7.ハムちゃん
「ハムちゃんッ!!」
豊は思わず叫んでいた。
ハムちゃんが可愛らしい声で日本語を喋っていた驚きもあるが、それ以上に再会の喜びが大きな声を出させた。
四角の枠の中にあったハムちゃんの顔写真は、いつの間にかLIVE中継に切り替わり、プニプニと動くハムちゃんの姿がそこに映し出されていた。
枠の横には【LIVE中継】の文字が浮かび、ハムちゃんの顔がアップで映し出されている。
パチパチと瞬きするお目々。
ヒクヒクと動くピンク色のお鼻。
あの頃のままである。
「うっ・・・うう・・・」
豊の頬を熱い液体が伝った。
もう会えないと思っていたハムちゃんと、まさか異世界で会えるとは・・・。
こんなに嬉しい事はない。
ワシャもう満足や。
ワシャもういつ死んでもええ。
主人公らしからぬ思考で豊がむせび泣いていると、ハムちゃんも驚いた様に口を開いた。
『わ~ッ!!ご主人様なのハム~~ッ!!ご主人様なのハム~~ッ!!』
「うっう・・・そうだよ・・・ご主人様なのハムよ・・・」
ハムちゃんの語尾が混ざる豊なのであった。
『ご主人様お久チぶりハム~~ッ!!』
「ううっ・・・お久チぶりハム・・・」
『ご主人様お元気だったハム~?』
「うっう・・・お元気だったハム・・・」
ハムちゃんがまん丸の目を細めてキャッキャと喜んだ。
そんなハムちゃんにつられて、豊は涙を流しつつも笑顔になる。
『アタチはご主人様に可愛がって貰った事を忘れてないハム~』
飼っていたハムスターにこんな事を言われ、豊は感無量であった。
『ねえねえご主人様はこんな所でナニチてるハム~?』
ー ナニ・・・ナニチてるんだろうなぁ~・・・。 異世界に召喚されたとしか言いようがないな・・・。
豊はありのままをハムちゃんに説明した。
『ふむふむ。ご主人様は異世界に召喚されてチまったハムね~?』
「そうなんハムよ」
『それで案内人にアタチを選んでくれたハムね~?』
「そうなんハムよ」
『これはもうハムスターの神・・・ハム神様の思チ召チハムよ~』
「ハム神様ッ!?」
変な所に喰いつく豊であった。
『アタチ達ハムスターの神様・・・それがハム神様なのハム~』
「ハムスターに神様が居たんだね」
『あいっ。アタチはご主人様の元で寿命を終えた後、正チいハムスターであったため、ハム神様のお慈悲によってハムスターの国で新たな生命を与えられたハム~』
「ハムスターの国・・・」
『古今東西の様々な種類のハムスターが生活する、ハムスターのハムスターによるハムスターのための国ハムよ~』
「そこにハムちゃんも住んでいるんだね?」
『あいっ。アタチは今年、国立ハム田大学を卒業チたのでこの仕事に就いたハムよ~』
「国立・・・ハム田大学・・・」
ハムちゃんの話に、ただただ驚くばかりの豊であった。
『アタチの家は弟と妹が多いハム~。アタチが頑張って稼がないとハム~』
「ハムスターは子沢山だもんね。ハムちゃんは頑張り屋さんなんだね」
『照れるハム~』
豊はただただ感心していた。
ー あの甘えん坊さんだったハムちゃんが、しっかりとしたお姉さんとなってハム生を歩んでいたとは・・・。私も負けていられないな・・・。
豊とハムちゃんの近況報告は続く。
☆彡☆彡☆彡
「あっ・・・」
異世界に召喚された女子高生、栗原栞は静かに声を上げた。
部屋の中には豊と同じく湯浴みをしたのだろう、大きなタライが置かれていて、彼女はその健康的な裸体に絹のバスタオルを巻いていた。
栞はすでにプリンセスベッドに寝転がっていて、艶めかしい両足がぞんざいに放り出されていた。
腰まであった艶の良い髪は頭で纏め上げられ、薄いピンクの唇が僅かに開いていた。
「案内人・・・ハムちゃんにしようとしたのに・・・誰かに取られちゃった・・・」
栞の言う通り、ハムちゃんの顔写真には【成約済】の赤い文字が書かれ、何度クリックしても反応しなかった。
取り合えず、一通り確認しようと最後まで画面をスクロールしたのが災いした。
「う~・・・」
栞は残念そうに唸ると、再び案内人を選ぶ作業に戻った。
ハムスターの国・・・それは広大な宇宙の星のどこかにあると云う・・・。
ー--
大切な読者さまへのお願い
クスリと笑えた
続きが気になる
ハムちゃん可愛い
と思った方
下の【☆☆☆☆☆】マークをクリックして
評価を頂けると大変嬉しいです。
ブックマーク登録もよろしくお願いします。
「私と君達との約束だな」
『約束なのハム~』
「約束なんだどぉ~」