背の高い春を追いかけた
はらりはらりと舞う花は白
何て言ったっけ、あの白い花
高い木に咲く、春の花
中学の入学式、俺の隣はデカイ女
俺よりタッパあるのが、ちょっと気に入らなかったけど
けど
彼女
背筋を伸ばし、唇をキュッと結んで
その姿がなんか気高くて
そうそう、木蓮
その花に似てると、俺は思った
はらりはらりと舞う花は紫
部活はバスケって決めてた
アイツも女バス。練習は同じ場所
遅くまでアイツが自主練するから
俺も遅くまで付き合った
一緒にドリブル
一緒にシュート
いつまでも
いつまでも
夕暮れ時を走った
中学最後の試合の前に
アイツは前十字を切った
大丈夫大丈夫って言ってたけど
じっと松葉杖、抱えてたね
はらりはらりと涙一粒
卒業式は青い空
白い木蓮が咲き始める
アイツに言った
「好きだ」
最後だし
高校別だし
アイツは俺の頭をポンポンたたく
「伸びたよね
でも、もうちょっとかな」
なんだよ、それ
はらりはらりと舞う花びら
白い花の内側は紅色
あれから何度も春を迎え
ようやく俺は君の背を越えた
「なんでアタシなの? もっとカワイイ子、ほかにいるでしょ」
君は左手の指輪を、光にかざしながら言う
桜ほど騒がれることなく
チューリップほど派手な可愛さはなくても
「俺は木蓮が好きなんだ」
「何、それ」
はらりはらりと舞う花びら
今日はシャワーのように、色とりどりの花が降る
手をつないで俺たちは歩く
来年も
再来年も
ずっとずっと
ずっと……
香月よう子様、黒森 冬炎様、素晴らしい企画、ありがとうございました!!