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第6話 魔剣と耕し

 ミア、マリシャとともに、ひとまず集落へ戻った。

 戻ってすぐ、他の獣人たちがミアの元に駆け寄り集まって来た。


 獣人のほとんどは狼族で、猫族はミアだけみたいだ。

 ミアの元に集まったお目当ては、


「ミア! 今日の収穫、何だ何だ?」

「今回は木の実だけにゃ」

「それだけかー? それだけなのかー……」 


 もしやいつもミアが食料を探しに行く役割なんだろうか。

 

「もしかしてミアは」

「はい。集落のリーダーです! ここでは猫族とか狼族だとか関係ないんですよー」 


 他の狼たちの強さが分からないけど、ミアとマリシャに特別な力があるってことで従ってるのかも。

 

「なんてこったー……これじゃー足りないぞー」

「ううぅ、力が出ねぇよぉぉ」


 大量の木の実だけしか手にして来なかった姿を見て、男たちはがっくりとうなだれている。

 彼らの多くはやせ細っていて、狼族としての迫力はあまり感じられない。


 この様子を見る限りだと、今まではそこそこ食べる物を見つけて来たってことか。

 確かにいくら大量でも木の実だけだとお腹も空くよなぁ。


「ええと、いつもはもっと見つけてたのかな?」

「そうなんです。あの場所に流れ着いていたのを見繕って持って来てたんです」

「今回は違うモノを見つけてしまったからしょうがないにゃ」

「森の方に食べる物は無いの?」

「もちろんあるにゃ。だけど少ないにゃ」


 集落のすぐ目の前には、それほど深く無さそうな森が広がっている。

 ――といっても、獣人たちの腹を満たすほどの植物は生息してない感じだ。

 

 セヴィラント島は周囲を海に囲まれていて、これといった資源らしきものが見当たらない。

 獣人たちのほとんどがマリシャと同じ狼族ということを考えれば、魚だけでは物足りない気がする。


 加えて、集落の土は荒れ放題。作物を育てるといったことは多分知らないはず。


「……そっか。俺が何とか出来ればいいんだけど、ごめんね」


 鎧も無くぼろ布をまとった商人もどきの俺じゃ、どうしようもないよな。

 それでも可能性があるとすれば、やはり地下の洞窟探索になりそう。


「ロシャルさまはちっとも悪くありません! 大丈夫です。またあそこへ探しに行けば、きっといいものが見つかると思うんです。また一緒に行ってください!」

「もちろんだよ」

「そ、それでは、わたしは先に休みます! また一緒に、きっとですよ!」

 

 そう言うと、マリシャだけ小屋の中に入って行ってしまった。

 辺りを見回すとすっかり暗くなっていて、外に出ていた狼たちの姿もまばらになっている。


 それにしてもセヴィラント島はどういう島なんだろうか。


 砂浜の底に洞窟があったのも変だし、木の実の出現も謎で鉱石も何に使うのかも不明。

 こればかりは時間をかけて確かめるしかないか。


「ロシャルロシャル! テールが話したいみたいにゃ! 話をしてにゃ~」

「ミア? うん、いいよ。俺でよければ」


 暗く、しかも明かりも無い集落ということもあって、声をかけられなければ誰が近付いて来たのかさえ分からなかった。しかしミアの呼ぶ声と一緒に、屈強そうな狼の男の姿が目の前にあった。

 

 やせ細っても無いし男たちのリーダーっぽいな。

 

「ロシャル。あんた、人間だったんだな」

「魔族じゃなくてがっかりしたかな?」

「いいや、人間でもいい。いっつも襲って来る奴らだって人間だ。でもあんたは違う人間に違いない! マリシャがあんなに懐いてるの初めてだ! だからきっと違う」

「マリシャの兄のテールにゃ! テールの面倒も見てやって欲しいにゃ~」


 ミア以外はほとんどが狼族。マリシャの家族がいてもおかしくはないか。

 

「面倒を見るのはいいけど、具体的には何をすればいいのかな?」

「あんた、土は耕せるか? 人間なら出来るだろ?」


 人間だからって決めつけられても困るけど。


「出来ないことも無いけど、何故?」

「見ての通りだが、島の大地は荒れ放題でどうにもならない。だがもしかしたらって思った。それがあんたとその魔剣だ!」


 辺りが暗い中、テールは両腕を広げて現状を嘆いている。


「暗くて見えないにゃ」

「夜だからだろ! そうじゃなくて……」

「……分かるよ。テールの言ってる意味はね。でも俺は騎士であって、作物を生み出すような力は無いよ。クワで土を耕すくらいは出来ると思うけど……」

「魔剣を持つ騎士は魔力が強いんだろ? だったら、魔力を使って土を耕してくれよ!」

 

 俺の魔剣を見てとんでもないことを言って来たな。

 もしかして、集落には土を掘り起こしたり耕すような道具が無いのか。


「ここの土はとっても固いにゃ。ミアも爪で試したけど深く掘ることが出来なかったにゃ」

「ミアはもう試したんだね?」

「そうにゃ~。ミアだけじゃなくて他のみんなも爪でやってみたにゃ~」

「オレは他のみんなより力が強い。でもこのザマさ!」


 そう言ってテールは自分の爪を見せて来た。


「――腫れてて痛そうだね……」


 人間の手より頑丈そうなのに何度も試したのか腫れあがってる。


「この島は周りが海で土の部分が少ない。向こうに見える小さな森は土があるが、オレたちが立ってる場所は木が育たない。岩が砕けて砂よりも細かい粒になって、粘土に近いものになったんじゃねえかな?」


 粘土質の地面となると育てられる作物は限られるし、経験も無しに作るのは厳しそうな気が。

 だからといって魔剣でどうにかなるわけ無いだろうけど。


「お願いにゃ~。ロシャルなら出来そうな気がするにゃ……」

「……うーん。試してみるのも手だけど、だいぶ暗くなったし明日にしようか」

「やったにゃ~!」

「本当だな? あんたやっぱりいい人間だな!」


 魔剣で地面を掘ったり耕したり……劇的に変わるか分からないけどやってみるしか無いか。

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