4.魔王、説明される
地下室を抜けると、赤い絨毯の敷かれた広い廊下に出た。
高い天井には豪華なシャンデリアがかけられ、廊下の両端には幾つも台座が並び、高そうな壺や調度品の数々が飾られていた。
どうやらフェナメス王国とやらは、余程に潤っているらしい。
ー 1個くらい盗んでもバレないだろうか?
豊は邪な事を考えていた。
ー シャンデリアがあるならば地下室にも付けておけば良いのに。薄暗くてちょっと怖かったぞ・・・。
王と妃を先頭に一行は廊下を進む。
その途中で自意識過剰女と目が合った。
「何よッ?」
と言われたので「何だよ?」と返した。
女は眼鏡をクイッと上げると、不機嫌そうに歩き出した。
ー 何なんだ?凄く面倒臭い女だ。面倒臭い自意識過剰女だな・・・。
やがて一行は金で作られた、これでもかと装飾を施した大きな扉の前に着く。
ー 悪趣味だな・・・。わびさびってものがまるで分かっていない。何でもかんでも派手にすれば良いってものじゃないだろうに。成金趣味ここに極まれりって所か・・・。
豊は若干へきへきしていた。
扉は余程丁寧に磨かれているのか、光を反射し輝いていた。
目が痛いことこの上ない。
ゆっくりと扉が開かれる。
中は大広間となっていて、窓際に豪華絢爛な椅子が2つ置かれていた。
その前には5段の階段があって、これまた赤い絨毯が敷かれている。
玉座の間であった。
大広間では甲冑に身を包んだ数十人の兵士が、王の帰還を待っていた。
彼等は王を見ると一斉に膝を折り頭を下げる。
その中を王と妃が悠然と歩いて行き、玉座に座った。
ー 玉座の後ろを調べると隠し階段が見つかるんですね。私には分かります。
などと思っていると、王が厳かに口を開いた。
「フェナメスの勇者達よ。良くぞ参られたッ」
ー 参られたんじゃなくて、勝手に召喚されたんだがなぁ~。
「この世界は魔王によって脅威にさらされておる」
ー あ~魔王ね・・それ私みたいなんですけど?
「勇者様にはこの魔王を打ち倒して貰いたいのじゃ」
ー WHATッ!?
「と、まあ説明したい事は山ほどあるが、今日はもう遅い。城に部屋を用意してある。そこでゆっくりと休むと良い」
窓から見える外の景色は暗く、確かに夜であるようだった。
豊の世界の季節は冬であったが、どうやらここは違うようだ。
夜だというのにあまり寒さを感じない。
スキルなんて物がある世界なのだから、魔道具の類があって、それで気温を調節しているのかもしれないが、どちらにせよ知る術はない。
「そうそう、明日までに案内人を選んでおくように」
「あのっ、案内人とは?」
スーツの男がもっともな質問をする。
「私が説明しましょう」
フードを被った老人がスッと前に出た。
ー あいつ出たがりだな・・・出たがり爺さんだな。
豊は心の中で老人にあだ名を付けた。
「案内人と呼ばれる者がおります。皆様のステータス画面に、変化が起こっているはずです。一度、ステータス画面を確認して下さい」
出たがり爺さんが説明をする。
5人は言われた通りにステータスを確認した。
【案内人を選んで下さい】
ステータス画面には文字が浮かんでいて、文字の下には証明写真の様に四角く切り取られた顔写真が幾つも並んでいた。
金髪慧眼の男。
赤い髪の女。
しわくしゃな爺さん。
イケメン。
美人。
女王様。
黄色の帽子を被った幼稚園児。
など、多彩な人物の顔写真があった。
スーツの男と面倒臭い自意識過剰女は、口の端に涎を浮かべ、食い入るように画面を見つめていた。
とは言っても、ステータス画面は他の人間には見えないから、なかなか滑稽な景色であった。
「案内人は、この世界での皆様の生活を手助けする者。一度決めると変える事は出来ないので、悔いの無いよう選んで下さい」
出たがり爺さんのその言葉が合図となったのか、5人の召喚者達は、各々のために用意された寝室へと案内された。
案内人を選ばないとな~・・・。
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