第15話 ソーファム大陸の洞窟
手下の男を念の為蜘蛛の糸を絡ませた状態にしておき、とりあえず解放。後はこの男たちがどういう態度を見せるのかを見極めなければ。
何より、ミアをいつまでも隠していられない。
「ボ、ボスゥゥ! こいつぁ、やべぇです」
「ふん、てめえが油断しすぎなのが悪ぃんだ。おめえらも油断すんじゃねえぞ! とりあえず今は武器をしまっとけ!」
「へ、へいっ」
ボスと呼ばれているこの男だけは、かろうじて賢さを持ってる感じだろうか。
「……それで、お前たちは何者なんだ?」
索敵持ちがいる時点で適当な賊とも思えないけど……。
「何も知らねえようだから親切に教えてやる。俺たちはな、沈んだ大陸が本当なのかどうかを確かめる為にお国から依頼されて来た、正しき探検隊ってわけだ! 名前くらい知っているだろう? ソーファム大陸をよ……」
「ソーファム大陸?」
セヴィラント島の砂底にあった洞窟に過ぎなかったのに、まさか別の大陸と繋がっていた?
「何も知らねえのか? お前と俺らがいるこの洞窟はな、沈んだとされる大陸に繋がってるってわけだ! お前がどっから入り込んだかは知らねえが、目的が同じなら、どうだ? 黒月のローグに加わらねえか?」
もしかして、沈んだ大陸呼ばわりされているのがセヴィラント島なのか。
探しに洞窟に来たってことは、要塞化を急がないとどんどん人が送り込まれてしまいかねない。そうだとしたらミアはもちろん、集落の狼たちが大変な目に遭ってしまう。
しかしゴーレムの要塞化は始まったばかり。俺の意思で成長が進むでも無いし、どうすればいいのか。
国からの依頼で来ている連中なら大して強くも無いはず。そうだとしても、この先に進ませるわけにはいかないよな。
沈んだ大陸として調査が始まっているなら、なおさら俺が何とかしないと。
「断る!」
「ほぅ……? 一応理由を聞いてやる。何故だ?」
「あんたたちが盗賊じゃないことは理解した。だが、この洞窟は俺が守っている洞窟でね。あんたらの仲間に加わるのは無理ってわけだ」
この先に島があることや、狼たちの集落があることも知られるわけにはいかない。
「……なるほど。それはつまり、そこに隠していたネコ族を守るためってか?」
「――!」
見つかってしまったのか。
「離してにゃー!! ロシャル、助けてにゃー!」
ミアが身動き出来ないように、手下の一人が首根っこを掴んでいる。小さい体のネコ族とはいえこの扱いを許すわけには……。
「ほぅ、ロシャルという名か。ロシャルとやら……俺らは別に危害を加えるつもりなんてねえぜ? だがよぉ、ネコ族がいたってことは、この先に獣人が暮らす村があるってことなんじゃねえのか?」
「えぇ? そうなんすか?」
「ってことは、この男は何か知ってるってことなんすかね」
ボスの男だけはさすがに頭が切れるな。
「この先に村なんか存在しない。いい加減その子を解放しろ! さもないと……」
魔剣を置いて来たといっても、こいつら程度を追い返すくらいは余裕で出来る。棒はもう使えないけど、軽く魔法を当てれば逃げて行くはず。
「……おぉっと、何か繰り出そうとしてるな? 言っておくが、俺らは調査に来ただけだぜ? 無抵抗な人間相手にやるつもりなら、次はそのつもりで調査に来るけどいいのか?」
程度の低い取引のつもりか。
「その子を解放すれば何もしない」
「そう言うと思ってたぜ。おい、ネコを放してやれ!」
ボスの男がそう言うと、手下の男はミアを放した。
解放されたミアは俺のいるところを見つけ、四足歩行で俺の胸に飛び込んで来た。
「にぁぁぁ! ロシャルありがとにゃー!」
「どこも痛くはないかい?」
「大丈夫にゃ」
「良かった。とりあえずミアは、俺から離れないでね」
「絶対離れないにゃ!」
ミアを解放してくれたのはいいとして、
「それで……あんたらはどうするつもりがあるんだ?」
ミアに危害を加えなかったのはいいとしても、このまま大人しく引き下がるようには見えない。どこかの国の依頼で来たということは、今は良くても次が問題になる。
「この場は引き下がる。だが、次はそうはいかねぇ。お前が只モンじゃねえってことも知ったし、ネコ族もいたわけだからな」
「……何が言いたいんだ?」
「もしかすっと、俺らの案内で国の精鋭が来るかもしれねえから、せいぜい備えておいた方がいいんじゃねえか?」
洞窟の存在と未開の大陸の場所が知られた……か。