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俺のドラムは少女のギターに救われた  作者: べるりーふ
第7章 技術不足で誤魔化さないで
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野望、叶えないと満たされない

 6月18日


「結局昨日はあの後お楽しみだったのか?」

「あ?」


 音琶から告白を受けてから一夜明け、それから迎える1日の授業。

 昨日日高からは欠席した分のプリントをもらったわけだけど、その時音琶も居たしまさに音琶を部屋に入れるタイミングでの出来事だったから日高が何かを察しないわけがない、最早言い訳の余地もない気がするのだが。

 結羽歌も立川もいるから今はあまりその話出さないで欲しいけど無理なのだろうか。


「えー、滝上昨日授業休んで何してたの? 渦中の女と遊んでたのかな?」

「......」


 ほら来た、こういった話を出すと必ず絡んでくる奴がいるんだから本当に自重してくれ。

 結羽歌は結羽歌で何も言わないで笑いをこらえながら話きいてやがる、絶対俺がうんざりしてるとこ見るの楽しんでるだろ。

 てかお前音琶と仲良いんだし誰の話題出してるのかとかは絶対気づいてるよな?

 黙ってくれてることには感謝すべきなのかもしれないけど、少しくらいこの2人を止めてやったっていいのではないだろうか。


「普通に寝てただけだ」

「へぇ、随分と眠りのお深いことで」

「悪いかよ」

「授業休んじゃったんだし、良いことではないよね~」

「そうだぞ滝上、折角プリント届けてやったんだから、その謝礼金として何があったか話してくれても良いんじゃないか?」


 いや話せるかよ、告られたなんてこいつらには口が裂けても言えないし秘密を金で売る気もない。

 今以上に調子に乗られる未来しか見えないってことくらい予知能力が無くともわかってしまう。

 

「......告られたか?」

 

 ふいに、耳元で囁くように日高が聞いてきた。予知能力があるのは日高の方だったようだ。


「はぁ!?」

「......あれ、もしかして当たってた?」

「いや......、当たってねえし......」

「でも今の反応の感じだと......」


 唐突な不意打ちにまたやられてしまった、非常にまずい、まずすぎる。

 別に告白を断ったわけでも受け入れたわけでもないんだし、そんなこと誰かに相談したところでどうにもならない。

 結局答えを出すのは自分自身なのだと心に誓ったはずだし、誰にもバレないようにしようと思ってたのにこの有様である。

 多分日高も話盛って適当なこと言ったのだろう、それがまさか図星だったなんて予想もしていなかったのだろうし。

 実際に少し驚いてる感じだったよな、仮に音琶が告白してきたとしてももう少し後になると思ってたのかもしれない。


「......いいから、もう授業始まるぞ」

「......ああ、そうだな。悪かった」




 授業終了後


 結羽歌と立川が学食に行って、俺は日高と2人部屋に戻っていた。

 その間に話すことと言えば勿論例のことしかない。


「それで、結局告られたんだよな?」

「まあ、そんなところかもしれない」

「いや誤魔化すなし」


 こいつに誤魔化しは効かない......か。

 まあいい、友人なんだから話してやってもいいかな。


「......ああそうだよ、告られたよ」

「......大変だな」


 そして俺は昨日、というよりは一昨日から何があったのかを日高に全て話した。


「青春してんな」

「してねえよ」

「結局俺はあの後どこのサークルにも入ってないからさ、むしろここまでサークルに時間費やせる滝上が少し羨ましかったりするんだよな。とは言ってもあそこには戻る気ないけど」

「俺としては悩みがまた1つ増えて非常に面倒なのだが」

「本当は嬉しいんじゃないの? そこは素直になった方がいいと思うよ?」

「バカ言え、悩み事が増えて嬉しいと思う奴がどこにいる」

「悩むことで幸せをつかみ取ることだってできるからむしろそこは喜んだ方がいいかもな、上川だってきっと今すぐにでも本当の返事欲しいと思ってるはず」


 日高の言葉が少し引っかかって、思わず立ち止まる。


「......あいつはいつでも待つって言ってたけどな」

「そうかもしれないけど、それでも早いほうがいいと思うぞ? もしかしたら、その間にも誰かが上川を狙って付き合いづらくなる、なんてこともあるかもしれないからな」

「そんなことあったとしてもな......、今付き合っても俺が満足できない。もっとあいつの認めてくれるドラムを完成しないと、ダメな気がするんだよ......」

「へえ、珍しく弱気になってんな」

「そんなことねえよ、いつも通りだ」


 俺の言ったことに嘘偽りはない、俺自身音琶のことが好きなのかは正直よくわからない。

 でも、音琶は初めて会ったときの俺のドラムがもう一度見たいと言っていた。

 それを見せられるようになるまでは音琶と付き合ったとしても、心に何かが引っかかる気がして満たされた気分にはなれないと思っていた。

 

 ・・・・・・・・・


 確か今日バンド練習あったよな、本番前に先輩達から新入生バンドの実力を確認されるイベントは3日後だし、曲の構成については割と危機感を持たないと行けない。

 限られた練習時間の中でどれくらいの力を発揮できるのか頭に入れておかないとそろそろまずい。


 

 少なくとも今現在決まっていることと言えば、


 ・曲は全部で2曲

 ・コーラスはなし

 ・取りあえずドラムに合わせろ



 といった所だろうか。

 仮にそれが出来たところで何もかも上手くいくなんて有り得ない気がするのだが。

 正直メンバーに問題があるのはずっと前から認識してたしどうしたらいいものか。


 授業が全て終わってから部室に向かうのはもう日常茶飯事のようなもので、あの場所に行けば毎回誰かが何かをしている。

 その大半が練習だけど、ここ最近はそれだけではない。


「そうそう、ここはもう少し色明るくした方がいいと思う」

「お前はこれで満足なのか?」

「少なくともさっきよりはマシよ」

「そんなもんなのかね?」


 ここずっと、部室に行けば琴実と湯川がポスターの原案についてずっと話し合っている風景が見える。

 最低でも本番1週間前までには仕上げとかないといけないだろうから、残された時間はそんなないはずだ。

 前まで喧嘩ばかりしていたけど、今日はそんなに悪い雰囲気にはなってなかった。

 相変わらず湯川は納得のいかない表情しているけど、流石に危機感あるのか渋々琴実の意見に頷いているように見えた。

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