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奇師奇喪-クシクモ-  作者: 最上 虎々
第三章 ベルゼブブ紛争
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第32話 アンチ・ビースト その4

俺、瑠莉奈、ベル、そして数人の連盟員はほぼ同タイミングでサン・クロワ大聖堂内部へ突入。


「兄さん、これって」


「え?う、うわぁ……」


ところどころに布切れと化した祭服と血塗れの肉片が落ちている。


恐らくだが……これは聖職者達が《《やられた》》後なのだろう。


「何を今更ドン引いておるのじゃ。今まさに天羽を殺しに行っておる途中じゃというのに」


相も変わらず冷静なベルから、これで三つ目の初耳となる発言。


「……殺す気なのか?その天羽って魔術師のこと」


俺は恐る恐るベルに尋ねた。


「そりゃあそうじゃろ。……あやつは、一度わらわを殺したも同然なのじゃ」


……そこまでだったとは。


過去にベルと天羽の間に何があったかは不明だが、直後に歯を食いしばっているところを見る限り、本当によほどのことがあったのだろう。


そして、俺が感じている違和感。


「ベルゼブブ」という名前について何か引っかかるものがあるということだけは理解できつつも、それ以上の情報に脳が踏み込むことを無理矢理禁止されているかのような、この感覚。


今の俺……どころか、俺の推測が正しければ、ベルと天羽と……後はよっぽど何かの対策を練っていた人物以外は「ソレ」に対しての存在を認識したり、それに纏わる何かしらの思考へ至ることはできないのだろう。


恐らくは、それこそがベルの言っていた「殺されたも同然」ということであり、白狼の魔術師と呼ばれた天羽が概念そのものに及ぼした異常。


……あくまでも、本当に憶測だけの話だが。


ベルは、「白狼の魔術師・天羽」とされる「何か」に「存在そのもの」を奪われたのではないだろうか?


「なぁ、ベル……」


ヒントは得た。


俺が真実を確かめるべく、ベルに話しかけようとした瞬間。


「皆の者、アレを見るが良い。ターゲットの方から、わざわざお出迎えのようじゃぞ」


ベルが杖を前方、聖堂の奥へ向ける。


そこには横に並ぶ人影が一つ。

そして、その人影からは瑠莉奈やベルと同じような人外特有の風格というか、迫力というか……オーラのようなソレを感じる。


「やぁ、ベルちゃん。わざわざ僕に会いに来てくれるなんて、どうしちゃったのかな?魔術でも教えて欲しくなっちゃった?それとも……告白かい?」


「天羽……!……お前さえ……お前さえいなければッッッ!!お前のくだらない欲望に存在を奪われ、人間に身を落とし!こうして己の弱きを憂うことも無かった!」


現れるは、白い毛皮のコートを身に纏った青年。


ベルは彼の姿を捉えるなり杖を構えて、目に見えて感情的になる。


「まあまあそんな事言わないの。君の後ろにいる若い魔術師達と出会えたのは、僕が君を人間にしてあげたお陰なんだし」


「よくもぬけぬけと言ってくれるわ!」


「運命っていうのは分からないものだね~」


「これ以上お前の運命が絡んだ生など、真っ平御免じゃ」


「そっかー。じゃ、その縁に絡むものをまずは消しておかないとね」


次の瞬間、眼前に溶岩の塊が飛んでくる。


「【ビームソード】」


「【岩盤壁がんばんへき】」


「【散水さんすいサボテン】!」


そして次の瞬きを終えた頃には、俺、瑠莉奈、ベルの三人を残して、後続の魔術師達は全員肉片さえ残らず姿を消していた。


咄嗟の魔術を発動したことで何とか丸コゲにならずに済んだようだが、おそらく後ろに控えていた魔術師達は……。


「……マジ、かよ……!?」


「さっきまで後ろにいた人達が、一瞬で……」


燃えカスどころの騒ぎではない。


魔術師達は跡形も無く、大聖堂の出入り口付近ごとドロドロに溶けた溶岩に浸食されている。


着弾地点との距離はそこそこある筈なのに、下手な暖炉よりも激しい熱気が伝わってくる。


「コイツはヤバそうだ……!」


「ああ!本当に用心しろ、一瞬の油断が命取りじゃ!」


「さあ、始めようか。僕は、僕の運命を自分で掴んだんだ。運命に……いや、違うか。『僕』に負けた情けない悪魔ちゃんには、今度こそここで死んでもらうよ」


「ハッ、くたばるのはそちらの方じゃ!タイマン勝負ができん身体なのは納得いかんが、なりふり構っておる場合ではないからのう。何としてでもここでお前を殺し、わらわの存在を返してもらうぞ!」


「やれるものならやってみるといいよ!それっ!」


「悪魔ちゃん」、か。


やはり、ベルの正体は……。


肝心の情報に辿り着く事こそ出来ないものの、その寸前にまで迫っているような気はする。


ただ現時点で一つ、言えることはある。


目の前に立っている魔術師。


彼もまた、間違いなく恐るべき「人間ではない何か」であるということだ。

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