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「あ、あんた!人の話聞いてた!?私はまだ治癒魔法をマスターしてないのよ?」

アデルの視線はタラタラと血が流れるユキの左腕に注がれている。

「できるさ。」

ユキは涼しい顔で答える。

「なっ!できないって言って・・・」

「アデル、光魔法の粒子はお前のことがまだ『主人(あるじ)』かどうかわかっていないんだ。」

「へ?あるじ・・・?」

ユキは何かを確かめるかのように、鋭い視線をアデルに向ける。

「光魔法、そして闇魔法は他の属性魔法と違って、極めて難しいと言われている。

それはその魔法を構成する光粒子、闇粒子が主人(あるじ)と認めた魔導士にしか従わないからだ。」

「しっ知ってるわよ、そのくらい。」

魔法とそれぞれの魔粒子については、魔法学校の初等クラスで学ぶ内容だ。

「知っていることと、出来ることは違う。」

ユキはアデルの手を掴むとまっすぐにアデルを見つめる。

「命じるんだ、光の粒子に。自分の意思に従えと。」

「命じてるわ、私は・・・。」

「いや、お前のは『お願い』だろ?命令ではない。」

アデルはハッとした。

(言うことを聞かない光の粒子たち。

私は彼らを従わせようとしただろうか?できればやって欲しい、くらいに思って、強く命じていかなかった気がする。)


アデルは息を吸い込むとユキの傷ついた腕に手をかざした。

そして意識を集中して、光の粒子たちに命じる。

(私の言うとおりにしなさい!)

しかし、何も起こらない。

相変わらず、光の粒子たちはふわふわとアデルの周りを漂っている。

(ユキの傷を治しなさい!)

しかし、アデルが命じても、光の粒子は少しだけユキの傷の周りに集まりはするものの、うろうろとしているだけで、傷は一向に塞がらない。

何度命じても同じである。

「ユキ!全然ダメだわ。」

アデルはついに弱音を吐く。

「いや、出来るさ。」

ユキは自分の傷の周りに漂う光の粒子たちを懐かしげに見つめながら答える。

「だって、さっきから何度も命じているけど、全然変わらないわ!あなたの傷も出血が止まらないし・・・。」

「アデル!」

ユキはアデルの顔を怪我をしていない方の手でクイっとあげると、アデルの紫色の瞳を覗き込む。

「戦場で、それが言えるか?」

「・・・・っ!」

アデルの紫色の瞳の瞳孔が開く。

「命じるんだ、心の底から、光の粒子たちはお前の命令を、絶対的な主人(あるじ)の存在を待っている。」

アデルはもう一度息を大きく吸うと、そっと目を閉じた。

自分の心臓の音が、トクトクと優しく聞こえる。さあっと風が吹き、光の粒子たちはアデルの周りに蛍のように集まる。


(光の粒子たちよ、私はお前たちの主人(あるじ)

お前たちに命じる・・・)


無意識にそっとユキの傷に触れる。


ユキは何かを感じたのか、かすかにぴくりと反応するが、すぐに元の平然とした表情に戻る。


(彼の傷を癒やしなさい!)


アデルは目を閉じていたが、光の粒子たちが嬉しそうに自分の手の先に集まるのを感じた。そして、自分の中心から、何か温かいものがゆっくりと腕を通り、指先へ進み、そして温水が流れ出るかのように出ていくのを感じた。

光の粒子たちはその温かい何かと嬉しそうに交わり、魔力を形成する。


ユキは目を見開いて、アデルの指先を見つめる。


ユキもまた、自分の内側から何かが湧き起こり、放たれるアデルの魔力を受け入れようとしているのを感じていた。

それはあり得ないことであった。


時間にすればほんの5分ほどであるが、ユキにとっては、永遠にも感じられる時間であった。


アデルはそっと目を開ける。


紫の瞳は黒い瞳と交わる。


ユキはニヤリと微笑んだ。


「ほらな、出来るって言っただろ?」


アデルは呆然とユキの傷が「あった」場所を見つめた。


ユキの腕は何事もなかったかのように元に戻っていた。

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