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美少女選抜優勝者の彼女に俺だけ塩対応してたのに、なぜか興味をもたれてめちゃめちゃ甘えてくるようになりました  作者: 遥風 かずら
第四章 迷わない関係

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第74話 じゃあ、脱いでください

「やっぱり足りない……って何が?」


 俺がついた嘘のことはあまり気にしていないように見えるが、それとは全く別なことで俺に怒っているのは何故だろうか。


 新葉への呼び方も以前に戻っているし、この状況だけで判断すれば俺にだけ文句がある感じだ。


「初めて会った時から感じていましたけど、翔輝くんって何なんですか!」


 そりゃあ人間だろって答えたいところだが、どうにも冗談が通じそうに無い空気感が漂っている気がするし何て答えるのが正解なんだ。


「翔輝はケダモノだけど獣じゃないよ~」


 やっぱりな、お前ならそう言うと思ってた。決していい答えじゃないけどな。


「新葉さんは見慣れているかもしれませんけど、そんなの分からないじゃないですか! ですので翔輝くん!」

「は、はい」

「今すぐ脱いでください!!」

「はひっ!? え、俺が?」

「他に誰がいるっていうんですか?」


 他にいるというと、新葉しかいないが。


「あたしも脱いだほうがいいのかしら?」

「……じゃあ脱いでください」

「あ、いやいや、遠慮しますわ、オホホ」


 何だ、意外に嫌なのか。

 というか、何で院瀬見はそんなくだらないことをさせるんだ?

 何か狙いでもあるとかじゃないよな。


 果たして何が変わるのか分からないが、言われた通りに上半身だけ肌着になった。


 すると院瀬見は俺の上半身をじっくり眺めながら、


「…………なるほど。まぁまぁ鍛えているんですね。体力も力も無いのに意外です」

「それはどうも」


 褒められているわけじゃないし、むしろけなされている気もする。


「あたしにはつららちゃんの思っていることが読めているんだぜ! 翔輝はね、背中だけは偉そうなんだよ! だからだね!?」

「えぇ、まぁ……胸を当てた時そうでしたから」

「ふふん、そうだと思ったよ~」


 何をドヤ顔してるんだこいつは。院瀬見は単純にお前の発言に呆れてるだけだろ。

 

「……で、俺はいつまで脱いでればいいんだ?」

「そうですね、出来れば肌着も脱いでもらえないですか?」

「裸になれと? そういう趣味があるのは変態趣味のある新葉わかばだけだと思ってたけど……つららもそうなら止めはしないぞ」

「…………うん」


 否定しないのかよ。


「誰が変態か、誰が!!」

「お前だ」


 こいつのことはともかく、肌着を脱いで正真正銘の裸になった。一体何がしたいのか意味不明だ。


「わたしに足りないのは――その前に新葉さん」

「はいはい?」

「翔輝くんに抱きついてください」

「ほ? えぇ? いいの? だってつららちゃんは……あっ、はい。抱きつかせて頂きます!」


 ……新葉が素直になるくらいの眼力があるな。


 よく分からないまま、新葉が俺に抱きついてくる。これ自体今さら緊張もしなければ新葉なんぞに興奮もしないことだが。


「…………い、いつまでこいつを受け止めていればいいんだ?」

「相変わらず貧弱よのぅ。だがそれが翔輝! あたしの知る翔輝だ~」

「やっぱり……。翔輝くんはあまりに贅沢に慣れ過ぎて全っ然、分かってくれてない!!」


 贅沢だと?

 まさか新葉に抱きつかれていることが贅沢とか言わないよな。


「新葉さん……」

「――! んむっ」


 何やら目配せで合図をしているが何を企んでいる?


「い、いきますからね?」

「翔輝、くらいやがれ~!! あたし直伝の肘うちじゃ~」

「あっ、てめっ! ぐぅっ……」


 新葉からの不意打ち攻撃で一瞬体の力が抜けてしまったが、新葉と入れ替わるようにして院瀬見が俺の胸元めがけて突っ込んできた。


「…………」

「……ど、どうですか?」

「どうって、いきなりで何が何だか……」

「わたしはドキドキしていま……してるんだけど、翔輝くんはしないの?」


 新葉の時は慣れのせいか何も感じなかったが、院瀬見つららの顔が間近にあってしかも俺は無防備な裸をさらけ出している。


 こんなの、どうすればいいっていうんだ?


「……えっと、これはドッキリとかじゃないんだよな?」


 新葉と事前に打ち合わせをしての行動にしか思えないし、実は交互に抱きついてくる可能性もありそうなんだが、俺に肘うちをくらわした新葉が部屋からいなくなっているし騙しではなさそう。


「わたし、誤魔化すの嫌いなんで。おかしなことを言うんですね、相変わらず。でも翔輝くんがきちんと幼馴染のあの人とは分けてることが分かっちゃいました。良かったです」

「お、おぉ? それはよかった」


 これはアレか?


 新葉のスキンシップに慣れ過ぎた俺が、院瀬見つららであっても全く何も感じないアンドロイドだと思われていたパターンか。


「吊り橋効果状態の翔輝くんに言うのも迷ったんだけど、言うね?」

「うん?」

「わたし、翔輝くんの――」

「あ、そういや……」

「もうっ! ……何ですか?」


 やっぱり嫌いですとか言われる予感があったから割り込んだが、上半身裸の状態で言われるのは刺激が強い。


「俺とつららってまだ偽の恋人状態だったか?」

「あぁ……そうでしたね。ニセモノ……はぁ。手強いというか、激ニブすぎて疲れてきちゃいます」

「じゃあ、この際本当の恋人関係になってもいいんじゃないのか?」

「――は? じゃあって何ですか? なにそのついで感! というか、いい加減離れてください!! 暑苦しいです!」


 おいおい、院瀬見から抱きついてきてそれはないだろ。いい雰囲気になっていくかと思えばすでに機嫌悪そうだし難しい奴だな。


「そりゃ悪かったな!」


 何故か険悪になりそうになったところで、院瀬見は自分のベッドに上がり込んでそのままベッドから動かなくなった。


 さすが最強美少女なだけあってすんなりといきそうにないな。


「ん~……翔輝くんの方からきてくれたら――なのに。追い詰められないと変わらないし決められないのかな……恋人とかそういうのは別になのに、そもそも肝心なことを言われてないし。新葉さんじゃなくてもっと別の誰かの……」


 何やら独り言をつぶやいているようだが、眠くなったので容赦なく部屋の電気を消してあげた。


「おやすみ、つらら」

「バカッ! おやすみ……です」

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