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アデルは光魔法が示す方向へ進むが、行けども行けども、全く希望は見えない。

森は相変わらず深く、人の気配を感じさせるものは一切なく、さらに日は暮れ、辺りは闇に覆われている。

アデルの指先の光と、そこから出る光の糸以外、光はない。


アデルは不安と恐怖に押しつぶされそうだった。


ルカ先生はこの「授業」が終われば、治癒魔法の基礎ができる、と言っていたが、何のことなのかさっぱりわからない。


何かの間違いで、私だけこんなところに飛ばされて、今頃大騒ぎになって、アカデミーの捜索隊が出ているんじゃないか、

滝壺の転移魔法が何かしらの理由で、自分だけバグを起こしてしまったのではないか。


アデルは悶々としながら、足をすすめていた。

このまま自分はどうなってしまうんだろう。

見習い魔道士で大した魔法も使えず、水も食料もない。

この場所の土地勘もなく、このまま森をさまよい、魔力切れを起こして死んでしまうのであろうか。


アデルは膨れ上がる恐怖から目を逸らすことがそろそろ限界であった。考えるまい、としても全く希望が見えない森の中では、どうしても恐怖や不安が増幅してしまう。


「私なんかがアカデミーに入ったのは間違いだったの?」


(ああ!もう!あの方に言われて、「私なんか」と言う言葉は使わない、と誓いを立てたのに。)


アデルは膨れ上がる恐怖を押さえつけるために、「あの方」を思い出した。冴え渡るグリーンの瞳、そして柔和な笑顔に、芸術的とさえ思えた見事な攻撃魔法。アデルが魔道士を志すきっかけとなった素晴らしい魔道士を。


ふと、人の声が聞こえた気がしてアデルは立ち止まった。


もう一度耳を澄ます。


「・・・・気のせい?」


微かであるが、しかし確かに獣の声ではない、人の声が頭上から聞こえる気がする。

しかし、微かすぎて全く聞き取れない。


「あと少しよ。人に会えばきっと助かるわ。」


アデルの胸に希望が湧いてきた。疲れた足に鞭を打って出来る限り速く歩をすすめる。


やがて、光の糸はアデルを切り立った崖の下へと導く。


「ここ?行き止まりじゃないの。」


アデルは狐につままれたような顔をして、岩の壁を押す。当然だが、ただの岩の壁なので、全く反応はない。


上を見るが、崖の先は闇に覆われて見えない。


「どういうこと?」


再び光魔法の呪文を唱えるが光の糸はこの場所を示したまま、微動だにしない。

何度繰り返しても同じである。


ついに私の魔法も意味不明になってしまった。

今までこの探索の光魔法が間違えたことはないのに。

アデルの瞳には涙が浮かんできた。

(私、このままどうなっちゃうの?元の世界に帰ることなく、ここでのたれ死んじゃうの?)


岩の壁に向かって号泣しそうになったアデルに、再び声が聞こえてきた。

さっきより、はっきりと、そしてそれがアデルにはわからない外国の言葉であるようだった。


「○*+#%○:!!!」


複数の声が切り立った崖の上から聞こえる。

何を言っているかわからないが、何かを怒鳴りつけているかのような激しい声音である。


そして次の瞬間、崖の上で激しい炎が上がった。その激しさは崖の下にいるアデルにも認識できた。

これは相当な火力の魔法で、直撃すればひとたまりもないだろう。

アデルは直感的に、どうやら崖の上にいる人々が全く友好的でない人々であることを理解した。

おそらく言葉も通じないだろう。

「よそ者」のアデルは「彼ら」の攻撃対象になるはずだ。


急いで逃げなければ。


アデルは慌ててその場を離れ、森に身を隠そうとした。


しかし、アデルは、どうしてかわからないが身動きすることなく、頭上を見つめていた。


アデルの瞳には、何かが落ちてくるのが見えた。

それがなんなのか最初はわからなかったが、アデルは本能的にそれを「受け止めなければならない」と感じていた。


そう、私が受け止めなければならない。


咄嗟に両手を広げ、慌てて呪文を唱えると風魔法を起こして、その落ちてくる「何か」を受け止める。


舞い上がる風のせいで森の木々はざわめき、アデルの周りで光の粒子は煌めいた。


アデルは不思議な感覚をおぼえた。

光の探索魔法で、光の粒子が煌めくのは「出口」が見つかったときである。


一体何が落ちてきているの?


アデルは頭上から落ちてくるものを見つめた。

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