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俺のドラムは少女のギターに救われた  作者: べるりーふ
第37章
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合目、最後の1曲へ

 少しステージに近づいて撮ってみようかな......?

 でも、そんなことしたら琴実ちゃんの集中力続かなくなったり......なんてことはないかな。


「......」


 息を殺しながら近づいて、琴実ちゃんの顔がよく見えるようにカメラを回していく。

 琴実ちゃんの表情、練習の時よりもずっと余裕が感じられるな......。準備の時間はあれだけ追い詰められていたのに、本番に強いタイプだよね、きっと......。

 響先輩もライブ慣れしているから、今までと何も変わらない気持ちで挑めているみたい......。表情で勝手に判断しているけど、何回か見てきた響先輩のライブを思い出せば、そう思っちゃっても仕方ないよね......?


「真っ直ぐより、斜めから撮った方が、映りいいよね......?」


 下手側にしゃがみ込んで、丁度良さそうなタイミングを狙う。

 軽く首を揺らしながら音楽に浸っている琴実ちゃんの姿は、誰が見ても魅力的で、琴実ちゃん自身がこの空間を創り上げているかのように思えた。

 そんな演奏を魅せられて、次に廻ってくる私の番が埋もれてしまうんじゃないかという不安さえあった。だけど、今はそんなの関係無い。私がやるべきことはサークルを動かすためにライブの風景を記録に残すこと。

 次に気にすることは、私に与えられた時間が来た時に考えればいいんだから......!


 +++


 いつの間にか結羽歌がすぐ近くに来ていた。大事な友達の気配に気づかないくらい、私は集中出来ているってことでいいのかしらね。

 だけどこの感覚、練習の時とは比べものにならないくらい心地良いわね......。最後になるかもしれないバンドだから気を詰めている、なんてわけではない。

 私は今、音楽そのものを本気で楽しんでいるのよ。だって、意識していなくても身体が勝手に動いてくれるんだから。


「......ふっ......!」


 響先輩の優しい音色と歌声が身体中に伝わってくる。息を合わせて繋がるアコギとベースが心地良い。

 今までやってきた音楽とは全く違う。ただ感情任せに弾いていた時期なんて、私には必要なかったのかもしれない。

 響先輩と組むことで、私の中に秘めていたモノがようやく花開いたってことでいいわよね? きっと結羽歌だって私の演奏の虜になっているに違いないわよ。


「......」


 だけど、意識を再び向けた時にはもう結羽歌は居なくなっていた。後ろの方に下がったのかしらね。

 結羽歌から見た私は、どんな風に見えていたのかしらね......。終わったら写真、見せてもらうわよ。


 ・・・・・・・・・


 残り1曲......。私が輝ける時間は残り僅か......。


「えっと、今年から音同に入部しました、高島琴実です! って言っても、新入生じゃないけど!」


 最後の曲をやる前にMCを設けることにしていたから、響先輩が話している間に少しでも身体を休ませようと思ったのに、どういうわけか私がマイクを持っていた。

 これ、事前の打ち合わせではなかったことよね?


「ほら琴実、表情硬いよ」


 隣で響先輩が小さく耳打ちしてくるけど、本来は響先輩だけが話すんじゃなかったかしらね?

 ま、任された分はしっかりやらせて頂くけれども!


「何だかんだあって、私のベース歴は1年ちょっとだけど、こう言った形態のバンド組むのは初めてだから、アコギの響先輩に支えられてここまでやっていけてます!」


 ヤケクソ気味で進行するMCだけど、響先輩のことを持ち上げた瞬間、観客側から拍手が湧いていた。


「次で最後の曲になっちゃうけど、まだ盛り上がる体力は残っているわよね!? って言っても、バラードでの盛り上がり方って知らないのよね~私」


 ノリ突っ込みみたいなMCにはなったけど、笑いはそれなりに取れていた。滑らなくて良かったわよ......。


「まあとにかく! 最後の1秒まで私達から目線を逸らしたら、許さないんだから!」


 ツンデレ全開で乗り切り、恥ずかしながらも演奏へと繋げることは出来た。

 さてと、4分弱で私の時間は終わってしまうけど、結羽歌を圧倒出来るくらいの演奏を最後まで見せつけてやるわよ。


「響先輩、合図お願いします」

「了解したよ」


 響先輩と目を合わせ、アコギを軽く叩く音が2回聞こえたら、右手の人差し指と中指を弦に合わせて操ることにした。

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