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マリラはアデルの光る玉をじっと見つめる
(これは・・・一体・・・。)
通常、光る玉をキープするためには繊細な魔力調整を必要とする。
何度も練習して、やがて光の粒子の動きが見えるようになる。これは「見える」というより、粒子にまとわりつく魔力の帯を感じることができることを指す。
その帯を捉えながら、自分の両手から放出する魔力を細かく調整することで、うごめく光の粒子をコントロールし、光の玉を安定させる。
普通は、である。
しかし、アデルのやり方は全く違う。
光の粒子は光の玉の中で高密度により集まりながら、高速で動いている。
「光る玉の中に『流れ』を使ってみたの!」
アデルはどこか照れくさそうに説明する
「流れ・・・?」
「小さな子供たちが風魔法の遊びで、風の流れに乗って遊ぶように、光の粒子も『流れ』に乗せれば、こんな風に動き回って、やがて光の輪の中で安定するの!」
マリラはアデルの発言を聞きながら再び光の玉を見つめる。
粒子たちはアデルの作り出した魔力の流れに乗って、煌めきながら、それでいて決して光の玉からはみ出ることなく規則正しく動いている。
(なるほど、遠心力か。)
遠心力を起こして光の粒子をまとめあげ、さらに粒子がばらばらに弾け飛ばないように、光の玉の表面を魔力でコーティングしている。
そのため、光の粒子はぐるぐると回りながら、外には出ない。
遠心力のおかげで光の粒子の好き勝手な動きは封じられ、その為、コーティングの魔力は少なくて済む。
(確かにヒネリの効いた頭のいいやり方だよ。しかし、これはあくまでも光の粒子を『流れ』に乗せることができれば、の話だ。)
光の粒子は魔力を帯びた粒子の中でも、一番気難しい。
「流れ」に乗せることなど、ほぼ不可能だ。
マリラは光の玉から目を離し、アデルを見つめる。
「アデル、光の粒子を流れに乗せることは、簡単にできたのかい?」
「え?それは子供の頃からできたけど?」
このセリフを聞いて、マリラは驚愕のあまり目を丸くした。
「・・・?よく暗闇で探し物するとき、光の粒子を集めて灯りにしてたわ。
でも、光の粒子って人の気配があるとほとんど出てこないから、私1人の時しかできなかったけど。」
「人の気配があると?」
「うん。私が1人だと光の粒子ってよくでるのよ。私が光魔法少し使えるから出るのかな?よくわからないけど、そういうものなのかしら?」
マリラはそこまで聞くと、急に上を向いて、大きな口を開けて笑い出した。
アデルはそんなマリラをぽかんと見つめる。
「あははははっ!はぁ、なんと面白い!実に興味深い!暗闇の探し物に光の粒子を使うとは!なんと大胆な!」
涙を滲ませてマリラは笑っている。
(マリラったら、いきなり笑いだして、なんなのよ、もう!)
アデルは不満顔だ。
「・・・・、さてと、アデルよ。」
何かを話し始めたマリラは何かの気配を感じ取ったのか、ピクリと眉尻を上げる。
「やれやれ、忙しいことだよ。アデルよ、『お迎え』が来たようだ。」
急に光の粒子がわんさか出てきて、アデルを包み込む。
「なっ!何これ!」
「女神の祝福あらんことを!アデルよ!常に女神の祝福があなたと共にあるでしょう!暗闇にあっても心に光を!」
「待って!マリラ!私・・・!」
「私のバカ弟子によろしく伝えておくれ。」
マリラはニコリと微笑む。
「マリラ!ありがとう!また会え・・・。」
アデルは言葉の途中で消えた。
マリラはアデルの消えたあとに煌めく光の粒子を見つめる。
それを見つめるマリラの枯れた頬には一筋の涙がつたっていた。
「歳をとると涙もろくなっていけないねぇ。」
しかしその口元には笑みが浮かんでいた。




