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クラテス先生の衝撃の発言の次の日、ルカ先生がやって来た。
「やっほー!僕の可愛い生徒たち!元気?」
3人はもはや怒る気持ちにもならず、傾きゼロ、水平の感情でルカを見る。
「おや?なになに〜なんか3人とも元気ないねー!」
スーパー空気読めないルカは、さすがと言うべきか、キョトンとした様子で3人を見つめる。
「ま、いっか!とりあえず合格おめでとう!これで治癒魔法の初歩は完璧マスターだね!
優秀、優秀!わはははは!」
どこから出したのか、ルカは扇を出すと、それをパタパタと仰ぎながら、愉快そうに笑っている。
3人はお互い目線をあわせて、このスーパー空気読めない教師には敵わないことをお互い悟っていた。
「ルカ先生、今日は何するんでしょうか?」
アデルはたまらず尋ねる。
どうせロクなことではないが、とりあえず呼び出された理由を聞いておきたい。
「ん?あ、そうそう!
明後日から君たちは『文化交流』としてラシュタール王国に行くわけだが!」
ルカは以前から伝えていたことのように話し出す。
「一応、色々な予防のために、君たちにそれぞれ守護者をつけるから。」
「が、守護者?!」
育ちの良いロランにしては珍しく、驚いた様子で大声を出す。
「・・・?なんだそりゃ?」
「初めて聞くわね。」
リューとアデルはポカンとしている。
「守護者なんて、国家レベルの要人につけるものですよ。一体どうして・・・。」
「ま、何があるかわからないからね!君たちは若くしてVIP待遇ってことだよ。
そもそも、攻撃魔法も防御魔法も未熟な君たちを王国の外に出すなんて、あり得ないんだよ。」
白き翼は、入学して数年は治癒魔法と同じくらい、その身を守るための攻撃・防御・逃避魔法の習得に励む。
そして、未熟な新米の白き翼は、まず国外に出すことはしない。
それくらい白き翼は貴重な存在なのだ。
通常であれば、ラシュタール王国の文化交流でも、未熟な白き翼は出さない。
しかし、今回は特別な事情がある。
(ま、国家秘密だから、3人には言えないけどね。)
「大丈夫だよ。君たちの守護者はスーパー優秀な人材だからさ!」
ニコニコと笑いながらルカが受け合う。
「相変わらず、説明が足りないわね、ルカ。」
鈴のような綺麗な声が3人の後ろから聞こえた。
思わず振り返ると美女がそこにいた。
「え・・・?あなたは・・・。」
ロランは振り返って、美女を見るとそれだけ言って絶句する。
「あ!あ!赤き龍の総長!イヴリン・ロワーシュ・クレハ!」
アデルは思わずフルネームを叫んでしまう。
イヴリンはにこりと優雅に微笑む。
アデルは夢心地でイヴリンを見つめる。イヴリンは赤き龍のトップに立つ、女性魔導士だ。
とてつもなく強く、それでいて、とてつもなく優雅な女性魔導士として、王国にその名が轟いている。
彼女に憧れる魔導士は星の数ほどいる。特に女性魔導士からの憧れの的である。
「ほっ!本物に会えるなんて!」
アデルはジーンと感動している。
「イヴリンはどこでも人気ですね。」
今度は、穏やかで優しい声が頭上から聞こえる。
3人は今度は上を眺める。
「あっ!あなたは!」
また、ロランが叫ぶ。
「おおっ!オリバー・ナハト・バーグマンだ!すげーっ!」
今度はリューが叫ぶ。
オリバーは空中からすいっと降りてくると、手を伸ばし、3人と握手を交わす。
「初めまして。新米の白き翼さんたち。
僕は緑の霊亀の総長のオリバー・ナハト・バーグマンです。」
「うわー!すげー!ほっ!本物だ!」
リューは子供のようにはしゃいでいる。
「ルカ先生、このお二人は・・・。」
「君たちの守護者だよ。」
相変わらずというか、ルカは驚きの発言をさらりと言う。
「は・・・・?王国最強の魔導士が僕たちの守護者!?」
「うん。」
「な、何だよ!?ラシュタール王国っていうのはそんなに危ない国なのか!?」
「んー状況によるかな?」
「じ、状況!?!?」
「だって君たち、弱っちいから、死んじゃったら困るし。
僕、王様から怒られちゃうもん。」
「死ぬ???」
大きなため息を吐いて、イヴリンが制する。
「ルカ、よしなさい。怖がっているじゃないの。」
「ルカ、言葉を選んだ方がいいよ。」
オリバーも呆れている。
「あーごめんね!あくまでも万が一のためだから!
さてと!割り当てだけど、
ロランの守護者はイヴリンね。
そして、リューの守護者はオリバーだよ。
」
「えっ?私は?もしかして・・・。」
アデルはゾッとしたような顔をする。
「もっ!もしかして、私の守護者は、る、ルカ先生とか?」
ものすごく嫌そうな顔をしてアデルは叫ぶ。
ロランとリューは同情と不安の眼差しでアデルとルカを見る。
「ブッブー!僕は今回、引率だから、守護者はやりませーん!」
ルカは両腕を交差して、大きなバツマークを作る。
(何なの、なんかムカつくジェスチャーだわ。)
アデルはイラっとした顔でルカを見つめる。
すると、ルカは急にイタズラっ子がするような、にやにやした笑いを浮かべた。
「遅い!遅い!遅刻だよ!」
アデルは自分の真後ろに気配を感じて、ぶんっ!と音がする勢いで振り返る。
黒髪の赤き龍のエースがそこにいた。




