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次の日、アデルは気分爽快に目を覚ました。


老婆は念入りにアデルの魔力を調べ、彼女の魔力も体調も全てがすっかり治っていることを確認すると、

香り高い茶を入れ、アデルと一緒にテーブルについて語り出した。


「昨夜の夕方のことだよ。ベーチェットが騒ぐものだから見に行ったら、お嬢さん、あなたが草むらで倒れていたんだよ。」

ベーチェット、という名の大型犬は行儀良く老婆の足元で丸まって休んでいる。


おそらく、アデルは黒鬼からの攻撃で吹っ飛ばされて、草むらに倒れていたらしい。

全く記憶がないが、きっとそれなりに重症であったのだろう。


老婆はマリラといった。

そして驚くことに、アデルがいるのはアリシア王国ではなかった。


「女神の森・・・?」


老婆が言うには、ここはどの王国の所属にも属さない、「女神の森」だと言うのだ。


「そんな・・私はアリシア王国で見習い魔導士をしているんです。それがどうして女神の森になんか・・・。

つい昨日まで同期と一緒に『鬼ごっこ』をしていて・・『黒鬼』の攻撃を受けて吹っ飛ばされたんです。」


アデルは混乱してしまい、うまく説明できない。


しかし、マリラはそんな支離滅裂なアデルの説明にも動じた様子はない。


「お嬢さん、その『黒鬼』とやらについて聞かせてくれるかい。」


アデルは落ち着き払ったマリラの姿にいくらか冷静さを取り戻し、ゆっくりと最初から説明し始めた。


マリラは何かを思案するような表情を浮かべながら、じっとアデルの話に耳を傾ける。

アデルは自分の話があまりに突飛なので、どうせ信じてもらえないだろうと思っていたが、

マリラは一言もアデルを疑うような言葉を発しなかった。


アデルが最後まで話し終えると、マリラはゆっくりと頷いた。


「なるほど・・・。」


アデルはじっとマリラを見つめる。


マリラはゆっくりとティーカップのお茶を飲み干す。

そのとても優雅な姿に、アデルは見入ってしまった。


「お嬢さん、あなたは無意識に転移魔法を発動してしまったんだね。」


「へ・・・?転移魔法???」


転移魔法なんぞ、見習い魔導士のアデルには使えるはずがない。

物や人を移動させる転移魔法は高度な魔法で、そう簡単に使えるモノではないのだ。


「そうとしか考えられないね。しかも、お嬢さん、まだあなたは『見えていない』んだね。」


マリラは真っ直ぐにアデルを見つめた。


「何のことでしょう・・?仰っている意味が・・・。」


アデルもマリラを見つめる。


そんな二人の足元で、ベーチェットが大きく欠伸をした。

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