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「戦って殺すか、逃げるか・・・みんなどうする?」
ロランが尋ねる。
「もちろん戦うわ!」
「俺も!」
アデルとリューが答える。
「ふふっ!僕もそう思ってたよ。」
血気盛んな同期2人の回答にロランは微笑む。
「とりあえず、ある程度この黒鬼を始末しないと。流石に数が多すぎるからね。」
そう言うと、ロランは人差し指と中指を立てると口の前に持ってくる。
「風牙の五 乱切刃風」
途端に凄まじい勢いで刃のような風が生じると、ありとあらゆる方向に鋭い勢いで飛んでいく。
たくさんの黒鬼があっという間に両断され、消えていった。
(忘れてたけど、ロランは王国三大貴族の一つ、バルモア家の人なのよね。
バルモア家といえば、魔法史に名を残す偉大な魔道士を輩出した名門家系!すごい!まだ見習いなのに、属性魔法を使いこなせるなんて!)
アデルはロランの見事な魔法を息を飲んで見つめる。
「ロラン!やるじゃーん!」
リューも口笛を吹きながら、ロランを讃える。
「んじゃ、俺もいっちょやるかな!」
リューはそう言うと大きく息を吸い込んだ。
「あ、2人とも耳塞いで。」
「??耳?」
「そ!俺の声が聞こえないように、耳塞いで。」
2人とも訳が分からず、とりあえず言われた通りに耳を塞ぐ。
「さてと、流石にこんなに鬼が多いと大変だよな。
少し眠ってもらうよ、3日くらい。
じゃあ・・・・『みんなおやすみ』」
リューは最後のセリフに魔力を込めて話した。
リューが話し終えた途端に、宙にふわふわと浮いていた200〜300ほどの黒鬼たちがポトリと落ちて動かなくなった。
「これは一体・・・?」
「消えていないってことは、攻撃魔法ではないですね。」
「そ!ちょっと寝てもらったのさ。3日間くらいね。」
「寝てもらう?」
「俺はね、生まれつき声を使った魔術ができるんだよ。」
「!!つまり、特殊能力ですね!」
「そーそー!」
ニカッと得意げにリューが笑う。
名門貴族ゆえのの高い攻撃力を持つロラン、そして特殊能力を持つリュー、2人の魔法を目の当たりにしてアデルは驚きを隠せない。
アデルといえばそんなすごい2人と比べて、本当に大したことはできない。
確かに赤き龍に入りたくて、必死に練習したおかげで、いくつかの呪文や魔法は使えるが、自然系の攻撃・防御魔法は何一つ使えない。もちろん特殊能力もない。
珍しいとされる光魔法は使えるが、これも探索や周囲をちょっと明るくする程度のへっぽこ魔法である。
ぼんやり同期の姿を見ていたら、完全に油断したらしい。
「アデル!」
黒鬼の一つがアデルに体当たりを繰り出そうと飛んできたが、ロランの鋭い声が飛んできたときには、もう間に合わなかった。
「止まれ!」
リューが魔力を込めて叫ぶ。
間一髪、アデルの目の前で黒鬼は止まって、ポトリと地面に落ちた。
「あっぶねーな!アデル!ぼーっとすんなよ!」
リューが大きく目を開けて叫ぶ。
「ご、ごめん!」
「さてと、だいぶやっつけたつもりですけど、まだまだ黒鬼はいますね」とロラン
「3万だっけ?ルカ先生が作ったのは。」とリュー。
(この黒鬼たち。なんだろうこの違和感。)
アデルはなんとも言えない不自然さをこの黒鬼に感じていた。
「とりあえずこんだけ多いなら、個人行動は厳禁!
ひたすらみんなでこいつら潰しまくるしかないなー。」
(ただ、これほど多いとは。いくら黒鬼が雑魚だとしても、初歩魔法では消えない魔力がある。
おそらく、全て潰すには3人の魔力で足りない。
潰せるだけ潰して、あとは逃げることに集中するか・・・。)
ロランは状況をみて、冷静に考える。
(ただ、ルカ先生の言葉が引っかかる)
『この鬼はね、ちゃんと退治しないと強くなるから気をつけてね♪
鬼が退治できない中途半端な魔力で攻撃すると、その分、君たちが鬼に当てた攻撃魔法の魔力を吸収して、かえって鬼が強くなるからね!』
『そして、この鬼はね、君たちの魔力を吸い出すこともできるんだよ。』
(これじゃ、まるで吸血鬼だ。
攻撃するにしても、この鬼の数では考えて魔力使わないと魔力切れをおこしかねない。
僕が大技をだして、ある程度潰すことはできるだろうが、しかし、それで終わりになるだろうか?
あのルカ・ディラ・ストランゼがこんな単純明快な『宿題』を出すだろうか。
大陸にその名を轟す名門ストランゼ家の当主にして、希代の最強魔道士の彼が。)
貴族階級に属するロランは、人々が口にするルカの能力をよく聞いていた。
どの貴族もルカの魔道士としての能力は当代無双、万邦無比であり、この大陸に名を馳せ、後世に語り継がれる天才魔道士ということで意見は一致していた。
------そう、自分の「兄」と同じように。




