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奇師奇喪-クシクモ-  作者: 最上 虎々
第二章 秘匿された魔術学院
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第15話 入学式 前編

2018年4月9日、午前11時。


日本魔術学院宮城蔵王キャンパス第一講堂にて、新たに学院の門を叩く者達を歓迎する式典、所謂「入学式」が執り行われることとなった。


俺と瑠莉奈は式が始まる20分前に指定の座席に腰を下ろし、式の始まりを待つ。


特にクラス分けなどが書かれていなかったことから、席順はクラスによって決まっているという訳では無いようだ。


それぞれの新入生に指定された席が書かれている座席表を見る限り、このキャンパスは東北六県の中でもメインとなる魔術の研究施設であり、一般的な大学のように入学する者の年齢を細かくは問わないスタイルであるにもかかわらず、新入生の数は規模が小さい高校と同程度なようで、今年は100人を僅かに上回る程度らしい。


東北には他にも5つのキャンパスと多数の小規模な研究施設があるとはいえ、宮城県では唯一の大規模研究施設、そこの新入生が100と少しというのは些か不安だ。


理由は単純。

「新入生の数が少ない、イコール魔術師の数が増えない、イコール仲間が少ない、イコール1事案当たりに割かれる人手が減る」という式が成り立ってしまうからである。


「これより、日本魔術学院宮城蔵王キャンパス第一学年入学式を始めます」


いよいよ、東北六県では最大の規模である宮城蔵王キャンパスのトップにして日本魔術学院における最高クラスの権力を持つ魔術師の一人である校長が、やっと俺達の前に姿を現す。


「オイオイオイ!校長出てくるんだってよ!」


「マジか!殆ど人前に出てこない凄腕魔術師なんだろ!?」


「イケメンだったらどうしちゃおー!」


「校長先生って言うぐらいだし、きっとおじいちゃんかおばあちゃんだよぉ」


校長が直々に挨拶をするというサプライズに驚き、騒ぎ始める新入生達。


各地方のトップ、つまり最高クラスの権力を持つ者の座、その一つに君臨する魔術師は、各国の魔術学院という組織において存在があまりにも大きなものであるため、一般人はおろか、高名な魔術師にさえその身分を明かすことは少ない。


直接的に動く際も、大抵は変装を施した上で真の実力を隠して戦う場合が殆どだ。


そんな校長ともあろう者が、これから入学する100と数名の魔術師達に対して、その姿を見せるなど、滅多なことでは無い。


機密保持の観点で大丈夫なのかという懸念はあるが、校長自ら姿を見せてくれると、本人がそう言っているらしいのだ。

故に問題はあるまい。


さあ、お言葉に甘えて、まじまじとその姿を見せて頂こう。


「では、ご登壇頂きましょう。蘆屋校長。どうぞ、ご入場下さい!」


大喜びで、校長を舞台袖から呼び出す司会。


「「は?」」


しかし、その名前は俺と瑠莉奈にとって大いに聞き馴染みのあるものだった。


「ウオオオオオオ!!すげぇ!なんかよくわかんねぇけどすげぇ!」


「キャー!渋い顔ー!」


「いやぁ。皆、ありがとネ。……ボクが校長の蘆屋だヨ。機密保持の為に、名字以外は伏せさせてもらうケド……ま、あんまり怖がらないでネ」


あの蘆屋が……校長……?


確かに、今まで関わった事件記録や事案を読める限り読んでみたところ、規格外に強いというのは理解していたが……まさかここまで上の立場であったとは。


……そういえば、少し前に俺を殺す勢いで勝負を挑んできたベルも新入生だったような。

ならば、この講堂のどこかにいる筈だ。


アイツはやけに蘆屋との距離が近かったし……ベルは蘆屋が校長だと知っていたのかも知れない。

ベルの表情を見てみれば、分かるかもしれない。


斜め右前に、ベルの姿が確認できる。

しかしベルの席は遠く、その顔は髪と他の新入生に阻まれてあまり見えない。


しかしチラッと除くベルの表情は、熱狂する皆と違って確かに真顔であった。


驚いていないということは……なるほど、ベルは蘆屋が校長だと知っていたのだろうか。

うーん。


俺達にさえ、今日まで校長であるということを黙っていた蘆屋。

それを、同じ新入生であるにも関わらず俺達よりも前に知っていたベル。


……となれば、ベルに対する謎も深まってくる。


文書を読めば読む程、人と関われば関わる程、疑問は増えていくばかりだ。


「さて、いくら皆がキャーキャー言ってくれてるとはいえ、あんまり話が長いのも良くないとは思うから……一つだけ、言わせてもらおうカナ。……『死を恐れないで』ネ。それだけだヨ。……魔術師は、思ってるよりも簡単に死ぬ。でも、その死は決して無駄にならない。上手くいけば蘇生もできちゃう。……だから、一度の死を恐れすぎないことが大切だヨ。……この言葉を聞いて、やっぱり辞めたくなった人がいたら、遠慮なく事務室に行くと良いヨ。生半可な気持ちでいる魔術師ほど、簡単にトドメを刺されちゃうからネ」


そして、蘆屋は短いスピーチの中に魔術師の現実を詰め込み、話を終える。


しかし去りゆく蘆屋の表情は、いつものように飄々とした、俺達の知っている「蘆屋」の姿であった。

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