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ベビーシッター 交渉人・風祭佑之  作者: 志村けんじ


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焦り


 この風祭の自己紹介から始まる交渉は、セオリーというよりは癖みたいなものだ。


ここから対等な関係の下に交渉を進めていく。


「では、山元さん。いや。太朗さんとお呼びした方がいいだろうか」

 そう尋ねる。


「そんなのは、どっちでも」

 そう。少し投げやり気味に言ってきた。


「では、山元さん。あなたたちが囲っている人質の数を教えてほしい」

 そう聞いた。


「人質の数だぁー!? そんなの何人でも、そっちで好きにしておけ!」


「そういうわけにはいかない。上にも報告しなければならないし、マスコミにも公表しなくてはならない」


「なんだよ。また変なところ、ずいぶんと律義じゃねーか。だが、それは教えられない」

 そう言って、山元は鼻で笑った。


「それは残念。完ぺき主義の山元さんなら、絶対に教えてくれると思っていた」


「おいおい。ずいぶんと俺のことを褒めてくれるじゃねーか。今どき、ほめ殺しか」

 電話の向こうで、山元がニヤついているのが声の感じでわかる。


「ここまで、完ぺきな作戦を立案したのは、絶対にあなたのはずだ」


「そうだよ。俺がこの完ぺきな作戦を考えた」

 また山元は、嬉しそうに答える。


「ただ、ボクは、もうその穴を見つけた」

 そう断言する。


「俺の立てた作戦に、そんな穴などあるはずない」

 山元は自信満々に答えた。


「なら、それでいい。そう思っていた方が幸せだ」


「ふざけんな! その穴っていうのは、なんだ!?」

 山元は激昂する。


「それは教えられない。こちらにも作戦がある。では、またあとで」

 そう言って、風祭は電話を切った。


 正直なところ、現時点ではそんな作戦はない。わかったのは、この山元太朗という人物が、異常なまでの自信家で、プライドが高いということだけだ。


 そして、この山元太朗という名前も、おそらくは偽名ではなく本名だろう。


 何故なら、名前の漢字を聞いたときに、一切引っ掛かりがなく答えていたからだ。


 これは普段から電話などで、名前の漢字を聞かれていたときも同じように答えていると推測される。


「すみません。どれぐらいの数になるのかわかりませんが、35歳から45歳の間で、大学の工学部や理系化学系の学部を卒業したか、在籍していた山元太朗という名前をリストアップしてもらえませんか」

 そう。この部屋の中にいた警察官たちにお願いした。


 この35歳から45歳というのは、声の感じから推測したものであるが、確証はない。


 ただ、それで同じ名前が見つかれば、そこが突破口になる可能性もある。


 時間は、もう午後6時半を過ぎたが、夏なのでまだ外は明るいままだ。



 風祭との通話を終えて、山元はイラついていた。


 自分が立てた作戦に穴などあるはずがない。


 それに向こうから一方的に電話を切られたことも気に入らない。


 早く、この怒りを解消しておかなくては、次の作戦に影響する可能性がある。


 それなら人質にしている女たちの中から、適当なのを選んで、このストレスを発散しておくべきか。いや。そんなことをしているような暇はない。


 いや。こんな時だからこそ、むしろ犯しておくべきか。


 山元は目の前で怯えている、チケットカウンターの若い女性スタッフに改造拳銃の銃口を突きつけて、上から下に舐めまわすように銃口をわせる。


「そのまま後ろを向け」

 そう作り笑いを浮かべて命令する。


 その女性スタッフが後ろを向くと、山元は女性スタッフの尻をいやらしく撫でまわし、スカートの中に手を入れると、強引に下着とストッキングを同時に脱がせた。


 その瞬間。女性スタッフま身体が、ビクンと反応する。


「大丈夫。すぐに気持ちよくなるから」

 そう言って山元は薄ら笑いを浮かべて、ズボンの中から硬く怒張したものを取り出した。


「いや! やめて!」

 女性スタッフが抵抗する。


「ほら、お客様にはサービスしないと」

 そう言って、女性スタッフの股間の穴に、その自慢のモノを押し当てる。


 しかし、女性スタッフの穴はまったく濡れずに、山元のモノを拒絶する。


「やだ! やだ! やめて!」


 山元は、女性スタッフの肩を掴んで自分の方を向けさせてしゃがまさせると、自分のモノを顔の前に突き立てる。


「だったら、しゃぶれ!」

 山元は、女性スタッフの口の中に、強引に自分のモノを突き入れた。


「歯は立てるなよ」

 山元の言葉に、もう優しさはなかった。


 山元は、女性スタッフの喉の奥を、激しく犯す。


 いくらサディスティックに自分のモノに刺激を与えても、一向に絶頂に達しない。


 山元のモノは、小さくしぼんでいった。


「この、下手くそが!」

 そう言って、女性スタッフの腹を蹴飛ばす。


 もうそこには、自信満々の策士ぶった男の顔はなかった。


 風祭に与えられたストレスを性的欲求で解消しようとした山元だったが、逆にもっと余計なストレスを抱えることとなる。


 これまでたったら、女はビショビショに濡れて、快楽に身をよじって喘いでいた。


 それがなんだ。これもすべて、自分の作戦に「穴を見つけた」と言った、あの男のせいだ。


 だから、それに報復してやることにした。


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