第五話『引きこもりと冒険者体験』
修学旅行――そんなもの、最悪で最低なイベントだ。
クズどもと同じ部屋に押し込まれ、時間を浪費するだけの、実にくだらない行事である。
まさか異世界に来ても、こんな罰のような行事を味わわされるとは思わなかった。
もちろん、最初は行くつもりなんて毛頭なかった。
だが、「参加しなければ半年間、支給額を半減する」と脅され、仕方なく同行することになった。
(あいつら……死ね)
馬鹿みたいにでかい馬車を何台も連ね、長時間の移動を経て――ようやくたどり着いた先は、冒険者ギルドだった。
神王国の神都にある、国家最大規模の冒険者ギルド。
巨大で美しい中世ヨーロッパ風の建物は、まるで一つの芸術作品のようだった。
到着すると、俺たちは班に分けられた。
ここに来たのは、魔術と剣術を選択した約50人。5人一班で、合計10班が作られる。
班は自由に決めてよいルールだったが、当然のごとく俺は余った。
一人でポツンと残される俺を見て、虫けらどもが嘲笑してくる。
こうして嫌々ながら、俺は一つの班に受け入れられた。
そのメンバーは――
松本正俊、剣術選択。
中山茄子、剣術選択。
川尻京子、魔術選択。
大野ゆん、魔術選択。
そして俺だ。
俺が班に入ると、みんなから分かりやすく嫌な視線が飛んでくる。
(カス共が……)と心の中で呟くが、口にはできなかった。
「みんな、そんな顔してたら可哀そうやで」
関西弁で、大野ゆんがさりげなくフォローしてくれた。
(こいつ、関西人なんだな……)と思っていると、松本が口を開いた。
「そうだけど……」
その時、茄子っていう変な名前のうざい奴が話に割り込んできた。
「そもそも学校にも来てないくせに、今回だけ来るってどういうつもりだ? モートンに対する件、ちゃんと謝ったのか?」
俺に向かって偉そうに言いやがる。
「変な名前のくせにうるせぇな。来ないと支給額減らすって言われたんだよ。モートンの件は普通に俺の勝ちだわ」
険悪なムードが漂い始めたところで、れあが割って入った。
「まあまあ、仲良くやろうや」
そう言って場を和ませ、俺たちは班でギルドの中へ入っていった。
今回の修学旅行は簡単に言えば、冒険者体験のようなものだ。
何十もある受付窓口のうち、およそ五つがこの校舎専用に割り当てられている。
冒険者にもランクがあって、俺達は最下位のアイアン(鉄)に該当する。
このランクの冒険者は殆ど、特定の雑草の最終とかマジつまんない事をさせられる。
実際近くの難度の低い、草原地帯での採集を俺達も行っていた。しかし、自然は時より予想外の事態を招く…。