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美少女選抜優勝者の彼女に俺だけ塩対応してたのに、なぜか興味をもたれてめちゃめちゃ甘えてくるようになりました  作者: 遥風 かずら
第二章 当たり前の二人

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第38話 残念でしたね……?


 本当に、何でこんな可愛くて甘い反応をするようになったんだろうか。下着を外して俺の背中にくっついているだけなのに。


「…………」

「……とりあえずこのままベッドに背を向けたまま後ろに下がるから、ベッドに近づいたら上手い具合にベッドにダイブしてくれ」

「そんなの駄目。翔輝さんも一緒がいい!」

「えぇ? そんな無茶な……」


 後ろを見ずに俺も倒れ込むとなると、ベッドにバウンドすることになる。両肩には院瀬見が見事に掴まっているだけに細心の注意を払わなければ。


「翔輝さん。ベッドのところに着いた~」

「じゃあ、倒れるからな?」

「うん」


 院瀬見をなるべく見ない状態で、後ろにあるであろうベッドに倒れ込む――ただそれだけのことなのに妙に緊張する。


 ここがいくら()()()()場所だとしても、曖昧な関係でどうこうするつもりもないうえ、アレに連絡している以上下手な真似は絶対にしてはいけない。


 理性をがっちりと保ったまま、俺は目をつむりながら勢いをつけて片手だけでベッドに倒れ込んだ。


「きゃうっ」


 直後に聞こえてきたのはバフッ。とした軽い音と、彼女の可愛い声だった。俺の背中にくっついていた院瀬見の方がわずかに早くベッドに着地するのは分かっていたからそれは想定内として、問題は俺の手の行方だ。


 片手だけで倒れ込んだ時、結局防衛反応が働いて両手を使ってしまった。目をつむっているままでも自分の両手がベッドのマットレス部分に到達したことくらいは分かるものの、単なるシーツではなく別の何かに触れていることだけはすぐに理解した。


 今の時点での感触は判定が困難で、柔らかい何かを鷲掴みにしていることだけは確実だが()()が何なのかは分からない。


 手の行方のことを本人に聞くのは勇気がいるが、ここはあえて聞くことにした。


「……つららに一応聞くけど、俺の手ってどこにある?」

「ほぇ? 翔輝さんの手なら、ビーズクッション……のような物の上にあるです。柔らかくて揉み甲斐がありますよね~」

「ビーズクッション? 何だ、そうか……」

「あぁ~! 目を閉じてたら分かんないですもんね~! 何というか、残念でしたね……?」


 この言い方は随分と意地悪い気がする。


「……ん? 何で?」

「この流れだとわたしの胸に手がいっててもおかしくないじゃないですか~。それなのにまさかのクッションだなんて、がっかりしたんじゃないのかなぁと」


 最初に可愛い声が出てたのが気になるけど、お約束のアクシデントでは無かったならそれはそれでいいや。


「がっかりなんてしないな。俺はこう見えても生徒会長だからな」

「あ、そうでしたね! そんな真面目な翔輝さんなら怒る気も失せちゃいますね」

「……え?」

「まだ目をつむってて不安だと思うので、目を開けることを許しちゃうです! 目を開けてからの反応が楽しみです」


 何か間違いが起こってたらと思うと怖くて目が開けられなかったが、鷲掴みにしてるのがビーズクッションなら何も問題は無い。


「……それもそうだな。じゃあそうする」


 所々で言葉に引っかかりがあったものの、院瀬見本人が平然としてるし多分何も問題無いだろ。


 そう思いながら目を開けると、


「――え」


 ベッドの上には確かにビーズクッションが置かれていた。しかし枕側に無造作に置いてあるだけで、俺の手の中には収まっていなかった。

 

「ビーズクッション……じゃなくて、俺はずっとつららの胸を?」


 とはいえ、院瀬見の胸はモコモコの白いベッドカバーで覆われていて見える状態に無く、正確な位置は分からなかったりする。


「それはどうでしょうね? でも目を開けたら感触の違いに気づいたと思うので、上手く騙されちゃいましたね。本当に残念でしたね~」

「そ、それならいいんだ……」


 良かったような残念だったような。そうなるとじかに院瀬見の胸の感触を感じたのは、俺の背中ということになる。


 突発的に起こることなんてこんなもんだろうな。


 しかし現時点では俺が院瀬見を押し倒している光景に間違いはなく、第三者が見たら確実に誤解を招く。

 

「それより、翔輝さんも横になりません?」


 その前に院瀬見の下着を乾かしてもらわなければ。


「あれ、部屋干しは?」

「そうでした。えっと、シーツごと動くので少しだけ寒い思いをさせちゃいますけど、大丈夫ですか?」

「問題無い」

「じゃ、すぐに戻りますのでそのまま横になってていいですよー」


 何事も無く下着を備え付けハンガーに干そうとする院瀬見だったが、悪いタイミングでインターホンが鳴った。


 もしかしなくてもあいつか?


「えっ!? 翔輝さん……あのっ、誰か来たみたいです。ど、どうすれば?」

「心配いらない。俺が出るよ。つららはそのまま部屋干しを急いで」

「はっ、はい」


 院瀬見の今の格好はシーツに隠れてはいるが、裸に近い。俺は上半身だけ裸だが、あいつなら多分悟ってくれるはずだ。


「ここを開けなさいー!!」

「君は完全に包囲されてるぞー!」

「おい、誤解を招くことを言うな! 新葉わかばだよな?」

「……それはどうかな?」


 ちっ、面倒な相手だ。


 そう思いながら怒り任せにドアを開けると、そこにいたのは新葉と――


「――南くん。どうして裸なのかな? もしかしてお楽しみだった?」

「な、七先輩!? え、どうして……」

「あたしもいるんだぜ! ふっふっふ。上半身裸の翔輝に言い訳など出来ないぞー!」


 新葉だけかと思いきや、一緒にいたのはまさかの七石先輩だった。

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