Hパート
通常配達・対面配達と……。
ホントにここまで説明する必要があるのかというと、ないと思っているんだけれど。
こーいう話を書くのは、英語で言えば、アルファベットや簡単な文法を教えているような事です(もう忘れたけど)。数学で言えば、数字と四則計算を覚えるような事です。
こーいう配達をしてください。こーいう対応をしてください。……仮にしなくても、問題がないのなら別に良いのです。逆に問題があったら、分かってんだろうな?って話です。
さて、ここまで山口と森橋くんが頑張ってやってくれているわけで。
最後の基本的な配達は
「”宅配BOXへの配達”について教える」
”郵便の種類”によっては、取り扱いが異なったりはします。しかし、そこはその時にまた別でお話をさせて頂きます。
ひとまず、”宅配BOXを使用する注意点”
「じゃあ、まずは宅配BOXからやろうか。まず、宅配BOXのご利用にあたって、お客様にお伺いした後、不在を確認してからご利用すること」
「はい……そりゃあ、そうですよね」
「でも、AMAZONさんとか……いきなり、宅配BOXを使ってるけどな」
「………」
郵便局は基本、お伺いしてから宅配BOXを利用します。初回から宅配BOXの利用のご依頼があれば、お伺いしないで行いますが。
「郵便局は書留とかを含めて、荷物のサイズが小さいからな。形が歪な荷物ばっかだ」
宅配BOXのサイズによっては、ゴルフクラブ用のサイズもあります。それはなるたけ避けるように。小さいのから使うと他の業者にも配慮できます。
「言い方が悪いが、郵便局が配る荷物は”軽くて”、”責任もない”、”お客様も無関心”。他の業者の方が、”待ち望んでる荷物”が大半だ」
「結構な言い方ですね。山口さん」
両手で持てて、さほど重くもなく、それでいてポストに入らない荷物が大半です。面倒かと思いますが、お客様へのお伺いはしてください。渡せればなんでも良いだろ!って意見は分かるのですが、集合住宅では特に数に限りがある”宅配BOX”の奪い合いになりやすいです。
だったら、早めに”宅配BOX”を使おうよってなりますが。
「宅配BOXに入ったら、すぐにお客様が取りに来るわけじゃない。自分しか使わないわけじゃないから、勝手にやるな」
文句を言われる事は滅多にないけれど……。宅配BOXの数に限りがある以上、”在宅してる方には、直接渡せ”。これは他のお客様、他の業者様にも迷惑になり、再配達の負担になる。(お客様が絶対に出てこいって思ってるわけではないので、悪しからず)
「一人暮らしの賃貸だと。宅配BOXを自分のもんだと思って、独占してるお客様もいるんだよ。宅配BOXがあっても、使用中で他のお客様が使えないって奴」
「うわぁ。そりゃあ、キツイ」
なるべく、日は跨がないで欲しい。面倒なのは分かりますが、その日の内に荷物を宅配BOXから回収して頂けると、こちらも他のお客様も助かります。
「実際、宅配BOXが使用中で使えないって場所は、決まってる!……とはいえ、ホントに宅配BOXが全て使用中の場合、不在票には必ず『BOXが使用中のため不在対応』みたいな捕捉を書くようにな。どうして、宅配BOXがあるのに利用しなかったんだ?ってお客様が疑問に思うことはない」
「分かりました」
「それから荷物の方にも、追跡のシールの下に『BOX使用中のため』って書くように。この仕事してる仲間にも、情報を共有しないとな」
「表札のない平地と同じって事ですね」
「そうそう。これが宅配BOXを使う前のルールとして、覚えてくれ」
郵便物の種類によって、宅配BOXの使用禁止もある。そこはまた別の機会にするとして、宅配BOXを利用する上で少し覚えて欲しい事がある。
「宅配BOXには大体4種類のタイプがある。どれも説明がついてるから、それ見ながらで構わない」
「はい!」
「あと宅配BOXを使用する前に、連絡票を書いておくと良い。(今は不在通知と併用できる)」
書き方は不在票と同じである。
受取人の名前、差出人の名前、郵便の種類、番号を印字して貼り付ける。
ここまでは不在通知と一緒である。
「付け加えるのは”部屋番号”と”使用する宅配BOXの番号”、”暗証番号”の3つの記入が必要だ」
「まぁ、そうですよね」
「個人宅の宅配BOXなら3つも要らないんだけど。集合住宅のBOXは特に注意しろよ。……あと、宅配BOXを使う前に連絡票を書くんだぞ!改めて言うけどな!」
不在票を書くのとほぼ同じ労力なので、それの記入はよく分かるはずだ。だから予め、ちゃんと記入してから宅配BOXを使うといい。使用BOXはともかく、”暗証番号”はモノによっては長いし、複雑である。1つでも違うと開かないのだから、ここは慎重にいかねばならない。
「ま、必要のねぇ宅配BOXもあるから、種類を伝えておこうか」
1.OKIPPAなどの簡易の宅配BOX。(宅配袋って言った方が分かりやすいかな)
扉にぶら下がっていたり、玄関前に置いてあったりする宅配BOXです。
畳めるタイプであり、袋の中に南京錠と判子が入っています。
”手順”
1.2つあるチャックを開けて、袋の中から南京錠を取り出します。
2.荷物を袋の中に入れて、チャックを閉じます。
3.2つあるチャックの穴に南京錠を通し、施錠しましょう。
「南京錠の鍵は客が持ってる。あるいはダイヤル式の鍵だったりもするから、番号は弄らずに施錠するんだぞ」
「分かりました」
2.個人宅に設置されてる宅配BOX。
一戸建てにポストと一緒に設置されている宅配BOXです。
やり方はそのBOXの種類によりますが、ポピュラーなタイプの手順を掲載します。
”手順”
1.BOXの扉を開けます。中にある判子は、ゆうパックなどで使いましょう。
2.荷物を入れます。その後、扉の裏側にレバーがあり、これを降ろした後、扉を閉めましょう。
3.外からBOXが使用中かどうか確認しましょう。
「1,2の宅配BOXは、特に問題は起きないだろう。不在票と同じ書き方で、宅配BOXに入れてますってやればいいから。問題は集合住宅の宅配BOXなんだよ」
3.集合住宅の宅配BOX(ダイヤル式・ボタン式)。
宅配BOXに付属する形で、ダイヤルが付いてるタイプOR番号を入力するボタンタイプの宅配BOXについて。
”手順”
1.使用する宅配BOXを開けます。”OPEN状態”になっていないと使用できません。
2.荷物を中に入れ、扉を閉めます。
3.0~9のダイヤルが3つか4つ付いており、これが宅配BOXの”暗証番号”となります。
「暗証番号を決めた後、使用したBOXと暗証番号をちゃんと記載して投函すること……ああ、今は携帯端末とプリンタで、使用BOXと暗証番号を印字できるから」
「分かりました」
「で!!……でかい声で言うが、注意点がいくつかある!宅配BOXに限った話ではないが、BOXを使う上での注意事項。特に集合住宅じゃ五月蠅いんだ」
宅配BOXでの注意事項。
1.まずお荷物の住所・部屋番号をしっかりご確認の上でご使用ください。
2.生もののご利用はご遠慮ください。(食品は極力止めてくれ)
3.チケット・書類などのご利用はご遠慮ください。
4.生物・危険物・再発行が難しいモノのご利用はご遠慮ください。
5.ご利用後は、お知らせ通知の投函を宜しくお願いします。
「だいたい、どこもこんな感じだ」
「どこかに書いてあるんですよね?宅配BOXの傍に」
「そうそう。じーっとは見ないんだけどな。覚えておくのは、”生もの”は絶対に入れるな」
境界が難しいんだが、だいたいの食品……乾麺などの乾燥食品は問題ないのだが……。あまり食品は入れたくないのが、配達員の考えだ。差出側も宅配BOXの考慮で、”生もの”とそうでないモノを分けて発送してくれるんだが
「昔はな。”生もの”でも平然と”食品”のみで送って来たからな」
「ええぇっ……」
「まぁ、それはまだいいんだが……問題になったのはな」
宅配BOXに半年以上も残った”食品”が異臭騒ぎに発展し、集合住宅の宅配BOXが総入れ替えになり、……その荷物を入れた配達員に責任が来たという事がある。
「はいい!?」
「いや、マジだから。食品しか書いてないから、宅配BOXを使ったらしいんだが……半年以上も放置されて、異臭騒ぎになって大騒動になったんだよ」
今じゃ絶対にあり得ない事ではあるけれど。……昔は、中身が何も書いてなくて、宅配BOXをご利用したら、実は中が食品でダメになってましたーっていうクレームが何件か喰らってます。作者は喰らった事はなかったですが、同じ職場の人間はそれで宅配BOXを利用しないと決めた方もいます。
そーいう事例が多発して、宅配BOXの使用禁止っていう方法も局で一時的に行っていました。
これは配達側じゃ、どうにもできないです。中身を開封するわけにもいかないので、差出人の書いた品名を信じるしかありません。
「とにかく、宅配BOXの異臭騒ぎは配達側にも責任喰らうから注意しろ。黒ニンニクを入れる時、すげー緊張する」
「あー、あの臭いは……ちょっと……」
次にお荷物の住所と部屋番号の確認について。
これは誤配をしないのが”当たり前”って言われるけれど、実際に配達員が間違えてる事はあります。その原因については後で分かりますが、どのような問題になるかというと
「宅配BOXを開けるには、……ここのダイヤル式の宅配BOXなら、配達員が取り出せるけれど。電子式のタイプだと、お客様が持ってるカードキーみたいなのがないと開けられないんだよ。あとは管理人OR管理会社が来てもらうとか」
間違えた荷物を回収するのが、結構難しい。お客様によっては自分の家の荷物じゃない場合は、そのまま放置してる人もいる。
「届いてるのに取り出せないってのは、対応が大変なんだ。特に電子式は間違えたら大変だから」
管理会社によっては、宅配BOXの専用のパスワードでどこでも開けるようになっているが……。基本は業者がやってきて、開けてくれる感じになる。
「宅配BOXの入れ間違え、暗証番号の間違えはそこそこ起きてる。配達員の不注意と言えば、それまでなんだけど」
「その不注意をどうやってケアするかって話ですね」
「そそ、だから。”メモ”と”法則”、”2度確認ダブルチェック”が大事」
1.連絡票に予め、”部屋番号”を記入する
連絡票には”宅配BOXの番号”と”暗証番号”の記入欄がありますが、お客様の部屋番号を記入するスペースはありません。余白で構いませんので、”部屋番号”を記入しておくと間違いを減らせます。お荷物を宅配BOXに入れてしまうと、”部屋番号の確認”や”配達証をとれない”といった事になります。宅配BOXのご利用前に連絡票を記入しておくのは、このような凡ミスを防ぐためです。
間違いないだろうって事は分かっております。ですが、1年間仕事をしてれば300回以上は宅配BOXを使うので、予め間違いにくい配達方法をとりましょう。
2.暗証番号を任意で決められる場合は、”法則”を決めておく。
「”暗証番号”を必要とするタイプで注意するのは、”LOCK”状態にした時、”暗証番号”が4桁の数字が0になって分からなくなるんだ(その機能がないのもあるけど)。”LOCK”状態をする前に、暗証番号を記載するのは当然だが、”法則”を決めておけば、最悪に、忘れてもなんとかなる」
会社側の推奨は、”追跡番号の下4桁”をパスワードにして欲しいとのこと。
ただ、多くの配達員は面倒がっているので、お客様の”部屋番号を暗証番号”にしている。……悪用しないでくださいね。
他には”日付”、”配達員が決めてるパスワード”とか……。
暗証番号の記入漏れ、忘れてしまうといった事はもちろんだが、
「お客様が連絡票を無くした時とか、”暗証番号”が分からなくて連絡もらう時がある。滅多にねぇけど」
”法則”を決めておくと、考える手間が省けて早いです。
ご利用前に決めておきましょう。
「そんで3つ目」
3.2度確認を徹底する。
これは宅配BOXをご利用するからとか関係なく、お仕事において2度確認は大切な動作です。常に徹底しろって、周囲の先輩達が言うのは
『焦ってたり、緊急時は、確認が-1になると思ってくれ』
常に1度しか確認しない方は、緊急時や業務が忙しい時になると、1度も確認しません。
だから、平時で2度確認を身に付けて頂きたいのは、忙しい時にも対応できるようにするためです。
配達に限った話ではなく、お客様からすれば、”仕事を間違える理由”はよく問われます。
対面配達でのフルネーム確認呼称も、間違えを防止するためです。で、この手の責任は上司がとるのではなく、担当の配達員が責任になります。上司はちょっとフォローするので手一杯です。
「宅配BOXならまだいいんだよ。”連絡票にメモする”とか”法則”がしっかりしてれば、確認を怠ってもカバーができるんだよ(2重3重に対応策は体に染みつかせろ)」
「他だとマズイんですか?そりゃあ、誤配とかも確認が大事ですけど」
「一番ヤバイのは”特別送達”と”本人限定”だな。その時、話すぜ」
とりあえず、”2度確認”は必須です。
この事はよく覚えてください。
「”ダイヤル式”で纏めちまったんだが、”ボタン式”のもあって、これも配達員が暗証番号を打ち込むタイプの宅配BOX」
「最近増えた宅配BOXですか?」
「ああ。あれの注意点が1つあってな。”同じ番号を入力できない”欠点があるんだ。大した事じゃないんだけど」
例えば、202号室のお荷物を”ボタン式”の宅配BOXに入れて、”部屋番号”で暗証番号を打ち込むと、”20”までしか打てないのだ。”2”をもう一度、入力できない。このタイプは、”LOCK”すると番号も一瞬で消えるので、安易に”LOCK”せず、連絡票に暗証番号を記入し、チェックした後”LOCK”を掛けましょう。
ホントに大した注意じゃないが、宅配BOXの種類によって、法則を変えられるようにしましょう。
4.集合住宅の宅配BOX(電子式)
高級なマンションだとよくあり、最近は物流の改善のため賃貸アパートにも採用されています。
お客様が持ってるカードキーで開けるタイプで、ご自宅からでも宅配BOXのご利用を確認できるタイプだと思います。
この宅配BOXは指示に従い、指定した部屋番号を入力し、使用する宅配BOXの番号を選び、荷物を入れるだけで完了します。かなり簡単です。
「このタイプが増えると楽なんだけどな」
「暗証番号を記入する手間とかなくて良いですね」
「……ただ、一つ欠点があるとすれば……宅配BOXが故障すると、2か月くらいは使用中止になる。全部のな」
「えええっ、住んでる人達が大変ですね」
「電子式は全部を交換しないといけねぇからな。そこは利用するこちら側も丁寧に扱わないとな」
中のバネがすり減ったりなどで、使用できなくなる箇所もある。
滅多にないが、カードキーが壊れてて使用できない世帯もあったりしますので、宅配BOXを利用する際はその辺も確認してください。
5.集合住宅の宅配BOX(電子式+暗証番号)
使用される宅配BOXの方から、”暗証番号”を出すタイプである。配達員が”暗証番号”を記入し、ポストに連絡票を投函する流れとなる。
「このタイプで覚えておく事は、”暗証番号”がちゃんと”暗証番号”をしてるという事だ」
「いや、それが普通では?」
「他人の宅配BOXの暗証番号なんざ、覚えやすいのにしとるっつーの!!ゾロ目で4桁が全部”3”とか、そーいう配達員もいる!なんでこのタイプは、細かく数字をバラけさせるんだ!」
ご利用されるとよく分かるが、6~8桁の数字が液晶画面に表示されるのだが……。これまで使った”暗証番号”と異なり、無作為に選ばれた数字が並ぶ。
これまでの”法則”が通じないため、忘れること、記入ミスが許されない。
「簡単に”OK”ボタンを押すなよ!ホントに押すなよ!!」
このタイプの宅配BOXはお客様にカードキーなどがなく、”暗証番号”が絶対なのだ。間違えると管理会社への問い合わせになる。
しっかりと番号のチェックをするように。
「……まぁ、まだ色んなタイプの宅配BOXがあるけど……この4つの宅配BOXを覚えておけばどうとでもなる」
利用する前にまずは、確認……それ以前に、お客様にお伺いする事である。