闘争、好きだからこそ
10人ほど増えただろうか。小さいながらも盛り上がりが感じられ、1つのライブが仕上がりつつあった。
だが、まだ1バンド目であることを忘れてはいけない。いくらLoMのコピーが素晴らしい再現度で披露され、ワンマンライブなのではないかという勢いで進んでいるからと言って、残りの2バンドが降参することはない。
むしろ、まだ序章に過ぎないとばかりの空気を作らなくてはいけないのだ。別に俺は順番が間違っているとは思ってないし、新入生メインのライブで先輩達をトリに置くなんて馬鹿なことは考えない。
俺はいつも、自分が正しいと思ったことしか考えていない。今回だって今まで通りの思考回路だ、ライブは絶対に成功させる、させてやる。
「......今に見てろよ」
量より質とも表現できる歓声を浴びながら、観客に向かって手を振る響先輩に向かって、俺は呟いた。
◈◈◈
先輩達の演奏、凄かったな......。
私、トリだけど、あそこまで凄い演奏、出来るのかな......?
「さてと、次は私の出番ね」
琴実ちゃんは、まるで何事もなかったかのようにステージへと向かおうとしていた。先輩達を見て、さっきよりナーバスになってないといいんだけど......。私が励ましたから、琴実ちゃんの不安はもう抜けたよね......?
「こ、琴実ちゃん......!」
思わず声が出ちゃう。誰かの心配なんかするくらいなら、まずは自分の心配をしないといけないはずなのに......。どうしても、大切な人のことが気になって仕方が無い。
「どうしたのよ」
私よりも切り替えが早くて、私以上に誰かのことを思っている琴実ちゃんだ、自分の全力を出すことしか考えてないはず......。
「が、頑張って! 私、琴実ちゃんに負けたくないから、本気でぶつかってきて......!」
私の精一杯。確かに琴実ちゃんには勝ちたい。でも、お互い全力を出し合わないと、どっちかが勝っても絶対に満たされない。
「もう、馬鹿ね」
「ひゃっ......!」
琴実ちゃんの人差し指が私の額に当てられる。本当は震えているはずなのに、強気な態度を見せるのも、琴実ちゃんの癖だった。
だからたまに、心配になっちゃうんだ。
「心配無用よ、私はあんたに勝つためにここまで頑張ってきたんだから」
「琴実ちゃん......」
「勿論、最高のライブにするためにってのもあるけどね」
少し照れくさそうに、琴実ちゃんは人差し指で頬を掻きながら言った。視線がステージに向かっているのは、自分の気持ちがベースに向き合えている証拠なのかな?
「だから見てなさいよ。私が今日をどれくらい楽しみにしていたか、この目でしっかりとね」
「ちゃんと......、最後まで見届けるよ。私、琴実ちゃんのベース弾いているとこ、好きだから......」
「っ......!」
あ、あれ? 私今何を......。ううん、たまたまなんだけど、誤解されちゃったかな......?
「へ、変な事言うんじゃないわよ......! ま、まあ、あんたが私の演奏に惚れ込んだのなら、私に勝ち目はあるってことよね!」
顔を真っ赤にしながら、琴実ちゃんはそそくさと行ってしまった。
うーん......、別にそっちの意味で言ったわけじゃないんだけどな......。でもいいかな、これでお互い本気でぶつかり合える。
何度か試された舞台。私だって、琴実ちゃんに負けたくないって思わなかったことは1秒たりともない。
ついに始まるんだね、私と琴実ちゃんの、本気の闘いが......!




