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星の使者  作者: 上濱蘭
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1 聖域の異変

親友のカミムラちゃんと,ヨシハマちゃんへ。

 輝く星々。

 ほのかに香る花の蜜。

 真っ暗な夜,しんとした静寂に小さな鈴の音だけがひびく。

 髪につけた銀のリボンからこぼれ落ちるその音は,すらりとした手足を優雅に,意のままに操る,彼女の舞に輝きを添えるようだった。

 幼いわたしは,その様子をどこか遠くから見ている。

 決して触れてはならない,聖域を見守るようにー。


「ねえ,待ってよー…」

「遅いな,リクは。早く来いよ!」

「フィンがずんずん行っちゃうからだよ,もう!」

 ぷりぷり怒ってみせながら,顔は笑っちゃう。フィンは文句を言いながら,ちゃんとわたしのことを見てくれているのを知っているから。

  今日は,わたしのお姉ちゃん・リュアと,フィンのお姉ちゃん・レンカの成人式なんだ。ふたりは今年で15になるから,もう婚約が決まってて,次の春には結婚するんだって。リュアとレンカは,なんと誕生日がいっしょで,小さな頃から大の親友だった。それだけでなく,もともとお母さんたちが親友だったから,わたしたち家族とフィンやレンカたち家族は昔からずっと仲がいい。

  今から成人式をするところは,村にいくつかある聖域のうちのひとつで,すべての神をつかさどる命の女神・ラヴィタ様の御力がいちばん強い場所,らしい。そこでは式の夜になれば,聖域の円の中心にある大きな宝石““生命の源””の青い光が,成人した者を包むように飛んでいくんだって。わたしは見たことないけど,今日はリュアお姉ちゃんの体を包む光を見られるかもしれないから,とってもワクワクしてるの。

  今,フィンとふたりで向かっているのは,その““生命の源””とは反対にある聖域,““白銀の舞””。ここは月の女神・ルノーアテミリ様の聖域で,常に水面の高さが一定の湖「白銀の鏡」がある。わたしたちは,この湖から聖なる夜にルノーアテミリ様の御力をいっぱいにたたえた聖水を成人するお姉ちゃんたちに持って行くという,重大な任務があるの。聖水を飲むと,ルノーアテミリ様の祝福を受けられて,正式に成人したと認められるんだよ。今はまだ日は高いけど,これからすぐに闇の神ヴィリエアス様が空を闇でおおいつくしていく。そうなったら,子どもだけで「白銀の鏡」のある森に入るのはあぶなくなっちゃう。でも,聖水を汲むのは成人していない子ども,という掟があるから,もし大人と汲みに行けば,お姉ちゃんたちは成人できないという,大変なことが起きる。だから,わたしたちの今日の任務はとってもだいじなんだ。

  「ふぅ…」

  「やっと着いたな」

  「うん。やっぱり,白銀の鏡はきれいだね!本当に鏡みたい…」

  「待て!リク,聖域の約束を忘れたのか?」

 ふらふらと湖に吸い込まれそうなわたしを,すぐにフィンが止めてくれる。

  「あぶない,忘れるところだった…うん,覚えてるよ。《聖水を汲むときは,湖に近づかずに,アーニャルチル様の祝福を待つこと》…だよね?」

 アーニャルチル様は,太陽の女神様。毎日,日没の直前に投げかけられるひとかけらの太陽の光には,特別な力があって,その光ー祝福が白銀の鏡に差し込むのは,今日だけ。聖水を汲むときには,祝福の光を白銀の鏡が反射するので,その反射した光をわたしたちは特別な壺に閉じ込める。村についてふたを開けて初めて,聖水になるから,帰りは水で重くなったりはしない。

 わたしたちふたりはそれぞれ,お姉ちゃんたちへの聖水を込める壺を抱えて,祝福を待った。無事に光を閉じ込めると,今度は来た方とは逆の道を進む。この道は聖域ではないけれど特別な力を持っていて,聖域のものを身につけていれば,村にあっという間についてしまう。だから,聖水を持っているわたしたちは,歩きはじめて数分もしないうちに,村に着くはずだったのだけれど…気がつけばそこは,闇の神ヴィリエアス様の御力に満たされた,真っ暗な闇の中だった。前を歩いているはずのフィンは,少し先で壺を放り出してうつ伏せに倒れているのがなぜかわかった。そしてわたしも,得体の知れない闇に包まれて,意識を奪われた。

こんにちは。

このお話を見つけて,読んでくださり,本当にありがとうございます。

わたしはずっと,自分が書きたいものを書いてきましたが,このように人の目に触れるものを書くのは初めてです。きっとこのお話は,全然満足できない方もいらっしゃるかもしれませんが,とりあえず完結まで持っていってみますので,暖かく見守ってくだされば幸いです。

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