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「ぶっファーーー!キッ!気持ち悪っ」
移動するなりアデルは倒れ込んだ
「あっ!ごめーん!遅刻だからさ、急いじゃった。あれ?魔力酔いしちゃったー?ごめんねー!僕、魔力強いからさ!あはは!」
(絶対にこれはワザと!この男!絶対ワザとしてる!)
アデルは本能で悟った。
「うー気持ち悪い!」
吐きそうである。
でも流石にこの訳の分からない、ムカつく銀髪の前で絶対吐きたくない。
「あ、すぐ治すね!はい、治癒魔法〜」
銀髪がアデルに手をかざすと、シャララーンと音がして、吐き気や眩暈がすっかり消えている。
「へっ・・・!」
急にクリアになった頭と視界に、逆にぼんやりしてしまう。
生まれて初めての治癒魔法!すごすぎる!
一瞬でモヤが晴れたように清々しい。
絶句して銀髪を見上げると、白いローブを身にまとった男が微笑んでいた。
「あ、よくなったみたいだね(ニコッ)
僕はルカ・ディラ・ストランゼ。さっきも言ったけど、君の師匠だよ」
「はぁ・・・・?るかでぃらすとら・・・え?今なんと仰いました?」
「じゃ、僕についてきて」
(この人、人の話きかないイイイイ!!!)
突然の情報量に頭がついていけず、慌てて後を追って走り出すアデル。
「あ、走るの禁止ね」
「無理!身長も脚の長さも違うでしょ!」
「こらこら敬語〜」
「し、失礼いたしました」
「あはは。よろしい、よろしい」
(変な人・・・この人が本当に「あの」ルカ・ディラ・ストランゼなの?)
アデルは胸騒ぎと驚きとを抱えて、銀髪の「白き大翼」の姿を追った