第11話 違和感と女
──本体のほうかよ!
タケト君に見えたということは、そういうことだろう。「なんなのよ!」思わず声をだして振り返る。女は逃げるように走り去っていった。その背中を腹立たしい思いで追視する。
「なに? どうしたのユウコちゃん」
タケト君の声が聞こえる。
──そうだ。かまってられない。
「なんでもない。とにかく……」再び、二階のタケト君を見上げる。
──ちょっと待ってよ…… マジでなんなのよ!
「ちょっとちょっと」私は力強く手招きする。
「え?」
「今から外出れる?」て、いうか今すぐ出てきて!
「いいけど、なに? さっき日野さん……」
「いいから! 早く!」
玄関の横であの女がタケト君を見つめている。首をかしげてニヤニヤしている。今度は私にしか視えてない方だろう。
事態を把握できない様子で、階段を下りてきたタケト君の腕を掴んで、
「いいからいいから、ちょっと歩こう」
「なんか怖いよユウコちゃん。また、変なこと言い出さないでよ」
「…………」タケト君を見る。言葉を探す。
「ユウコちゃんてば」
「………… ちゃんと話すから」まずは、ここを離れたい。
「もう」あきれて笑ったタケト君の表情は、不安そうに強張っていた。
階段を下りてくるタケト君の後ろで、私は悍ましいものを視た。あの女が…… 生霊が滲んで溶けていくように、姿を歪ませて部屋の違和感に飲み込まれていった。
信じたくないけど、あの部屋で何かが起こる。他のある場所と同じく膨れ上がる違和感。さらにあの女まで絡んでくるというのか? どうすればいい? 何が出来る?
──なにも思いつかない
困惑するタケト君を、半ば強引にカフェに連れ込んだ。ろくに説明もせずに。どのみちうまく説明できないし、私自身が混乱している。落ち着いた雰囲気の店内。低いテーブルを挟んで、タケト君は私の言葉を待ってくれている。得体の知れない違和感のことを、ちゃんと伝えることが出来るだろうか。
ホットコーヒーの香りが、少しだけ気分を落ち着かせてくれている。やはり気になるのは、別件と思っていた違和感と女。
「あの女ってさ…… 日野さん? なんなの」
自分の言葉に棘が含まれていると感じて、不快感と罪悪感を覚えた。あまりこういう部分はタケト君には見せたくなかった。
この後、タケト君が語った『日野さん』の話に、私は目眩がして頭を抱えた。
もう少し続きます。
どうぞよろしくお願いします。




