Gパート
驚くべきことにまだ森橋くんは、まだ新人の1日を終えていない。
おそらく、あともう1パートを挟んで、1日が終わると思う。ホントに同じ24時間って人類皆平等なのかと疑いたくなるが、……緊張のある一日は非常に疲れやすくて長いものだ。
そして、集合住宅のパターン1もまだ終わっていない。
集合住宅、オートロックなしの対面配達。
ちょいと別にしたかったのは、現在のルールと作者のルールがいくつか異なっているからでもある。
「宇野さんの郵便でーす……」
……どうやら、ご不在。
しかし、困った事に
「インターフォンが鳴らないですね」
「セールス嫌いの人がやるんだよ。電池引っこ抜いてる」
インターフォンが鳴らないお宅もある。電池切れか、電池を抜いているかのどっち。セールス嫌いが多いが、仕事によってはお昼に寝て、夜に働く人もいる。集合住宅だと色んなお客様がいるから、珍しくない。
「構造には色々あるが、家の中でちゃんと鳴ってるのもある。だけど、鳴ってない場合はちゃんと」
コンコンッ
「ノックの呼びかけな」
インターフォンが鳴らない場合は、ノックと呼びかけをしましょう。
在宅不在だと言われる場合、インターフォンが鳴らない家が結構多いです。無理に出て来る必要はないですが、言いがかりは面倒です。
「で、不在票に関してなんだが……集合住宅は2パターンある。で、今の会社の方針としては……というか、法律?では。”集合ポストに不在票を投函しろ”って言われてるんだ」
「じゃあ、配達がひとまず終わったらそうするんですね」
「あー、そうなんだが。”俺達”はしない(作者と作中の登場人物は)」
「え?」
「まぁ、聞けよ。そもそもの話、そんなルールを上が言い始めたのは、ごく最近で、すげーくだらない理由なんだよ。……ひとまず、俺達でもなく、上でもなく。お客様の意見は」
”ドアポストに入れてくださいよ。”
「というのが大半だ」
「はぁ?じゃあ、なんでそんなルールができたんですか?」
「知らんけど。逆の人もいるんだよ」
”集合ポストに入れてくださいよ。”
「実際、その。きのこの里とたけのこ里論争以下の話しから発展して、法律までいったとか行かないとか。……言っておくが、あいつ等は現場に来ないし、客の声なんかもっと聞かないから。自分が思った事が正しいと思って言ってるから、性質が悪いんだよ」
お客様にも色々あるから”ルールを統一”するなんて、できない。……って、現場は言っている。これは郵便局に限った話ではない。時と場合によるとしか答えようがない。
現在、集合住宅の対面配達による不在は、”集合ポスト”に投函するよう言われているが。作者は守る気がない。理由としては、上の意見があまりに曖昧だった事と、お客様からの対応を全部現場の人間に放り投げたからである。
作者(+一緒に働く人達)なりの意見をいくつか交えながら、答えていきたい。
「まず犯罪防止の観点から言って、集合ポストには鍵をかけない人もいるし、不在票に折り目を入れたりすると外から盗む事が容易なんだよ」
1.犯罪防止の観点から
”集合ポスト”に不在票を入れるという事は、人によっては不在票を盗まれるケースがある。もちろん、だからなに?という話ではあるけれど、そのリスクを考慮して”再配達”や”受け渡し”の手間をかけたくないのが理由になる。少なくとも、配達員からではどうにもできない。
「窓口でも本人確認とかしてるけど、”免許証”があれば渡しちゃうんだよ。そこまで考えないのよ」
詐欺の手口に郵便局を利用するケースもある。(場所によっては頻繁であり、作者のところも9件くらい事例がある)。通販の荷物ならともかく、銀行関係の書留でこれをやられるとホントに迷惑である。
”不在票”を持っているという事は、”本人”OR”家族”が受け取ってるのが前提として、頭に入っているから。わずかでも盗まれるところに”不在票”を入れたくない。騙された奴が悪いのは、世の中にとって当たり前なのが辛いんだけれど。……”不在票”ならともかく、”本物”を知らない奴の手に渡ったら、配達員に責任がある。
「もちろん、こんな可能性は交通事故よりも低いけどな。……低いけど、この確率を引き上げてどうするんだ?」
「慎重な意見なんですね」
「……そのことを上に言ったんだよ。そしたら、あいつ等はな……」
『え!?集合ポストに鍵が掛かってない事ってあるの!!?どんな家なの!?オートロックもない家とかwwwそれってお家って呼べるんです??www』
「だぞ。配達に出ただけで、そーいう家、多かったろ?」
「……………」
2.お客様の疑念。
お伺いした家の”ドアポスト”に不在票を入れる。
お伺いした家の”集合ポスト”に不在票を入れる。
この違いとして、”お客様にホントにお伺いしたのか”がハッキリとしないからだ。
当たり前の話だが、ドアポストに不在票を入れるという行為は、玄関前まで配達員が来ている事を証明してくれている。その際に、”インターフォンを押したのか”、”ノックや呼びかけをしたのか”、そこまでは証拠としてはできないけれど。不在票をドアポストに入れたというのは配達員がお伺いしてるのは確か。居留守というお客様の都合だってある。
それでも”集合ポスト”に不在票を投函するというのは
『あなた達が勝手に不在票を入れたんでしょ!!』
って言われたら、配達員からすれば「……はい、そうです」としかならないのだ。
いくらお伺いしても、お客様からすれば、集合ポストに不在票を入れてたら、伺ってないだろって思われるのだ。実際に何十件もあって、その度に対応をさせられてる。
「特に再配達の時に、集合ポストに不在票を入れてみろ。これはホントに言われてるから」
「居ないのが悪いというのもあるけど、集合ポストに不在票が入ってたら疑いますね」
3.配達員の手間と落失の問題。
対面配達を行うというのは、”書留”や”ゆうパック”などの印鑑OR署名が必要なモノ以外で、郵便ポストに入らない郵便物というのもある。
ドアポストに不在票を入れる場合、その場で不在票を書く。だから、手間がないのだ。
一方で集合ポストに不在票を入れる場合、……その場で不在票を書くけど、他の対面配達が終わるまでその不在票を抱えていたり、逆に全ての対面配達を終えてから、集合ポストに行って不在票を書く人もいる。この辺は配達員の好みだろう。
例えば、前者の場合。不在票は書いてるけど、”投函ができない状態”で他の対面配達をしなきゃいけない。その時に不在票をどう持ってるかは知らないが、”寄り忘れによる不在票の投函がされてない”という誤配クレーム。”誤った号室に不在票が投函されている”という誤配クレーム。
「伺ったその場所・その時で、不在票を使えばいいのに。それを勿体ぶってるから、こーいう入ってる、入ってないクレームは来る。……見つかれば、こっちが結局勝つのにだ」
上の人達が思ってる事は、マンションの対面配達なんか、1件、2件くらいだと思ってるが。実際は3,4件。もっと大きいと1つのマンションで10件とか普通にある。
忘れちゃダメだろって言われたらそこまでだが、伺ってから”5~10分”以上経っているとそれも仕方ないと思う。
「対面配達が終わって、集合ポストに行って不在票を書く人もいる」
こっちの場合は、”対面配達中の時間が短い”配達員が多い。案外、不在票を書くのは時間が掛かる。だから、お客様が出る前に配達員が不在票を入れないで行ってしまったという事例もある。
それはまだいいんだが、
「対面配達で不在だった場合。書留だったら、留めカバンあるけど。馬鹿デカイ郵便物はどうしてる?それも複数あったらどうだ?」
「そんなのそりゃあ、……どこかに置いて不在票を書くでしょ」
「だな。これはマンション配達をやらせた時にもう一度言うが。ホントに笑えないが、”荷物の置き忘れ”を引き起こしやすい」
「……いや、そんな馬鹿な」
「その馬鹿なって事が起こるから、馬鹿にできねぇんだよ」
不在をきった荷物を現地に置き忘れちゃうという、とんでも事例もある。こーいうケースじゃなくとも、郵便物などの置き忘れは実際に起こってる。だから、その小さな危険も潰すべきなのに、上はそれをヤレって言っている。ただの達成感しか得られないのに。
「足元周辺確認を徹底しろって、上は口酸っぱく言ってるけど、”作業工程でその確認を増やすな”ってのはいつもの現場の意見」
ドアポストに不在票を入れれば、その周辺確認の手間が1つか2つは減るのにやる。
『落失防止を防ぐために、毎日唱和をする!!よし!!3回唱和だーー!!』
意識は大事だが、その手間を増やす作業を推奨するんじゃない。
4.配達員とお客様のタイムラグ
「まず、ドアポストに不在票を投函すると、バチンって音がするだろ?」
「そんな強めな音はしないですけど。セールスの人はそんな事はしませんね」
「居留守の大半は、気付いてるけど、面倒くせぇだ」
インターフォンが鳴ってても、出ないというのは珍しくない。だけれど、ドアポストに不在票が投函されてから慌てて出て来る人はいる。
「あと高齢者。その年代だと足が悪い人は珍しくないし、耳が遠い人。……多くにいるけど、面倒だなって思ってる奴等。ここらへんもドアポストに不在票が入ると出て来る」
それだけドアポストに入る不在票の音って、結構特徴的な音なのだ。インターフォンの種類によって、隣の家だと勘違いする人だっている。
「あと仮に出損なっても集合ポストまでお客様が足を運ばなくて良いのは、助かっているんだよ」
高齢者に特に多い事だけれど、集合住宅で集合ポストまで歩くのが大変なのだ。下手をすれば、翌日の朝とか取りに行くとかもある。
ドアポストに入れた方がお客様も手間がない。
「逆の意見もあるけれどな」
集合ポストに入れて欲しいと思ってるお客様は一人暮らしが多い(新社会人)。また、一軒家から集合住宅に越してきた人も、集合ポストに入れる者だと思う方が多い。
引っ越して来たばかりの人だと、ドアポストなんか見ないんですけどって言われる事もある。
ただ、お互いに集合ポストに不在票を入れるメリットがほぼない。どうしても集合ポストに不在票を入れて欲しい場合は、ドアポストをガムテープか何かで塞いで欲しい。
ちなみに集合ポストに入れてくれって思ってる人は、家から集合ポストまでの距離が短い1階の人くらいである。
「犯罪防止の観点でも書いたけど。ぶっちゃけ、それよりも多いのが、不在票をチラシだと思って捨てる人がいる」
「マジですが」
「だから、折り目をつけろってこと。集合ポストが汚い人もいるし、子供がいるお宅だと子供が間違えて捨ててるとかもある」
不着申告の時にまた詳しく話す事になるが。
配達員は不在・配達完了に関わらず、”処理済み”となったお荷物に関しては、こちらは”基本的に関与していない”事になる。
不在票が入っていない。お荷物を受け取っていない。
配達員ができる範囲はとても短く、”処理済み”にされているお荷物について、あとでどうたらこうたらお客様が言ってきても、補償も対応もまったくできない。
自分が頼んでいるお荷物に関しては、”しっかりと自分で把握して頂きたい”。今は、”ゆうパケット”を始め、追跡関係のお荷物が多いので、その番号を調べて、現在のお荷物の状態をしっかり確認して欲しい。
ガコォッ
「わざわざ玄関前まで来てるのに、また集合ポストまで戻るのなんてこっちも手間でしかないんだよ。デカイマンションだと、対面配達だけで10分以上掛かるし、その間でスレ違う事もある」
だから、ドアポストに入れたいのが本音だ。
これに変えてからトラブルは全部上が対応するって豪語してくれたが、結局、下にぶん投げられたのがイライラであった。
「あ、そうそう。これが大事だったこと。超大事なこと」
「なんです?」
「不在票をどこに投函したかどうか、不在になった荷物にマークを付けておけ。平地で言ったが、表札がない家の特徴を書くとかと同じ(昔は不在票を失くしたお客様が悪いとかで返事してたけど)」
ドアポストに投函した場合は、ドアポストの”ド”
集合ポストに投函した場合は、集合ポストの”シ”
という感じで荷物に張る追跡番号の紙片に書いておこう。
大した事ではないけど、集合住宅のお客様から”不在票が入っていない”と申告があった際、どこに投函したか荷物に書いてあると、コールが対応しやすい。
とはいえ、
『なんでドアポストに入れてるの!?気付くわけないじゃない!』
どーすりゃあええねんって反応をされるが……。集合ポストでも結果、お変わりない事だ。
◇ ◇
ブロロロロロ
集合住宅・オートロックなし。こちらの方が多いのだが、集合住宅・オートロックも多くなってきた。最近建てられる集合住宅は、10世帯ぐらいでもオートロックとかになっている。
「そーいうのは新婚さんとか、子持ちが多いけどな」
オートロックだけでなく、宅配BOX付きといったところまで……。
「集合住宅・オートロックの場合なんだが……」
まず、やらないと思っている事だが山口は言っておく。
「絶対にお客様の了承がないまま、中に入るなよ?」
「しませんよ」
「言ったな?」
オートロックなんだから、オートロックで在宅を確認するのが当然。……と思われるんだが、
「例え話にするけど、オートロックマンジョンで2件の対面配達が必要な場合。もっと分かりやすく言えば、101号室と102号室があったとする」
101号室をオートロックで伺いました。居ました、荷物を渡しました。隣の102号室にも荷物があったから、インターフォンを押しました……。
「っていう事例な(3階以降だと分かると思う)」
オートロックの集合住宅は、”オートロックでまずはお伺いをしなさい”。
「いなければ問題はないんだけど、居た場合が面倒なんだよ。なんでお前、マンション内に入って来てるんだ?って言われたら、終わりなんだ」
「他の荷物のついでで……」
「渡し終えたら、さっさと出てけよ」
配達員からしたら面倒だと思うけれど、中に住んでる人からするとクレームになる。これは置き配とかでもそうなんだが、たまたま中に入れたから荷物を置き配しておきますって行為は、マナーとして良くはないです。気にしない人が大半ですけど、配達員側に非がある動きなのは事実です。
そもそも置き配は、配達員よりも受取人側が責任を持つ形にして欲しいのです。
「だから、それはするなよ。見本とするには佐川さんがいいな」
オートロックで複数のお宅にお伺いする場合。
1件目の在宅を確認。その際に
『他のお客様のお荷物もあるので、順番にお伺い致します。少々お待ちください』
という感じに、お客様に一言お願いしておきましょう。
オートロックは、自動ドアタイプと扉タイプの2種類が基本であり、開けてから10秒ぐらいでどっちも閉まります。
一度、開けてもらったら……佐川さんだったら台車でドアを固定したり、足やお荷物でそのまま開けたままにしています。郵便配達員も足でやってると思います(笑)。
こんなことを書いているという事は、作者はそーいう配達はしませんけれど……。
「一気に回りたい場合は、まず、オートロックでお客様に了承をとってからな?」
「分かりました!」
配達の短縮にはなるんですが、あまり作者が採用したがらない理由が3つほどあります。
1.お客様をちょっと待たせてしまいます。
2件、3件なら大した事はないのですが、お伺いする数が多いと時間が掛かります。
暇なお客様が大半ですけれどね。
2.どの荷物・どのお部屋をお伺いしたか忘れる。
自分の体験談ではないですが、……インターフォンでお伺いすると言っていたのに、一向に来ない上に不在票が入っていたというクレームが来た事があります(本人、間違えたと言ってましたが)。大型の集合住宅で、オートロックだと、あり得るという事です。
3.待機時間がどうしても短くなってしまう問題。
オートロックマンションは、玄関前までお伺いできず、家の状況が配達員にも分かりません。
インターフォンとの違いとしては、確実にお部屋まで鳴りますし、モニター付きも珍しくありません。”2回、呼び出しを行う”OR”オートロックが完全に消えるまで待つか”、というお伺いとなります。どっちの手段でも、それなりに待てるんですが。一度にお伺いする場合は、お客様を待たせてるから、10秒ぐらい待ったら、次のお客様のところに呼び出しをしています。
他のお客様からすれば、”すぐに配達員が切りやがった!”って感じの事です。……宅配BOXがあれば、あまり気にはしないんですけど。
「作者はシンプル好きだから、一度お伺いしたら、ちゃんと上がって荷物を渡して、また下のオートロックでお伺いする形をとってる。横着しないでキッチリ仕事するってタイプ」