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美少女選抜優勝者の彼女に俺だけ塩対応してたのに、なぜか興味をもたれてめちゃめちゃ甘えてくるようになりました  作者: 遥風 かずら
第一章 塩対応な二人

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第22話 リズミカルな心臓の音?


 何を言うかと思えば――


「俺が推し女の誰かを好きかだって?」

「はい。真面目に答えてくだされば、わたしもそういう対応で進行していこうと思ってます」


 真面目も何も、院瀬見も純と似たようなことを聞くものだな。


「推し女なんて気にしたこともないし、そもそも興味ないな」

「そ、そうなんですか?」

「……そういう院瀬見は誰か気になる男子でも? 例えば、生徒会の副会長とか」


 いきなりストレートすぎたか?


「副会長さん? ……って誰でしたっけ?」


 おかしいな。院瀬見と純は交流会の時に話をしてたはずだし、割と厳しめな注意をしていたはず。それが記憶にないとかそんなバカな。


「生徒会長の名前は?」

「目の前にいる偉そうな南翔輝さん」

「……マジか」

「マジです」


 院瀬見の口から『マジです』が聞けるとは思わなんだ。しかし、本人は得意げな顔をしているし変に茶化したところで無駄だろう。


 まさかと思うが、俺以外の男子はモブとして一括りにしているんじゃないよな?


「一応聞くけど、俺以外に男子がいるのは認識出来てるんだよな?」

「わたし、両方とも視力いいです!」

「……だろうな」


 腕っぷしも俺より強いだろうし、体力もある。欠点という欠点は無いと言える。そうじゃなければ美少女選抜で優勝するのは厳しい。


 新葉アレの場合はちょっと惜しい部分があるから準優勝止まりだけど。


「ちなみに生徒会メンバーの名前も知らないとかか?」

「翔輝さんの他に二人、いえ三人でしたっけ? 他にも数人の在籍は確認しています」

「あぁ、三人だ。それ以外もいるけど……人数はともかく、名前も知らずに生徒会活動に協力してたのはどうかと思うぞ」

「興味が無いうえ、大して仲良くも無い人の名前を覚える必要ってあるんですか?」


 そう言われたら何も言えない。


「……ん? 俺って院瀬見と仲がいいのか?」

「普通じゃないでしょうか」


 院瀬見の中では普通だから覚えられているって意味だろうか。それにしたって、面と向かって話をしたことがある純のことを全然覚えてないなんて。


「ところで、翔輝さんからもお話がありましたよね。何ですか?」

「あー……それはだな」

「はい」

「えーと……」


 さり気なく副会長である純について聞いたのに、記憶の片隅にすら残ってなかったなんて想定外すぎる。俺から聞きたいことの用なんて終了したも同義だ。


「聞きたいことがあるなら、わたしの目を見てはっきりとおっしゃってください」

 

 何かが気に障ったのか、院瀬見は目の前のテーブルをバンッ。と叩きながら、自分の顔を俺に近づけてくる。


 何でこんな怒ったように詰め寄ってくるんだ?


 何も悪いことしてないし変なことを聞こうとしているわけじゃないのに。いや、そもそもの発端は院瀬見が妙なことを聞いてきたからだな。


 よし、こっちも反撃だ。目を逸らすことなくまっすぐに見つめ直してやる。


 そう思ったが、テーブルが気のせいか少しだけ不安定な気がしてならない。このまま挑発をしていいものかどうか。


「…………」

「…………な、何ですか?」

「そのテーブル、何か傾いてるけど大丈夫か?」


 テーブルを挟んで俺と向かい合っている院瀬見とはやや距離があるが、強い力でテーブルを叩きながら今にも倒れそうな勢いで迫ってくるのは嫌な予感しかしない。


「あっ――!? えええっ? た、倒れ――!!」


 言わんこっちゃないな。せっかく気づかせてやったのに力を抜かないとか、無防備にも程があるぞ。


「俺が受け止めてやるから!」

「――し、信じますからーー」


 院瀬見は顔を真っ赤にしながら、勢いよく俺の胸元にダイブしてきた。保健室のベッドの時とは別に、院瀬見の頭が目の前に迫ってくる。


 今回はほぼ体当たりで、胸元に感じた衝撃はなかなかのものだった。テーブルが傾いての体当たりだから事故のようなものだ。


 お互いに痛みはほぼ感じられないはずだが、院瀬見がいつまでたっても動かずにいるのは何故なのか。


「……院瀬見? おーい?」

「――!! ふ、不覚です。こんな隙を見せてしまうなんて恥ずかしすぎます……」

「だからといってこのままいられても……無防備な頭を撫でてしまうぞ?」


 院瀬見は珍しく耳まで真っ赤にしながら、うーうーと俺の胸元で唸っている。


 もしかしなくても恥ずかしくて起き上がれないとかなのか?


「す、好きにしたらいいじゃないですか! 後でどうなっても構わないならですけど」

「霞ノ宮の女子が敵になるとかなら怖いな」

「そういう意味じゃないのに……」

「ま、まぁ、とにかく痛みが無いなら顔を上げても――」

「それは無理なので、あの、肩に手を置くのを許可するので……わたしを引きはがしてください。そうすればきっと、リズミカルな心臓の音が静かになりますから」


 リズミカルって。変わったことを言う奴だ。しかし、何で自分の力で起き上がれないんだろうか。


 と思いつつも、肩に手を置きながら院瀬見を無理やり起き上がらせると、院瀬見はすぐにソファに向かって勢いよく後ろにジャンプしていた。


 一体何がやりたかったのか意味不明な動きだ。


「……で、心臓の音は静かになったか?」

「翔輝さんの心臓こそ、縮み上がっていたんじゃないですか?」


 まさかこの期に及んで俺に挑発を仕掛けてくるつもりか?

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