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美少女選抜優勝者の彼女に俺だけ塩対応してたのに、なぜか興味をもたれてめちゃめちゃ甘えてくるようになりました  作者: 遥風 かずら
第三章 恋と争う二人

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第56話 修羅場になんてなりませんので 後編


「えー……っと、俺はどうすれば?」


 とりあえず新葉はきちんと服を着た――といってもTシャツにスパッツ付きのショートパンツで無駄に足を見せて色香を漂わせているが。


 そんな新葉に対し、作業着姿の院瀬見が相変わらずの鬼形相で腕組みしながら廊下に突っ立っている。


 新葉は何の余裕なのかへらへらしているせいか、余計に院瀬見を苛立たせているようにしか見えず、俺はとりあえず間に入って話を訊いてみる――


 ――はずが、


「翔輝さんは少し黙っててもらえますか」

「そーだそーだ! 翔輝の出る幕は無いんだぜ~!」

「でもここは俺の家……」

「……だから?」


 決して間違ったことを言ってないのに、院瀬見は獲物を狩るかのごとく鋭い視線を俺にぶつけてきた。


「あっ、はい……」


 下手をすると俺も敵認定されかねないので、成り行きを黙って見守ることにする。

 

 すると先に切り出したのは新葉だった。


院瀬見いせみちゃんはお家を継ぐことにしたの~?」

「……違います。夏休みの終盤だけ手伝うことにしているだけです。そういう草壁さんはご実家に帰らないんですか? 何も翔輝さんに寄生する必要のないくらいのお家じゃないですか」


 ……なるほど。院瀬見はやはりどこかの会社の令嬢か。


「帰省はしないけど寄生する……う~ん、上手いっ! さすが才色兼備だねぇ」

「認めてはいるんですね?」

「いやぁ、翔輝といると楽なんだよねぇ。居心地がいいっていうか~。だから院瀬見ちゃんもここに来たのかな?」


 そう言いながら新葉は俺と院瀬見を交互に見ている。


「そうやって彼を誘惑するとか卑怯ですね……」


 誘惑されてる覚えは無いんだが。それはともかく、寄生する新葉とかシャレになってないぞ。とはいえ、新葉の実家がかなり厳しいことを知ってるだけに俺は何も言えないわけで。


 新葉の家は色んな事業をしていてガキの頃はあまり気付けなかったが、そのせいで新葉は結構な数の習い事をしていたらしい。俺の親とは取引相手ということだけは聞いているが、その辺はあまり興味が無いので俺だけは気楽なものだ。


 黙っていれば新葉も少しは気品が感じられるが、今となっては見る影も無い。


「スー……っ」


 ……ん? 新葉の雰囲気が変わったか?


「ふふ、翔輝を誘惑……? 院瀬見の令嬢さんはそんなことを言いに彼の家に上がり込んで来たの? わたくしに文句を言いに来ただけじゃないよね?」


 おいおい、何で修羅場を演出しようとしてるんだこいつは。


 修羅場はともかく、新葉はごくまれに()()を出す時があってその時だけ遠い存在のような気になるが、そうなるのは相手を敵と認めた時だけに限る。


 普段の残念な幼馴染じゃない空気感が出るということは、院瀬見に対しかなり()()たっぽい。


「文句です。文句を言いに来ました! だって……」

「ふぅん? 文句……ね。どういう?」


 うん?


 なぜに院瀬見は新葉じゃなくて俺を見てるんだ?


 文句を新葉に言いに来たって言ってるのに、視線を俺に向けるとか妙だぞ。そう思っていたら、仁王立ちで微動だにしなかった院瀬見が急に向きを変えて棒立ち状態の俺のところにやってくる。


 俺の前に立って作業帽子を脱いだかと思ったら、


「だって、不公平じゃないですか!!」


 ――などと、ヘッドバットをする勢いで俺の顔に迫って言い放った。


「へっ?」

「ほ? ほほぅ……?」


 新葉がせっかく本気真面目モードになって緊張感が走りそうだったのに、院瀬見が()()を言い放ったのは新葉にじゃなくて俺だった。


 しかもその声はいつものスンとした院瀬見ではなく、どこか泣きそうで甘えたそうな声色に聞こえた。


「ふ、不公平って……?」


 間近に迫る院瀬見の顔に俺は思わず緊張するも、新葉の方を見るといつものニヤけた顔に戻っていて何となくムカつく。


 動揺する間もなく院瀬見は長い髪を揺らしながら、


「寮を建て替えるって聞いた時、本当はどうしようか迷っていたんです。でも、翔輝さんの中途半端な告白があったことでわたしも少し冷めたところがあって、それで仕方なく実家に戻ったのに……」


 中途半端な告白扱いはキツイな。俺なりの告白劇だったんだが。


「何で草壁さんは当たり前のように翔輝さんのお家にいるんだーって思ったら居ても立っても居られないって思って」

「それで実家の手伝い? を兼ねて俺の家に?」

「うん……」


 俺の告白で途切れたかと思っていたが、院瀬見の俺への()()は継続中だったのか。


 もはや笑いをこらえきれない新葉がそこにいるだけでも腹立たしいな。そうかといって院瀬見を抱き寄せて頭を撫でてあげるという真似もやりたくない。


 苦しまぎれになったが俺の口から出た言葉は、

 

「えーと、お、俺の部屋でも見てみるか?」

「い、いいんですか?」

「散らかってるし、大したことは無いけどそれくらいなら別に」

「見たいです! 見ないと分からないし……」

「ん?」


 俺の家に上がり込んでいる時点で部屋を隠す必要は無い。新葉の服が散乱していそうだが、それは多分気にしてないはずだ。


「あっ、草壁さん」

「ほい?」


 俺の部屋にそのまま向かうかと思えば、新葉に何か言うつもりのようだ。


「外に積んであるご自分の段ボール箱だけでも片付けた方がいいですよ?」

「な、何と!? あたしがやるの?!」


 新葉の奴め、すっかりと油断していたな。


「当然です! 軽いお洋服だけでも運べますよね? 草壁さんもわたしのように力持ち……ですもんね?」


 そう言いながら院瀬見は腕まくりをして、最強セクシーな筋肉を見せつけている。それにしても、当たり前のことを言ってるだけなのに説得力があるな。


 しかしほとんど新葉の服だったわけか。それなら一人だけでも持ってこられるな。


「ええい、仕方が無い! あたしは段ボール箱を運ぶから、翔輝は――あとよろしく!」

「何がよろしくだよ。早く片付けた方がいいぞ」

「ムキー!」


 あの緊張感のある新葉はどこへ行ったんだ?


「あのあの、翔輝さん」

「え?」

「お部屋って何個ありますかっ?」

「へ?」

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