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呪いでTSして筋力を失ったので支援に徹底したら男パーティを追放された僕 ~追放されたけどもう遅かった。  作者: 終乃スェーシャ(N号)
二章:狂疾に因りて殊類と成る。今日の爪牙誰か敢て敵せん(思いがけずエルクロと邪なことをしたいと考えたら虎に(後略)
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この魔力、我が友サンゲツのものではないか?

 はい。大変投稿遅れて申し訳ございません。不定期すぎるな。猛省しています。面白いTS作品を読むことができて執筆意欲が再燃した次第です。

 どうか近いうちにエルクロに裸土下座させるので許してください。投稿はこれから可能な限り、3作順々にしていきます。

 一瞬で向かい合う視線。数秒の沈黙。


 ……バレたか?


 嫌な緊張感を前にサンゲツは数歩たじろいだが。


「ルロウ、要件はその……なんだそのデカイ猫……!? 触ってもいいやつか?」


 エルクロは一瞬で距離を詰めた。小さな手が許可を貰う前からわきわきと宙を揉み撫でる。吊り上がった口角から漏れる興奮気味な吐息。


 蠱惑的な笑みだった。


「ああ、それはね。触り放題だし、乗っちゃってもいいよ。おじさんが許しちゃう。それね、おじさんが最近拾った捨て猫」


「主はおっしゃっています。汝、猫を愛せと」


 無責任な言葉に殺意を飛ばしたが飛んで逃げられた。その間にじりじりと距離を詰めていくエルクロ。歪んだ笑み、垣間見える牙。


「うへ、うへへ……怖くないぞぉ? ほら、にゃーんって言ってみろ」


 虎の体格に強いる鳴き声ではない。


「…………がゅん」


 なんとか絞り出した鳴き声は情けなくて、二人は嘲りをこぼすように吹き出していた。


「凄いぞ。こいつ人の言葉がわかる!! スーーーフーー!!」


 飛びつかれた。むぎゅりと端正な顔が礼節無く押し付けられて、全身を抱き締められる。密着。柔らかな感触と共に、獣の嗅覚が芳香に惑う。


 無防備。無警戒。エルクロはそのままよじ登るように背に跨ると、身体を前に倒しへばりついた。


「がう……(オレはいままでこうも女の子と接したことがあったか? リーダーだから厳格にと何もしないうちに誰も近づかなくなって――。エルクロは身体が変わってもギンロウ、ギンロウと……。いや、オレは何を考えている)」


 理性と獣のごとき劣情が、エルクロの身体を通して戦い始めていた。


「ふふん、ボクは変な魔剣だとか猛獣とかには懐かれやすい質でな。見ろ、尻尾を振ってるぞ」


「彼……ぶふッ、んん……! 猫だから腰のあたりを撫でたほうが喜ぶよ」


『ギィ! これと一緒にしねえで欲しいんだが』


 エルクロの魔剣は正体なんて見破っているのか、粗暴な口調で冷ややかな態度を取っていた。


 ――ルロウはあとで猛獣に襲われて死ぬ。もとい殺す。


「こうか? はーーーーッ、猫はやっぱいいな。それもでかいほうがいい。フーー! フーーー!」


 猫吸いされ始めた。誰も助けてくれはしない。この取り返しのつかない状態を。ギンロウの奴も何かを言うわけではなく、どこか後方彼氏面で、しかもなにもない場所とぶつぶつ会話している。


「屋敷は少し広すぎるからな。飼ってみたかったんだ。ルロウは撫でなくていいのか?」


 柔らかで小さな手がぽんぽんと腰を撫でてくる。こらえきれずに喉が鳴ってくると、黒幕ユスティーツはこらえきれずに澄まし面がニヤけた。


 ルロウも嘲笑していたくせに、エルクロがオレを吸い始め、モフを全身で満喫しているのを見て、羨ましくなるみたいに、そっと尻尾へ手を伸ばしてくる。バカか?


 近づく手に先んじて、オレは牙を浴びせた。


「がるる(指一本でも貴様が触れてみろ。この牙の性能を試すいい機会だろう。しかしどうしてくれる。本当にこれでは言い出せないじゃないか。エルクロに腰ぽんぽんされて喉鳴らしたあとに、実はオレですって言えと?)」


「痛ッァ! おじさん、親父にも噛まれたことないのに!」


 親父に噛まれる奴がいてたまるか。


 バカなことをしていると、いつの間にか居た見知らぬ天使族エンジェロイドの少女? が怯えるように怪訝な視線を向けていた。


「……そんな捨て猫いるとは思えないんですが。ワタシのデータに無いモンスターなうえに、懐く魔獣とは考えられない魔力量ですよ。洗脳魔法か何かを受けている可能性は?」


 その言葉に魔術職でもあるエルクロは我に帰って、確かにと。少し距離を取る。


「言われてみれば不自然なくらいこの猫ちゃんがいることに違和感がなかったな。魔力量も相応にある」


 エルクロの瞳が赤く妖しく煌めいた。【魔力看破アナライズ】を行ったときの魔力波長。このあとの自体を察したかのようにルロウが逃げ出そうとしたから、飛びかかり、肉球で押し潰す。


 ギンロウも苦い表情を浮かべたままユスティーツを捕らえていた。


「……こ、この魔力、我が友サンゲツのものではないか?」


 先ほどまで吸っていたことを思い出すようにどこか引き攣った様子でエルクロに尋ねてくる。可愛らしい顔立ちに滲む緊張と困惑。


 だからすぐに明かすべきだったのだと後悔が深くなる一方で、責任も誇りも全てを投げ捨てて、エルクロにモフられ、腰をぽふぽふされることが満更でもなく、理性と劣情に板挟みにされていた。


 ――オレが悪いのか? 逆にエルクロに全身で抱きつかれて、腰を撫でられて、顔を埋められて……いつの間にか甘い匂いがするようになった髪が頬を撫でる。……一体誰が嫌がるんだ? 否、嫌がることは不可能である。


「……がう(然り)」


 開き直るみたいに肯定の文字を宙に書いた。

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