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俺のドラムは少女のギターに救われた  作者: べるりーふ
第6章 だから俺はお前を支える
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感触、忘れられない

 練習に2時間ほど費やした私は部屋に戻り、疲れた身体をほぐすためにシャワーを浴びていた。


「......」


 そう、あれはあくまで練習、何も変なことじゃない、何を今更思い出している。

 実際に夏音に手伝ってもらった方が効果的だったんだし、私が満足に歌える様になるまでの間だけしてもらえばいい、はずなんだけど......。


「~~~~~~~!!!」


 シャワーで頭を冷やして、冷静になって考えると相当なことしたんじゃないかと考えてしまった。

 あの時は真剣だったから特に何も感じてなかったけど、よく理性が保ったものだと思う。

 部位はどこであれ異性に身体を触るようなことを要求するとは、私は何てことを言ってしまったんだろう。

 いや違う、きっと夏音があんなに躊躇いまくってたのが悪いんだ、だって練習だよ、たかが練習、ボーカルじゃなくても、ギターとかベースの練習を誰かに頼まれたら腕とか触らないと教えられないだろうし......。

 身体が熱いのはシャワーのせいなのか、それとも恥ずかしさのせいなのか、この状態じゃ区別を付けるのは難しかった。


 シャワーから上がって長い髪を乾かし、適当に後ろに束ねる。

 部屋の中は蒸し暑く、身体もまだ熱かったからしばらく寝間着は着ずに下着姿のままベッドに腰掛けてスマホを手に取る。

 スマホからはLINEの通知がいくつか来てたけど、その中に気になる物を見つけた。


 hidaka sou:元気してた?


「......」


 日高君からのLINEなんて久しぶりだな、サークル辞めてから一度も連絡取ってなかったけど、突然どうしたんだろう。

 本文を読んでも日高君が何を言おうとしているのかわからなかった。

 

 上川音琶:久しぶりだね、突然どうしたの?

 hidaka sou:上川と滝上が一緒にいるとこ見たんだけど、頑張ってるんだなって思ってさ

 上川音琶:頑張ってるって、バンドのことだよね?

 hidaka sou:それ以外に何があるんだよ

 上川音琶:ううん、ないよね

 hidaka sou:俺もうサークルの人間じゃないけどさ、上川と滝上のこと応援してるから、協力もできたらするぞ


「ふぇ!? 一体何を!? えっと、もしかして日高君気づいてる?」


 文脈がいかにも怪しい感じだし、協力って言ってもこれに関してはバンドのこととは思えない、そもそも部室は部外者は立ち入り禁止なんだし、例え部屋で練習するとしても何かが違う気がする。

 恐る恐る、私は日高君に聞くことにした。


 上川音琶:協力って何のこと?

 

 下着以外何も身につけてないのに、さっきから体温は下がろうとしていない、むしろ上がっている。

 特にお腹が一番温かくて、苦しいというよりもむしろ心地良いくらいだった。


 hidaka sou:おいおい、まさか誤魔化せるとでも思ってたのか?


 あ、これ気づいてる。

 でも何で今なんだろう、まさか夏音から何か聞いてたり......、いやでも夏音が私の事どう思ってるかなんてわかんないんだし、だとしたらいつどこで?


 上川音琶:ごめん、思ってない

 hidaka sou:だよなー、やっぱり

 上川音琶:でもいつから気づいてたの? 私の夏音に対する態度とか?

 hidaka sou:てかさ、俺別に上川が滝上をどう思ってるかなんてまだ一言も言ってないんだけど


 あ......。

 やってしまった。完全に嵌められた。

 

 上川音琶:もう知らない!!


 この後日高君から謝罪の返信が来てたけど、今は精神状態が安定してないから未読スルーして、落ち着いたら後で返すことにした。

 日高君、何だかんだでいい人だし、協力してくれるんなら、してほしかったし......、一人で抱えるよりは誰かに聞いてもらうのも、一つの手だよね......。


 ***

 

 6月3日


 まだ眠い、それでも起きなくては、早くしないと授業が始まってしまう、昨日のことは忘れられないけど、切り替えて授業に行かないといけない。


「ねーえ、昨日の用事って何だったの?」


 教室に着くなり立川が上目遣いで尋ねてきた。


「第一声がそれかよ」

「気になったから聞いただけだよ」

「サークルの用事だ」


 取りあえずそれだけ言った。

 サークルの練習をしたことは嘘じゃないんだし、別に詳しく話す必要なんてないだろ。


「ふーん」


 どこか気に入らないような表情をされたけど、流石に全部話すと社会的に排除されてもおかしくないから、絶対に言うわけにはいかない。気にしすぎか?


「まあ滝上も大変な時期なんだし、そっとしてあげようぜ」


 日高が立川に説得して、何とか立川も静かになったところでその場を凌ぎ切れた。お前も昨日の言ってきたことはだいぶ罪だと思うけどな。

 それにしても、音琶の腹の感触が日付が変わっても手に染みついていて離れない、確かにあれは奴にとって効果的な練習だったのかもしれないけど、俺は理性を保つので精一杯だった。

 あんな柔らかいものに触れてしまっては、例え胸でなくても頭の回転が追いついていなかった。

 音琶にとって、異性であの練習を頼む奴は俺しかいないのかもしれないけど、それでもだ。

 ダメだ、思い出すだけで授業に全く集中できない、左手で右手を押さえているけど、何でそんな行動に出たのかは自分でも説明できない。


「滝上」


 俺の様子がおかしかったのに気づいたのか、日高が小声で俺を呼んだ。


「何だよ」

「聞きたいことあるんだけどさ、怒るなよ?」

「だから何だよ」

「昨日みたいにでかい声出さない自信あるなら言うけど」


 予め警告を促してから日高は質問を続ける。


「お前上川のことどう思ってんの?」


 .........。

 どう思ってる、ね。

 警告がなければまた昨日みたいに大声出すとこだったけど、何とか抑えた。

 あいつのことを友人と捉えたとしても、何かが違うような気がするし、知り合いとかだともっと違う気がする。

 だとしたらあいつは俺の何なんだろう。


「悪い、俺も調子に乗りすぎた。立川にもあまりうるさく言わないように言っとくから」


 日高を無視する形になったけど、それどころじゃなかったんだから仕方ない。

 でも、俺はこれからどう気持ちに整理を付けたらいいんだろうな。

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