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アデルは同期の2人とともに滝壺へ、声にならない絶叫をあげて、真っ逆さまに落ちていった。
とたんに猛烈な激流が襲いかかり、アデルは息も出来ず、体の自由を奪われてそのまま・・・
「・・・・ここどこ?」
滝壺に落ちたはずなのにアデルは深い森にいた。
まるで夢を見ているかのような景色に、しばし呆然とした。
「滝壺におちたのよね?私・・・あっ!ロランとリューは?」
周囲を見渡すが、誰もいない。
鬱蒼とした森は周囲360度ぐるりと取り囲み、全く人のための道どころか、獣道すらない。
夕暮れ時なのか、オレンジ色の光が斜めに森に差し込んでいる。
アデルは途方に暮れた。
おそらく極めて高度な転移魔法であると思うが、ここがどこで、さらに一体なぜ滝壺からこんなところに飛ばされているのかわからない。
もしかすると、ここは魔獣がうじゃうじゃいる森なのかもしれない。
さらに今、夕暮れ時だとしたらこれから夜になる。
アデルは昨日見たアンギャナスを思い出して身震いした。
あんな魔獣と遭遇したら、まだ見習い魔道士のアデルはひとたまりもない。
とにかくここから脱出しなければ、そう思うが、周囲に道はない。
「我が行き手を照らせ、光よ」
アデルは指先に光を灯した。
「出口を教えて。」
そう言うと、アデルの指先に灯った光は、森のある方向に向かって、真っ直ぐな線を描く。
アデルは光魔法が得意だった。
もちろん初歩的なものしか知らないし、出来ないけれど。
光魔法は闇魔法と同様に、最難関の魔法で、かなり個人差が大きい。
他の魔法が努力と研鑽によりある程度できるのに比べて、その二つの魔法は、いくら努力しても出来ない人はできないが、一方で大した努力なくできる人はできる。
アデルは後者だった。
「素晴らしい。そなたには光魔法の資質があるのぉ!」
褒めてくれた地元の魔法学校の優しいおばあちゃん先生を思い出した。
(よくもまぁ、こんな時にこんなことを思いだすなんて、呑気な私)
アデルは自嘲した。
そして、光の糸が導く方向へ足をすすめた。




