」今は、泥棒の方が可愛く思える。
「じゃ、待ってて。すぐ取ってくるから」
ドアを開く。室内は空気が重く、とても息苦しい。頭が心臓のように脈打って、割れてしまうような感覚。なんとか耐えて、タケト君の背中を静かに見つめる。タケト君はワンルームの短い廊下を通り、リビングに入り右側に曲がった……
「タケト君!!」
タケト君がリビングの右に入った時、リビング正面、私と向き合う位置に女がいる。タケト君から見えなかったはずがない。気付かなかったということは、そっちの方ということ。
「えっ! なになに! どうしたの」すぐに驚いた顔で、リビングから顔を出すタケト君。
「あっ!! ちょっと、ユ、ユウコちゃん!」
「え!? えっ!!」
タケト君の怯えて揺れる目は、私を通り越して…… その視線は私の後ろ側に定まっているようだった。
──……あれ? な……に?
あと、2話〜3話の予定です。
どうぞよろしくお願いします!




