第10話 不吉な予感
違和感が徐々に満ちていくある場所が、悲惨な死を引き起こすのなら……
──そんな……
とんでもなく不吉なことを考えてしまう。どうしよう、考えたくない。あの部屋の感じは、間違いなく死を招く違和感と同質のもの。実際、最初に行った時より二回目の方が、不快な違和感は確実に育っていた。
──タケト君……
タケト君の部屋が、赤く染まる情景が浮かぶ。
自信はないが、あれはまだ満ちていないはず。駅を出てタケト君のアパートに向かう。とりあえず移動しながら電話をかけてみる。
「もしもーし、どうしたユウコちゃん」
──よかった。無事だ。
「なんか忘れ物?」
「ちょっと今から行っていい」
「別にいいけど、どうしたの?」
まずは部屋に行ってみて、様子をみるしかない。私に何が出来るかわからないけど、とにかく行くしかない。何かが起こるとわかっていれば、対策を打てるかもしれない。
「あ、あの…… お弁当、一緒に食べようと思ってさ。せっかくだから」
「え、ごめん。もう食べたけど」
「そうだよね、食べたよね。まぁ、でも…… 行くから、もうすぐ着くから」
あせりが歩を早める。駅近のアパートだが、とても遠く感じる。
「わかった。じゃあ待ってるね」
──待ってて、絶対に無事で。
通話を切って弁当屋の前を通り過ぎる。気になって店内を横目で見ると、カウンターには年配の女性が一人立っている。あの女はいなかった。
視線を戻す。
──…………なんなんだよ
通りにあの女が立っている。表情はよくわからない。こっちを見ているようにも見えるが、女が本体なのか生霊なのかわからない。もうどっちでもいい。
──あんたにかまってる暇はないんだよね。
アパートは目の前だ。女を無視して二階の部屋を見上げた。その時、玄関が開いてタケト君が顔を出した。
「あ! ユウコちゃん! なんか心配で、大丈夫?」
タケト君の無事を確認して、力が抜け涙が出そうになった。が、同時に部屋から溢れ出す嫌なものも強く感じた。
「あれ?」
タケト君は手摺りを掴み、首を左右に伸ばして何かを探すようなしぐさをしている。
「日野さん?」
もう少し続きます。
どうぞよろしくお願いします。




