The Lost
長い、長い夢を見ていた気がする…
今やどんな夢を見ていたか、思い出すことが出来ない。
夢だけではない、何もかも思い出すことも出来ない…そんな気さえする。
堕ち行く……混濁する意識の中で考える。
「そうか…僕は…」
❃
そこで僕は目を覚ました。
見慣れない天井を見つめながら夢の内容を思い出そうとする。
「…ッ……」
ズキリと頭が痛む
状況を理解出来ない僕は体を起こし、辺りを見渡す。
僕はどうやらこのカプセルのようなもの眠っていたようだ。
言ってしまえば最悪の目覚めだ。
そんなことを考えていた時だった
「お、目を覚ましたか」
聞き覚えがあるような声がした
僕は声のした方に目を向ける。
「…誰だ」
「覚えてないのか?酷いな、俺はお前の相棒だったって言うのに」
相棒、という言葉に引っかかった。
確かにこいつの声は聞き覚えがある。それに顔にも見覚えがあるような気がする
「ま、しょうがないか、眠っていたことによる副作用かもしれないしな。とりあえず自己紹介をしようか、俺の名前は『夜野 珠季』、お前の相棒だ」
「夜野 珠季…」
記憶を辿ろうとした瞬間。
「…ッ……」
ズキリ、と
先程と同じような痛みが僕の思考の邪魔をした。
「大丈夫か?」
「…あぁ、問題ない」
適当に返事をした。
「なんでここにいるのか思い出せるか?」
と、夜野 珠季に問われたため思考を巡らせる
…だか、全く思い出せないのだ
僕が無言のまま俯いていると
「…もしかして」
一泊置いて僕に告げる
「何も思い出せないのか?」
僕はその問いに沈黙を返した。
その通りだったからだ。
僕は今のところ何も思い出すことが出来ていない。
「とりあえず、状況を説明しよう。俺たちはとある事情で冷凍状態。言わばコールドスリープしていた。お前の記憶がないのはコールドスリープの副作用と考えるのが妥当だが…。俺もその直前の記憶は無い」
頭が追いつかない。
だがそう仮定すると僕がカプセルのようなもので寝ていたことの辻褄が合う。
「それで、どのくらい寝てたんだ?」
「それが俺にも分からないんだ、だから現在外がどのような状況なのかもわからない。第一、俺もまだ目覚めて数分だしな」
そこで、ふと辺りを見渡してみた
あるのは僕らが寝ていたカプセルのようなもの、その周辺にある機械、タンス、出口であろう扉だけだった。
そこで気づく
「あのタンスの上に置いてあるのって何だ?」
僕が指さした先に置いてあったのは、薄暗い部屋の中でも多少視認できる程の光沢を放つなにかだった。
僕はそれに近づいてみる…それは
「銃…?」
それは銀色の光沢を放つピストルだった。
「それか、持っといてもいいんじゃないか?俺はもう一丁携えてある」
一泊置いて彼は告げる。
「にしても不思議だな、このピストルはお前が眠りにつく前に使っていたピストルと全く同じものだ」
「僕が…?」
「僕らはそういう仕事をしていてな…それは追って話すことにしよう。無理に記憶を呼び起こすのも良くないだろうからな」
そう言うと、彼は出口であろう扉のドアノブに手をかけ
「とりあえず、外の景色を見てみようじゃないか」
「そうだな」
ピストルを懐にしまって
僕らは扉を開けるのだった