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婚約破棄

翌週、俺たち両家族は格式あるホテルの一室に集まった。


テーブルを挟んで向かい合う誠君と桐谷家ご両親と我が家――

美咲となった俺、雄一郎だった俺の妻(美咲となった俺の戸籍上の母)の計5人。


「今日は大事なお話があります」と切り出したのは妻だった。


「美咲……いえ、当家の長である雄一郎が誠さんと美咲の婚約を解消したいと

 申しております。すべては当家の事情での不義理だと存じておりますが、

 私と美咲は夫に従います……」


雄一郎だった俺の戸籍上の死は誠君以外の桐谷家にはまだ伝えていない。


今回の婚約破棄は全て雄一郎の全責任に……というのが俺と妻の考えだった。


驚いた桐谷夫婦が俺を見る。

事情を知っているはずの誠君の視線も混ざっていた。


(誠君……)


ただ見られているだけなのに、あの日の夜を思い出してしまう。


彼の温もり優しい声、全てが鮮明によみがえってきて……

俺は無意識に股間を擦り合わせていた。


(駄目だっ……こんな所でっ!)


顔がカッと熱くなる。だが、それは恥じらいだけではなかった。


彼の悲しそうな顔を見た瞬間、

胸がキュッと締め付けられたのだ。

自分の一部を失うような感覚に陥りそうになる。


(なんで……なんでこんな気持ちに?)


混乱する頭の中で答えを見つけようと必死になる。


しかし、どうしても見つけられない。

その間もずっと誠君は沈黙しており、私を見続けていた。


「それで……」桐谷夫人が口を開いた。


「美咲ちゃん、あなたはそれでいいの?」


突然水を向けられてドキリとする。

全員の視線が集中しているのを感じながら私は震える声で答えた。


「私は……」言葉が続かない。


“分からなくなってしまったんだもの“


身体だけ美咲で中身は雄一郎な俺。女の身体だけど中身は男の筈の俺。

誠君と結婚なんて出来る訳ない。婚約破棄しなければならない。


考えるまでもない事だったのに今となってはそれを選べない自分がいた。


「私は……誠さんと結婚したいです……」


そう言った後、一瞬時間が止まったように感じた。

皆が呆気に取られた表情をしている。もちろん俺も驚いていた。

まさかそんな言葉が口から出るとは思わなかったからだ。


「ちょ、ちょっと待って! 何言ってるんですか!」


我に返った誠君が声を荒げた。


困らせたのに嬉しく思えてしまい俺は微笑んでしまう。


「だって……誠さんを好きなんです……」


(何言ってるんだ俺! 雄一郎! しっかりしろ!)


慌てて訂正しなければと思うが上手く喋れない。


そんな私を見て桐谷夫妻は困惑気味だ。

「これはいったい……」2人して顔を見合わせ呆然としている。


当然だろう。一方的に婚約破棄を伝えられたと思ったら、

その家の娘は破棄したくないと言いだし、婚約を続けたいという言葉に

対して喜ぶべきはずの誠君は慌てているのだから。


(誠君からすれば婚約破棄の話しのはずだったし、

 俺が中身は雄一郎と知っているからな……)


まるで時間が止まったかのように気まずい空気となった場を

切り裂くかのように怒りに染まった声が響いた……!


「嘘ですよね……そんなの……認められません!!!」


叫び声と共に立ち上がったのは妻であった。

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