第33話 アンチ・ビースト その5
「【浮遊する岩】、【拒む力】!」
「【徹甲ホウセンカ】!」
「やぁッ!そらそらそらそらッ!!」
天羽の声と共に、再び飛んでくる溶岩の塊。
瑠莉奈は岩をビット兵装として自身の周囲に浮かべて、それを「拒む力」で吹き飛ばし、ベルは自然魔術によって生成されたであろう特殊なホウセンカの種子を散弾のように発射する。
それらは拡散弾のように溶岩を点で撃ち落とし、俺はそのポロポロと小さくなった溶岩のカスをビームソードで薙ぎ払った。
俺の「ビームソード」は一般的な「魂魄剣」よりも魔力の変換効率が良い。
少ない魔力で強力な魔力の刃を生成できる。
人には向き不向きがあるとは言うが、俺の場合はそれが極端なのかもしれない。
「アハハハハハハハ!ベルちゃんは相変わらずだけど、付き添いの二人もだいぶ腕が経つみたいだねぇ!片方は僕と同等の悪魔……もう片方はただの人間みたいだけど、相棒の加護かな?やけに反応速度が早いね。パワーもある。きっと相性がいいんだろうね」
「えへへへ……兄さんと私の相性は遺伝子レベルでバッチリですからねっ!」
「ああ!……そう、そう、だな!」
「あれれ?兄貴の方は歯切れ悪いけど大丈夫ゥ?」
「兄さん!?」
「噛んだだけだ!気にすんな!」
嘘をついた。
俺は瑠莉奈の悩みをベルの口から聞かされてから、「本物の瑠莉奈だろうと瑠莉奈のコピーだろうとあいつは俺の妹だ」などと口では言っておきながら、少々割り切れないところがあるのだ。
いや、少し語弊がある。
精神面だけであれば、確かに俺と瑠莉奈は間違いなく兄妹なのだ。
それは間違いない。
しかし、その関係が遺伝子レベルかというと、肉体が生前と同じものかどうか分からない……というか、多分違う都合上、どうにも引っかかる。
細かいことを気にし過ぎなのかも知れないが……瑠莉奈の実兄としてはデリケートな問題なのだ。
「良かった!さあ、反撃開始ですよ、兄さん!ベルちゃん!」
「瑠莉奈!岩を出してくれ!それに乗って突っ込む!」
「了解っ!」
瑠莉奈は杖を振るって大岩を宙に浮かべ、俺はその上に飛び乗ってビームソードを構えた。
さながら飛行機の上に乗って空中戦を行う地上戦用ロボットのようだ。
こんな事を言っている場合ではないとは思うが、中々にロマンを感じる。
「さあ、僕に近付けるかな!?はァァァ……」
「マズいよ兄さん!天羽が詠唱を始めた!」
「瑠莉奈!アイツの攻撃はジャンプとかステップとかで避ける!だから、俺の身体が宙に浮いた時、もう一回岩の上に着地できるように動かしてくれ!」
「避けるつもりなの!?あの溶岩の球を!?いくらなんでも無理じゃない……?」
「今はとにかく近付かないと、俺のビームソードは届かないから実質2対1だ!ビームキャノンは発射できる数に限界があるし、銃の扱いも当然慣れてないから多分下手だ!岩に乗りながら攻撃を避け続ければ、回避の時以外は常に近付き続けられるし、上手く前めに避けたらそれはそれでもっと距離を詰められる!」
「分かった!!気を付けてね、兄さん!」
「ハァッ!混沌魔術……【燃える混沌】!」
天羽は何かドロドロとしたものを生成し、それを燃やして溶岩のように飛ばしてくる。
大聖堂の端から端まではそこそこの距離がある筈だ。
しかし、瞬く間に溶岩弾は目の前……とまではいかずとも、5メートルも無いくらいには近くまで迫っていた。
「よっ!!それっ!」
俺は高く飛び上がり、乗っていた岩もそれに合わせて上昇。
その岩が俺の足に追いつくタイミングでもう一度高く飛び上がる。
岩はさらに上昇。
二度目にジャンプした時の最高高度とほぼ同じ高さで俺の足は止まり、溶岩を回避。
俺を狙ったせいか瑠莉奈とベルには届かず、溶岩のようなものは落下して、すぐに床を溶かした。
アレを俺が食らっていたらと思うと、背筋がゾッとする。
「おお、見事見事。じゃ、これならどうかな?」
「ッ!!?」
しかし、無事に避け切ったと思ったのも束の間。
「【大火球】」
天羽が取り出した金属製の杖から、溶岩どころではない大きさの火の玉が飛んできた。
「ありゃりゃ、ごめん。俺、終わった」
死。
まだ一般人であった頃の俺が河童と戦った時のように、いや、それ以上に迫り来る死を目の当たりにしている。
何も考えられない。
俺の頭は、すっかり真っ白になってしまった。




