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美少女選抜優勝者の彼女に俺だけ塩対応してたのに、なぜか興味をもたれてめちゃめちゃ甘えてくるようになりました  作者: 遥風 かずら
第二章 当たり前の二人

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第28話 友達からの修羅場突入?


「ところで、どんな仕事をするのか聞いてるか?」


 新葉わかばが言っていたのは七先輩関係のバイトってことだったが、中身までは教えてくれなかった。


「いいえ。七石先輩の関連スタッフ? ということだけです」

「なるほど」


 友達になったからって何かが劇的に変わるわけじゃないようで安心だ。だからといって急に馴れ馴れしくなっても困るけど。学年が同じだからため口になったとしても全然問題無いわけだが、院瀬見の中ではまだそこまでじゃないってことだな。


「翔輝さんこそ、わたしたちの他に誰が来るか知っています?」

「いや、バイトだから全然知らない人も来るだろ」

「それもそうですね。集合時間もまだ余裕がありますし、ここで指示を待てばいいだけですもんね!」


 とはいえ、俺はともかく院瀬見が本当にバイトなんて出来るのか?


 七先輩の関連と言っても本人がいるわけじゃないし、関係者枠で優しくされるでもないからその辺だけは心配になる。

 

「一応聞いとくけど、院瀬見いせみにバイトが勤まるのか?」

「つらら!」


 一度下の名前で呼ばせたら永遠に名前呼びになるわけか。今はいいけど学校が始まった時とか、他の誰かがいる時の反応がどうなるかだな。


「……つららに出来るのか?」

「ふふん、そこは侮らないで欲しいです!」


 院瀬見は人差し指を左右に揺らして随分と余裕たっぷりな態度を見せている。しかし仮に中学の頃にすでに何かバイトをしていたとしたら、俺よりもバイト経験のレベルが高い可能性がある。


 だが、


「新聞配達を見たことくらいはあります!」


 この答えは想定外だ。


「そりゃあ誰でも見るだろ。配達員のことだよな?」

「え? そうですけど……何かおかしなことを言いました?」

「おかしすぎるだろ! 配達する人を見るだけなら誰でも見る。だけど、俺が言ってるのは配達をしたことがあるかどうかだぞ」


 まさかの天然発言だった。しかし美少女選抜に出る奴がいつバイト出来るんだって話になるし、あまり強く責めるつもりはない。


 院瀬見の家のことを詳しく聞いていないが、この反応だけで判断すればどこかのお嬢様の可能性がある。バイトのことを知らないのは無理もない。


 それに話に出た新聞配達員はまさに中学の頃の俺なわけで。そんな俺を院瀬見は目撃していたってだけの話になる。

 

 それなのに、


「そ、そんな強く怒らなくてもいいじゃないですかー!!」


 自信を持って言ったはずなのにすぐに突っ込みされるとは思わなかったのか、院瀬見はふくれっ面で俺の脇を人差し指でつんつんと突っついてきた。


「いやっ、そこまでじゃ……」

「このこのっ!! ムカつくムカつくムカつくー!」


 まだ誰も集まってないからいいとしても、この光景はどう見ても――何となくそう思っていると、どこからかともなくか細い声が聞こえてくる。


「……南とつらら、いちゃついてる。何故?」


 どこにいたかと思えば、俺たちが気づかなかっただけで真正面に立っていた。


 この声の主は推し女の……


「確か、聖菜せな……だったか?」

「そう。私だよ、南。私、髪切ったよ。似合う?」


 三人の推し女のうち、金髪は九賀、茶髪は二見。そして銀髪だったのが、十日市聖菜という小柄な推し女だった。そんな銀髪が黒になっていて、黒いショートな髪を俺に見せつけている。


 しかし何でこの女子がここにいるのか。


「そ、そうだな。でも何で君がここに?」

「私も七石麻のアルバイトスタッフ。良かった、南がいてくれて」

「そうなのか。でもそのTシャツ……って」

「うん。私、前からバイトしてるから。だから分からないことは何でも聞いて?」


 何だか分からないが、まるで院瀬見がいない前提で話を進めているように思える。そういえば推し女ではあるけど仲が良くない女子がいるとか聞いていたが、この子がそうなのだろうか。


「聖菜さん。わたしもいるんですけど、勝手にお話を進めないでもらえますか?」

「知ってる。見えてるから大丈夫。私は今、彼と話をしてるから」


 聖菜がそう言うと、俺の脇に手を入れて腕を組んできた。


「――っ!」


 おいおい、何で院瀬見を煽ることをわざわざしてくるんだ?


 大して話をしたことがない女子なのに何でか俺にやたらとくっついてくるし、やってくる動きがどう考えても友達以上の動きだ。

 

 さすがにここまで親しい覚えはないのですぐに彼女から離れたが、俺の動きに理解が出来ないのか、聖菜は首を傾げている。


「ねぇ、南。私からの手紙、読んでくれた? 返事をくれるなら今でもいいよ?」

「手紙……って?」

「そのままの意味」


 そういや――新葉の部屋でよく分からないメモを見たような。あまりに不明すぎたうえ誰なのかさえ分からなかったから、捨てたんだよな確か。


「何ですかその話! 聖菜から何をもらったんですか?」

「大したことじゃないけど結構前に手紙を見たっていうか……」

「ど、どんな手紙なんですか?」

「いや、手元に無いから覚えてないな」

「そんな誤魔化さなくてもいいじゃないですか!! わたしに話せないことなんですか!」


 聖菜にガン無視されたことで頭にきているのもあるようだが、知らない間に俺とやり取りをしていたことに相当怒っているな。


「私から話そうか? それとも南が言う?」

「覚えてないから俺は何も言えないけど……」

「じゃあ私からつららに教えるね?」

「あ、あぁ」


 よりにもよってバイト初日、それも七先輩絡みの仕事でこんな巡り合わせとか、院瀬見との雰囲気が少しはマシになってきたと思っていたのに。


 バイトが始まる前からこんな修羅場になるとか聞いてないんだが。

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