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美少女選抜優勝者の彼女に俺だけ塩対応してたのに、なぜか興味をもたれてめちゃめちゃ甘えてくるようになりました  作者: 遥風 かずら
第三章 恋と争う二人

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第59話 嫌いじゃないです、けど


 院瀬見が俺の隣に座っている――それはいいとして、


「……何か文句でも?」


 院瀬見は俺が席に着くまでと着いてからも、ずっと頬杖をついて俺をじっと見ている。俺からしたら何もしてないのに睨まれているのは納得出来ないんだが。


「別に睨んでなくて、見つめてただけですけど?」

「今さら俺を見て何か発見が? いや、敵だから見てただけか」

「敵ですよ? でも嫌いなんて一言も言ってないもん」


 またそういう可愛さを出すのか。


「まぁ、でも分かりました。今のところあなたがわたしをそういう風に見てるってことは理解しました」

「えぇ? そこまできついことを言ったつもりは無いんだけどな……」

「あれ、わたしが言ったことを気にしてるんですか? 案外可愛いところあるんですね」


 隣の席に来た途端に俺を茶化し始めているが、これは完全に舐められてるのでは?


 院瀬見とは上手くやっていく必要があるし、舐められてもって話だしここは軽く小突く()()をしておくか。


「俺が可愛い? それは違うな」

「じゃあ可愛くないってことでいいです」


 ……そんな分かりやすく頬を膨らませなくても。こうなればこの流れのままで実行するしかない。


「それなら、俺が院瀬見を可愛がってやろうじゃないか!」


 そんなことを言いながら院瀬見の頭を()()()つもりで手を近づけると、


「――いっ!?」

 

 ぐいっと手首を掴まれたと同時に、強い力で握られたことで痛みを感じた。


「女子の頭に手をあげるのは感心しないな」

「えっ?」


 隣の院瀬見を隠すように間に割って入ったのは、ワイシャツの胸元を豪快に開け黒いジャケットを着た推定30代くらいの大人女性だ。刈り上げのベリーショートな髪型をしていて、生徒よりも派手な金髪カラーをしている。


 声はイメージよりも甲高いが、妙な迫力を感じてしまう。


「いえ、あげるつもりはありませんでしたよ?」

「……ふん、どうだかな。キミがどうであれ、美少女優勝者に対する扱いには気をつけてもらいたい」

「お言葉ですが……誰よりも気をつけていますよ?」


 ちらりと院瀬見を見るといたずらっぽく舌を出していて、小悪魔っぷり本領発揮といったところだ。


「反論するキミは下道くん――では無さそうだけど、名前は?」

「院瀬見つららに()()を受けて隣に来た南翔輝です。けど……あなたは?」


 予想は出来るが、このクラスの担任教師だろうな。


「南翔輝……。ふむ、古根の生徒会長か。どうりで……。勝手に席を交換したことに咎めはしないが、くれぐれも彼女の扱いには気をつけたまえ」


 いやに念を押されたが、俺は言われるがまま素直に頷くことしか出来なかった。この様子を隣で見守っていた院瀬見は、うんうんと一人で納得していたようなのでこれ以上追及しては駄目だと悟る。


 そして金髪大人女性からの紹介は――


「――というわけで、キミらの担任となった院瀬見いせみせおりだ。霞ノ宮の女子たちにはお馴染みだが、古根からの男子は初めましてだな! これから一年よろしく頼む!」


 予想通り担任でしかも強すぎる女性教師すぎた。しかし気になるのは名前の部分だ。これは隣の院瀬見に聞いておく必要がある。


 幸いにしてクラスの自己紹介は各自の確認ということで省略されたので、俺はすぐに隣の院瀬見に聞いてみることに。

 

「もしかしなくてもだが、担任の院瀬見先生って……院瀬見の関係者か?」

「そうですけど惚れたんですか?」

「そういうアホな答えは求めてない」

「……冗談が通じないのはつまらないですね。まぁ、いいですけど……お察しのとおり、関係者です」


 ……なるほど。


 姉もしくは母親の線もありそうだが、今はそこまで追求するつもりはない。


「担任のことはいいとして気になってることがあるんだが……」

「何です?」

「推し女とはクラスが別々になるとか言って無かったか?」

「そうでしたっけ?」


 ――こいつ。


「でも、もう推し女としての付き合いじゃなくなりますし、気にすることじゃないですよ」

「相手がお前を推したいって言ってもか?」

「……お前って誰ですか?」

「――あ」


 ついうっかりと禁句が出てしまった。やはり新葉と一緒に生活してるから自然と出てしまうな。


 ()()と使うことに慣れすぎた俺も悪いが、何でこんなに拒否反応を起こすのか意味不明すぎる。席が隣だから逃げようも無いし。


「おまえさんって人がいてそれでだな……」

「おまえさんって、おかしなことを言うんですね。そこがあなたらしい逃げですけど。……ふふっ、冗談です。わたし、そんなに恐ろしいです?」


 少なくとも目が本気だったし、握りこぶしが一瞬だけ見えていたから地雷のような言葉と思っていいだろうな。


「俺に怖いもんなんて無いが、院瀬見をわざわざ怒らせるつもりは無いぞ」

「頭を叩こうとしてませんでした?」

「あれは――……そんなことをするつもりは無かっただけだ」

「ふぅん……」


 思わぬタイミングで担任に邪魔されたが、これだけは言っておこう。


「それと、席が隣になったからってそんな無理して話しかけなくてもいいんだぞ? 他の男子を差しおいて院瀬見とやたらと仲良くしてるのも良くない気がするし」

「言っときますけど、翔輝さんの良くないところってそういうところです」


 青ざめる前の下道の反応がその辺の正しき男子の反応だったんだろうが、院瀬見はそんな簡単な女子じゃない。塩対応でガードしてるからいいが、顔が綺麗すぎて時々どういう反応をすればいいのか分からなくなる時がある。

 

「ん? 俺のこと嫌になったとか?」

「嫌いじゃないですよ。けど……」

「けど?」

()()()()でいるのは困るので、そこは直してもらいたいです」


 言ってる意味が不明なものの、院瀬見の切なるお願いにしか聞こえないので頷いておくことにする。


「お願いしますね、本当に……そうじゃないとわたしが困るんですから」

「……んん?」

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