第13話 進化の洞窟
砂底の洞窟に下りてすぐのことになる。
木の実があった場所に近づくと、
「木の実が見当たらないにゃ……」
そこには以前には無かった太い木の根が見えているだけで、木の実どころか鉱石も見当たらない。というより、洞窟の内部が変わってしまったような印象を受ける。
しかも行き止まりにはなっていなく、奥の方から風が来ているような気が。
「薄暗いけど奥の方に続いてるみたいだから、一緒に進もうか」
「奥に木の実があるにゃ?」
「それはちょっと分からないけど、新たな発見があるかもしれないよ」
風が来ているということはどこかに繋がっているか、もしかしたらどこかの外に出られるかもしれない。それが新大陸だとすれば、いずれ何者かが侵入して来る可能性も……。
未然に防ぐ為にも、どこまで通じているか確かめた方が良さそう。
「何か出てきたら戦うにゃー?」
「それは俺がやるよ。せっかくマリシャが木の棒を持たせてくれたからね! それともミアも戦いたい?」
「ミアの爪は役に立てるにゃ! ロシャルが取りこぼしたらやっつけてやるにゃー」
マリシャは攻撃系魔法を使えるけど性格が優しいから魔物相手でも厳しそうなのに対し、回復系ではあるけどミアは活発な性格でたくましい。
何かが出ても何とかなるかもしれないな。
それにしても、
「薄暗いのは変わらないけど、洞窟内部がこんなに変化するなんて……」
「さっきあった木の根は何だったのにゃ?」
「あれは……」
「クレゴが出る前にロシャルが出した大木じゃないのにゃ?」
ゴーレムにすっかり気を取られていたけど、そういえばクワ作りの為に大木を出したんだった。
まさかあれが洞窟の中にまで影響を及ぼした?
そうだとすれば、多少なりとも俺の魔力の影響が及んでしまったかもしれないな。
「うーん……ん? ミア、前方から何か聞こえない?」
「何にも聞こえないにゃ……耳鳴りがするだけにゃ」
薄暗い洞窟は最初のうちはごつごつとした岩がむき出しになっていて、いかにも洞窟といった感じだった。
ところが奥に進むにつれて、壁が頑丈そうな石造りに変わっていることに気付いた。所々に咄嗟に身を隠すのに丁度いい窪みも見えていて、明らかに人工の造りであることが窺い知れる。
洞窟自体が進化しているのではなく、どこかの地下と通じているとしたら警戒しなければいけない。
「にゃぁぁぁー!! クモの巣にゃー! 糸が引っついてくるにゃ」
「蜘蛛の巣? 新しく出来た洞窟のような感じなのに、年月が経っているのかな」
「ロシャル、取って取って欲しいにゃー!」
「ごめんごめん、すぐに取ってあげるよ」
蜘蛛の巣に引っかかったミアを助けつつ周りを見回すと、近くに蜘蛛の気配がある感じは無かった。それどころか未だに魔物すら見当たらない。
どこまで続いているのか分からないし、そろそろ戻るべきだろうか。そう思いながらミアの耳に絡まっていた蜘蛛の糸を取り除くと、ミアの耳が横に寝た状態でピンと張り始めた。
「ミア? どうかした?」
「何かがたくさん来るにゃ。音が一定にまとまっててバラバラじゃない感じがするにゃ」
かなり奥まで進んで来たが、まさか何かの集団が向かって来ているのか。
よりにもよってこんな狭い洞窟で鉢合わせるのは……。
「ミア! こっちへ!」
「にゃにゃ!? ロシャル、大胆にゃー」
「早く早く」
ミアの手を握っていったん来た道を戻ることに。人間の集団なのか魔物の集団なのかが分からない以上、ひとまず窪みに隠れてそれからどうするか決めよう。




