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ルカは王宮の奥にある部屋にいた。
部屋というより、トランスルームの中にいるというべきだろう。
「その話は本当じゃな?」
エスメラルダはルカを見つめる。
「間違いございません。」
ルカはそっと頭を垂れて、エスメラルダの言葉をじっと待つ。
エスメラルダは険しい表情をすると、長考に入った。
トランスルームの中は何も音がしない。
ルカは微動だにせず、あまりの静かな空間の中で、自分の鼓動がトクトクと波打つのを感じていた。
どのくらいの時が過ぎたのであろう。
エスメラルダは決意したかのように、顔を上げると、手短に答えた。
「この話、伏せよ。」
その返答にルカは無表情のまま「御意。」と簡潔に返答する。
さらにエスメラルダは続ける。
「アデルの守護者はどうするのじゃ?」
「ユキが適任かと。」
「よかろう。」
エスメラルダの琥珀色の瞳が鋭く輝く。
「ルカよ、この話、他言無用ぞ。」
「仰せのままに。この命にかけて。」
そう言うと、ルカはハッとしたような表情を浮かべる。
「帰還したようじゃな。」
エスメラルダはそう言うと、もう話は済んだとばかりに、頷く。
ルカはそのエスメラルダの仕草を見るや否や、消えた。
エスメラルダはそっと魔法陣を使ってトランスルームを解除する術式を組む。
「俺は、会わなきゃいけない人がいるんだ。それが誰かわからない。だけど、会えば絶対にわかるんだ。」
幼いユキの悲痛な告白。
そんな彼も、今や将来を嘱望される、いや、ある意味危ぶまれるほどの優秀な魔導士に向かって歩みはじめている。
そして、アデル・・・。
あの紫の瞳・・・。
「不思議なお嬢さんだのう。」
エスメラルダの呟きだけが響いた。




