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俺のドラムは少女のギターに救われた  作者: べるりーふ
第37章
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2人組、頼りにする音

 2人で1つ。


 その意味は理解しているつもりだったのだけれど、上手と下手で音の聞こえ方が違うことをもっと考えておくべきだったと、私は後悔した。


 響先輩の音色は綺麗だし、アコギの音からベースを掻き鳴らすには丁度良いくらいよ。だけど、私達のバンドはたった2人だけの編成、ドラムが居ないだけでリハの音合わせがこんなにも大変だなんて思ってもいなかった......。


「ごめん夏音、もうちょっとだけアコギ上げてくれる?」

「これ以上上げたら客側からベースの音が聞こえなくなるんだが」

「くぅ......、だったら、ベースの音を少し上げて欲しいんだけど!?」

「一応そうするが、やりすぎるとハウるから考えてやってくれ」

「わ、わかってるわよ!」


 どうにも上手くいかなかった。

 ユニットという構成である以上、ドラムが居ないことが致命的だった。私は今までドラムの音を頼りにベースを弾いていたんだし、低音が鳴り響くことが何よりも有難いと思っていた。

 だけど、今回は私が響先輩をリードしなきゃいけない立場なのよ......。臨時で夏音か静司先輩にカホンやってほしいくらいよ......。


 まあ、甘えてなんかいられないのだけれど。


「出来る限り上げてみた。もう一回同じ所頼む」

「は......はいっ!」


 夏音がやってくれたから上手く進んでいけると思ったんだけど、私の技術ではバランスの良い音作りは出来なかったみたいだった。


 やっぱ2人組ってだけでも個人にかかる荷物は多大なものなのね......。


 ・・・・・・・・・


 早いことが全てじゃない。出来ることが全てじゃない。例えどんな音を創ろうとも、私には先輩を動かす力さえ足りていなかった。


「琴実、色々考えて音作っていたんだね」


 自分のリハが終わって片付けをしていたら、響先輩が優しい声で話しかけてきていた。


「そりゃ勿論......、出来る限りのことはしたかったんで......」

「確かに、琴実の性格を考えたら有り得ないことじゃないよね」

「......私の性格?」

「はっきり言っちゃうけど、琴実は器用な方じゃないからね。目の前のことに焦って周りが見えなくなってるからさ」

「そんなこと......! あるかもしれません......」


 確かにそうかもしれないわね......。ステージ上からは結羽歌の姿が見えるし、負けたくない相手を目の前にすると自分のことしか考えられなくなっちゃう、そんなところがあるのかもしれない。


「さっきの音作りはライブが出来ないほど壊滅的なものじゃないからさ、もし今後琴実が誰かとバンド組む機会があったら、俺もしっかりサポートするよ」

「......は、はい......?」

「そしたら、俺はこれからLAST EMERGENCYの準備があるから、悪いけど琴実は夏音達の所に行ってくれないかな?」

「あっ......、はい、すいません......」

「参考にするところ、色々あると思うから頑張って!」


 なんかまるで、今回がNot Equallのラストライブみたいなノリだけど......。響先輩は今日限りでこのユニットを解散させるつもりなのかしらね......?

 正直思ったんだけど、それなりに練習して本番に備えたつもりだから、こんな中途半端な所で終わらせたいなんて全く思っていないのだけど......。


 確かに響先輩は研究室の事情もあって、忙しいって話は随分前から聞かされていた。だけど、バンドに関しては人数集めのために結成したわけじゃないはずよ......。

 私にとって意味のある組み合わせだから、バンドとして成立したはずなのよ......。


 何て言えばいいのかしらね......、何もかもが自分の思い描いた通りにならないって考えれば良いの......?


 響先輩の言葉が引っかかったまま、私はPA側に設置してあったパイプ椅子に腰掛けた。

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