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第12話 鈍感過ぎる……


「日野さんとは、高二の時に同じクラスになってさ」


 タケト君とは小、中学校は同じだけど、高校での生活はほとんど知らない。あまり聞くこともなかったし、タケト君も特に話すことはなかった。


「なんかなかった? 告白されたとか、逆に酷く傷つけたとか」

「ないない。教室で会ったら挨拶するくらい。傷つけるなんて…… ないと思うよ」

 タケト君は鈍感だが、人を傷つけるような人ではないと私も思う。

「じっと見つめられるとかさ、よく目が合うとか? あ、バレンタインは?」

「あー。日野さんからは貰ってないよ。でも誰からか分からないのは、机に入ってたことはあったかな」

──それじゃん。

「それって誰からか、心当たりはなかったの?」

「普通に話す女子はいたけど、みんな知らないって言ってたしなぁ」

「手紙とかは?」

「入ってなかったと思う。手作りっぽかったけど」

──絶対それじゃん。


「とにかく、からみがなかったなぁ。日野さんがどうかしたの? 正直、あんまり覚えてなくてさ。さっき一緒にいたみたいだったけど」


──一方的な片思いか……


「卒業してからの日野さんが、進学するか就職するかも知らなかったし」

「あ! 写真は? 卒業式で『一緒に撮って』とかなかった」

「うーん…… 撮ったような…… たぶん撮った」

──撮ってんじゃん!

「スマホに写真ないの? 残ってるでしょ」

「こっちのでは撮ってないよ」

「卒業式の写真あったでしょ。ちょっと見せてよ」

 そういえば前に見せてもらったことがある。私も知ってる中学校の同級生も写ってたし、結構な枚数をタケト君は撮影していたのを思い出した。


「これ…… 日野さんじゃない?」

「あー、そうかな。たまたま写ってたんだね」

「これもじゃない?」

──これも、これも。こっちも!


「結構いるじゃない!」

「たまたまでしょ。だって離れてるし、これなんかだいぶ遠いよ」

 確かに遠い。カメラに笑顔を向けるタケト君たちから、離れた位置に女は立っている。だが、女か写り込んでいる数枚の写真は、どれもタケト君をじっと見つめている。私は、それらの姿に戦慄を覚えた。


「タケト君、何も感じなかったの?」

「まったく」

──この人は…… 

「大学入ってすぐにさ、コンビニでも会ったんだよ」

「は?」

「前、住んでたアパートあったじゃん。そこの近くのコンビニで」

「……」

「その時はなにも話さなかった。下向いてすぐ出ていったから。それから時々、近所で見かけることがあったから日野さんもこっちで生活してるんだな、と」


──それってストーカーじゃ……


「で、この前引越して弁当屋さんで」

 タケト君が進学して最初に入居した部屋は、壁が薄すぎたらしい。両隣の生活音、時には騒音が気になり過ぎて、だんだん耐えきれなくなったタケト君は、今の部屋へ引っ越した。

「弁当屋で会った時は、向こうから積極的に話しかけて来てさ。偶然ってあるんだね」

──どこまで、鈍感なんだこの人は……


「彼女何してるの? 学生?」

「いや、進学も就職もしてないらしくて」

「地方から出てきて、進学でもなく就職でもなくバイト?」

 そういう人もいるだろう。でも、恐らく彼女は違う。

「タケト君…… 彼女ストーカーだよね」

「え! まさか! またぁユウコちゃんは」

──ここまできて…… 鈍感過ぎるにもほどがある。


「ちゃんと聞いてタケト君」

 私の真剣な目に動揺するタケト君。

「彼女たぶん、タケト君に好意を持ってる。それも高校生の頃からずっと」

 

 私の想像だけど彼女自身は進学も就職もせず、大学に進学したタケト君を追って地元を出た。そしてタケト君の周辺で生活をして、時々タケト君に姿を見せる。タケト君が引っ越すと、近所の弁当屋でアルバイトをしながら、また忍び寄る。生霊までとばしてしまうほど、タケト君を思っている。


「彼女に、自覚があるかどうか知らないけどね。ストーカーだよ。正真正銘の」


 ようやく事態の深刻さを理解した、鈍感過ぎるタケト君の顔がみるみる青ざめていく。



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