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第1話 違和感 

友人の引越しを手伝ったユウコ。その部屋で感じた『違和感』

それは、ただの勘…… 気のせいなのか?

『みえる』ユウコに、『見えない』違和感。

その正体は……


「なんかこの部屋、空気悪い感じしない?」

「ん、そうかな? 俺はべつになにも思わないけど」


 空気が悪い。そう思うのは、ただの私の勘だ。なんとなく他の人には感じないものを感じる。他の人が見えないものが視えてしまうことがある。

「なんか、嫌なんだよなぁ」

「どこが?」

「どこがって言われても…… なんとなく……」

「なんなのそれ」


 私が感じる根拠も形もない違和感を、タケト君は鼻で笑う。なにか視えているわけではない。例えば幽霊とかいわれるもの。でも『なんか、嫌』なのだ。あまりこの場にいたくない気分。


 初めて部屋に入った時には、そうでもなかった。時間がたつほど、だんだん空気が悪くなってきた。なにかがそこに居そうな気がする。なにかが視えそうな気がする。部屋全体に靄がかかったような、空気が重いような…… ただの私の勘だけど。


「事故物件とか…… じゃないよね?」

「やめてって! 怖いこと言わないでよ!」


 これから先、この部屋に暮らすことになるタケト君には悪いと思ったが、つい言葉にだしてしまった。同じ大学に通う、私とタケト君。恋人同士というわけではないが、同郷で付き合いが長く時々ご飯など食べに行く程度の友達だ。タケト君の「引っ越しするから暇なら手伝ってよ。片付けとか。ご飯ご馳走するからさ」との申し出に、私は二つ返事で了承した。


「ごめんごめん! ちょっと今日、曇ってるからかな。なんかどんよりしてて」

「ほんとにやめてよね。ユウコちゃん」


──やっぱりまずかったかな。そりゃそうか。


 たぶん気のせいだ…… 視える私が視えないんだ。この部屋ではなにも視えない。なにも居ない。


 地方から出てきた大学生の私(田中ユウコ)は、物心ついた時にはどうやら能力を持っていた。幼い頃はそれが他の人には見えない、それが亡くなっている人だと理解するのに時間がかかった。それは酷い怪我などをして血を流している姿のもあれば、普通の人となにも変わらないものもいる。私が遭遇する多くは、後者の方。なので気付かずに通り過ぎることが多い。

 普通に散歩してるご老人。幼い女の子をつれた若いママさん。待ち合わせ風のサラリーマン。ばっちりメイクに派手な服を着た女の人。他の人に見えない彼らは、ありがちな青白い顔色だとか黒目がちだとかいう印象はない。普通の人となにも変わらない。


 ちなみに今まで私は、取り憑かれたとか呪われたとかいう経験は全くない。金縛りすらない。敏感なのか鈍感なのか…… たまに怖い姿をした、いかにも怨霊といったものに出会うが、私にはどうすることも出来ない。彼らの無念を晴らしたり、訴えを聞いてあげることなど出来るはずがない。彼らもそれに気付いてるかどうかは知らないが、出会ってもただすれ違うだけだ。


 でも…… 

──だめだ! やっぱり気になる。


「ごめん…… いちおう聞くけどさ、不動産屋さんにちゃんと聞いたり……」

「もう! またユウコちゃんまで!」 

「ほんとごめん。いやぁ、ちょっとねぇ」


──ん…… まで?





第2話に続きます。

よろしくお願いします。

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