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次の日、リュー、ロラン、アデルは治癒魔法の初等科目である傷の治療をマスターし、めでたく、クラテス先生から「合格」をもらうことができた。


クラテス先生は合格を言い渡した3人の生徒の前で、にっこりと微笑み、特別に3人を食事に誘い、授業で使ったホロホロ鳥の丸焼きを振る舞ってくれた。

はちみつでコーティングされた皮はテラテラと輝き、パリパリに焼けていた。そのパリッとした皮をナイフで切ると、柔らかい肉は新雪のようにホロリと崩れた。


ホロホロ鳥の中に入っているスパイスで味付けされた野菜やお米も絶品だった。

ニンニクや香辛料が効いたグレービーソースは、大皿に盛られた料理を横断する大河のように流れ、食欲を刺激した。

カリッと焼かれたパンも添えられ、バターが柔らかく溶け出している。

シャキシャキで新鮮なレタスサラダにはお酢と胡椒とオイルがかかり、口直しに最適だ。

さらにさっくりと揚げた鶏肉と濃厚なチーズもたっぷりとある。


3人は料理を大口で食べると、それをレモンジンジャーサイダーで流し込む。

育ち盛りの3人はいくらでも食べられる気がした。

ロランも、普段の貴族たる躾を忘れて、同期2人とカジュアルな雰囲気で食事をしていた。


柔和で温厚なクラテス先生はそんな3人の恐るべき食欲を楽しそうに見つめている。

そして、皿が空になれば、大きなスプーンで、たっぷりと料理をよそってくれた。


デザートにはこれまたクリームとフルーツがたくさん乗ったメレンゲケーキが出た。

3人はふわふわのケーキを心ゆくまで堪能した。



「さて、お腹いっぱいになりましたか?」

3人はクラテス先生ににっこり微笑んだ。

「はい、とっても!ご馳走様でした。」

「みなさん、とても優秀で、先生も鼻が高いですよ。」

クラテス先生もニコニコしている。

アデルは満腹になったお腹をさすりながら、うっとりした気持ちでなみなみとコーヒーが入ったカップに手を伸ばす。


素晴らしい1日だった。

3人とも合格し、特にアデルは「筋がいい」と褒められたのだ。

あんなにダメだったが、ユキのおかげでコツをつかみ、すっかり傷の治癒はできるようになっていた。


ユキにお礼を言わねばなるまい。


しかし、ユキはあのあと、あっという間に移動魔法で消えてしまった。

そのため、アデルはきちんとお礼を言うこともできなかった。


ふと、アデルはユキにお礼を言うにしても、彼のことを全く知らないことに気がついた。

もちろん、赤き龍の所属で、とても優秀な・・・いや、優秀すぎるくらい優秀な魔導士だということは知っている。

ユキの優秀さは、アカデミー卒業レベルじゃないことくらい、アデルだってわかる。そんじょそこらの魔導士なんて相手にならないレベルらしい。

あと、すごくハンサムだと、みんな言っていた。

どこかエキゾチックな顔立ちと、あまり自分のことを話さないミステリアスな雰囲気が素敵だと、女子生徒から人気らしい。 

さらに魔法のセンスもマルなので、男子生徒も憧れている人が多いとか・・・。要はかなりモテているらしい、と情報通のリューとロランが教えてくれた。


そして、そのユキはアデルを好いているのではないか、という噂があるらしい。

アデルはロランとリューから、その噂を聞いたとき、思わず吹き出してしまった。


(まったく!本当にありえないことだわ!)


アデルはその可能性をあっさりと否定した。

アデルはその抜きん出た美貌から、たくさんの人(男女を問わず)から色々な思いを寄せられてきた。

だから、本能的にわかるのだが、ユキが自分に寄せる感情は、いわゆる色恋の感情ではない。


(でも、じゃあ、どんな思い?)


アデルはそれ以上はわからなかった。

確かに、ユキはなんらかの感情を自分に寄せていることはわかる。

しかし、それがなんなのかはアデルにはわからなかった。


出会ってまだそんなに経っていないのに、特別な感情を抱くには、ちょっと変だ。


でも、ユキがなんらかの感情を自分に持っていることはアデルも否定できなかった。


そこまで考えると、アデルは急に疲れを感じた。

カップを口元に運び、コーヒーの香ばしいアロマを味わう。


「しかし、しばらくアリシア王国の味とはお別れですね。」


クラテス先生はしんみりと言う。

そして、衝撃的な発言を、あのおっとりとした口調で放つのだ。


「皆さんもあと3日で旅立つと考えると色々不安でしょう。でも、僕やルカ先生、そして他の所属の生徒も一緒ですからね!」


3人は動きを止めて、目を丸くしてクラテス先生を見つめる。

ロランはポットから紅茶を注いでいる途中で動きを止めたので、みるみるカップがいっぱいになる。


「ああ!火と砂漠の国、ラシュタール王国!

僕の専門である古代魔言語でも有名な歴史ある王国ですから、個人的にとても楽しみです。

お願いすれば、ラシュタールの貴重な秘宝や遺構を拝見できるかもしれません!」


クラテス先生は3人の生徒が完全停止したことに全く気が付かないまま、うっとりと続ける。


「楽しみですね!ラシュタール王国との文化交流!」


ロランの紅茶はカップから溢れた。


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