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ルカによって龍の滝壺に放り込まれてから、ぴったり10日後、アデル、リュー、ロランの3人はルカに呼ばれて白亜の離宮の中庭にいた。


アデルは「初歩カリキュラム」の後、たっぷりと眠ったおかげですっかり回復していた。

他の2人もそれは同じで、初歩カリキュラムが終わった後、3人全員が意識を失ったままこんこんと眠り続けた。


ただし、不思議なことにアデルだけ滝壺に落ちてからの出来事をすっかり忘れてしまっていた。

リューとロランは滝壺に放り込まれてから見た幻術をしっかり覚えているらしい。

だが、2人とも自分が体験した内容についてはほとんど語らなかった。

普段から明るくてお調子者のリューですら、言葉少なだった。


アデルは自分が何にも覚えていないので、滝壺に放り込まれた後にどんな体験をしたかを2人に質問したが、2人とも言葉を濁して、居心地悪そうにするので、話題をふるのをやめてしまった。


どこかよそよそしい空気が3人を覆っていた。


「やっほー!みんな揃ったみたいだね!」


もはや流石というべきか、そういった空気をガン無視する呑気な声が聞こえると、3人の目の前にルカが現れた。


「いやー!まずは『初歩カリキュラム』終了おめでとう!めでたい!めでたい!あはははっ!」


このルカという人間には空気を読むという能力が欠如というより、マイナスらしい。

3人の微妙な空気をものともせず、ケラケラと笑っている。

そんないつも通りのルカを3人ともゲンナリとした顔で見つめる。


「さぁ〜てと!これから授業だよーん。」


3人とも顔を引き攣らせた。

大体、ルカが「授業」と言って、本当に「授業」が行われたことは今まで一度もないではないか。


「先生!」


ロランが突然手を挙げた。


「ん?どした?」


「授業の前に、まずは初歩カリキュラムついて説明をお願いします。」


(よく言った!ロラン!ナイス!)

アデルとリューはロランを胸の内でロランを讃える。


「初歩カリキュラム?あれ?僕、説明してなかったっけ?」


ルカはキョトンとした顔をする。

「してません!」3人は声を揃えて抗議する。


「わはは!ごめん!ごめん!

えーっとね、初歩カリキュラムは白き翼が癒しの力を覚醒させるために必要なものだよん。」


「癒しの力?覚醒?」

リューが不思議そうに首を傾げる。


「癒しの力はね、攻撃や防御、そして特殊能力と違って、覚醒しなければ使えないんだよ。

どんなに能力があっても、それを出力するための回路がないと、癒しの魔法は使えないんだよね!」


「その癒しの力を発動するための回路を作ることが『初歩カリキュラム』なんですね。」


「そ!察しがいいね、ロラン。」

ルカがにっこりと微笑む。


「その回路はどうやったらできるんですか?僕には回路ができた実感もないですし、癒しの力もよくわからないです。」


「誰かを助けたいと強く、強く『思う』ことだよ。」


急にルカが真剣な表情になる。


「君たちは覚醒の扉がみせた幻術の中で、誰かを助けたい、と強く思わなかった?」


アデル以外の2人がハッとした表情になった。


「いいかい?癒しの力は僕たちの奥深くにあって、並大抵のことでは目覚めないんだ。

そもそも癒しの力を持った人間もごく限られているし、その覚醒もかなり大変だったろう?

それくらい癒しの力というのは隠されている能力なんだよ。

それを引きずり出すのは、癒し手の強い『意思』、つまりとてつもなく強い『思い』が必要なんだよ。」


「どうしてーーー。」


アデルは無意識に言葉を発していた。


「どうしてそんなに癒しの力の持ち主は少なくて、そして、その力の覚醒も大変なの?」


3人とも真剣な顔でルカを見つめる。


「創世記によると癒しの力は『創世の女神』の力だったらしい。しかし、その女神の美しさに魅了された破壊神により、女神は封印され、この世から癒しの力も失われた。

だが、女神は封印される直前に、癒しの力を破壊神に悟られないほど細かく分散し、万物に宿らせた。

その封印により破壊神も滅び、そして女神と一緒に輪廻転生の業に繰り込まれた。

やがて万物に宿った癒しの力は気が遠くなるほどの時の中でゆっくりと凝縮され、人に宿るようになった。そして再び癒しの力がこの世にもたらされた。

それが、僕たち『癒し手』と言われているよ。女神の恩寵だとね。

まぁ、神話の世界だね。」


「創世の女神・・・破壊神・・・。」


アデルはぼんやりと言葉を繰り返した。


「さて、おとぎ話はこのくらいにしてーーー。」


ルカはいつになく真剣な眼差しで3人を見つめる。


「授業を開始するよ。目覚めたばかりの君たち癒しの力が羽ばたけるように。」

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