表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
34/61

34

リューは何かが這うような、不気味な音に全神経を集中していた。


その音の主は、明らかに何かを探しているようだった。

最初は這う音だけだったが、シューシューという音も聞こえ出した。


リューは湧き上がる恐怖に打ち震えていた。

それは草食獣が肉食獣に抱くような、絶対的な恐怖だった。


バクバクとした心臓の音がうるさい。


恐怖の中で、リューは、「何か」近づいていること、

そして、その「何か」は、明らかに「自分」を探していることを、本能的に感じ取っていた。


(どうする?どうする?逃げるか?いや、でも逃げられる保証はどこにもない。


でもこのまま、ここにいても、きっと見つかるかもしれねぇ。


何だってこんなことになったんだ!)


リューはあのルカ先生のにやけた顔が浮かび、一瞬、怒りのあまり、恐怖を忘れた。


(あのバカ教師!なんだよ!こんなのありかよ!)


リューは頭を抱えた。


その刹那、鞭がしなるような音が聞こえたかと思うと、

リューが隠れていた岩と木がものすごい音を出して砕け散った。


リューはいきなり開けた空間に座り込み、呆然としていた。


満月が照らす、昼のように明るい空間に「ソレ」はいた。


赤い目が爛々と輝き、リューの姿を見つけると嬉しそうに、目を三日月型にして、ニヤァと笑った。


リューは恐怖のため、思わず失禁していた。


(コレは何だ・・・?)


リューの目の前には巨大な蛇のような生き物がいた。


不気味な茶褐色のマダラ模様のある蛇で、

鶏のように、赤いゴツゴツしたトサカが頭についている。

そして、大きな口から出てきた長い舌が、獲物を見つけて舌なめずりするように、

何度も口の周りを往復している。


蛇は大きな口を開けて、リューに襲いかかった。


リューは瞬間的に魔力を込めて叫んだ。


『止まれ!』


リューの魔力を込めた言葉を聞いて、

一瞬、蛇は動きを止めた。その隙にリューは全ての力を総動員して逃げた。


走って、走って、知っている限りの魔法で、できるだけスピードをあげて逃げる。


しかし、蛇のスピードはそれ以上に早かった。


そもそもリューの魔力が完全に回復していないこともあり、あっという間に追いつかれる。


再び大きな口を開けて、蛇はリューを丸呑みせんとばかりに襲いまくる。

リューは本能的な感覚を頼りに、傷だらけになりながら、その攻撃を交わす。


しかし、木の根に足が引っかかり、リューはその場で転んでしまった。

蛇はその好機を逃がさんたばかりに襲いかかる。


「その目、つぶれろ!」


リューは魔力を込めて叫ぶ。


蛇は急に走った鋭い痛みに、悲鳴をあげて目を閉じると、その場で、のたうち回る。


リューはその間に、何とか茂みに逃げ込んだ。


しかし、先ほど同様、見つかるのは時間の問題だろう。

蛇は目の痛みがおさまると、再びリューを見つけるべく、手当たり次第、木や岩を破壊している。


やはりリューの魔力が足りないためか、蛇はさほどダメージを受けているように見えない。

先程の攻撃は、一瞬の目眩しにしかなっていないのであろう。


気が狂いそうな恐怖の中で、リューははっきりと「死」を感じた。

「死神」はもう鼻先まで迫り、あと少しでリューをあの世に連れ去ろうとしている。


必死になって生き延びる術を考えているが、どうやっても生き延びる道がなかった。

魔力はほとんどなくなっており、あの蛇のスピードと威力を考えると、完全に手詰まりだ。

死に王手がかかっている状況である。


(こんなところで俺は死ぬのか・・・)


リューは地面を見つめながら、唇を噛んだ。

「白き翼」となり、浮かれていた、ほんの数週間前の自分が嘘のように思える。


(父さん、母さん、リーシャ・・・)


「死神」が大きな鎌を持って、迫ってきている極限の中で、リューは早逝した小さな妹を思った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ